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直くんは鈍感。


入学式も終わり、大学生活が始まった。

直くんは経済学部、私は商学部だ。


授業で一緒になる事は無い。だけど、キャンパスは同じ。だから一緒にご飯食べて、一緒に帰って…幸せな大学生活を送る事を約束されている。





「幸せって決めつけてすごい自信ね。」


出た!愛梨!


「何よその顔。」


毎回私の幸せな一時に釘を刺す愛梨に、ついぶーたれた顔をしてしまう。


「愛梨、もう私は昔の私じゃ無いのよ。私と直くんは相思相愛。彼氏と彼女。ふふっ。」


そう!私の初恋は実ったのよ!高1でついに!!


それから高校2年、3年。修学旅行、バレンタイン、誕生日…愛を重ねてきた。私達はガッシリと強固な絆で結ばれている!!


もう二人を拒むものは何もない!!!




「三井が甘やかすから、ウザさに磨きがかかってる。」


「きゃー!そうなの、直くんが甘いのよ。私に!ウッフフ。」


もー、愛梨ったら照れちゃうじゃない!


「…何の話?」


あ!


「直くん!!」


愛しいお目当ての彼がやってくる!


「三井、お疲れ。私、山内と待ち合わせしてるから、席変わろうか?」


愛梨が立ってる直くんに気を使う。愛梨は直くんと仲良く無かったのに、今では普通に話す。そんな仲だ。


「いや、いいよ。ありがとう。もうすぐ山内も来るって。」


直くんが私の前に座ってる愛梨に断り、私の隣に座る。近い。嬉しい。


愛梨もその彼の山内くんも同じ大学に進んだ。

愛梨は私と同じ商学部、山内くんは理工学部。二人とも同じキャンパスだ。

三重野くんは医学部に進みキャンパスが違うから中々会う機会は無い。


「よっ!お疲れー!!」


山内くんが来て、愛梨の横に座る。


(こんな日が来るなんて…)


直くんに片思いしていた時はこんな風に近くに座れる日が来るとは思わなかった。


愛梨とその彼と私と直くんが一緒にいれるなんて…


嬉しいいい!!!


「ところで直、めっちゃサークルの勧誘受けてたなー。」


ピクッ!危険な香りがする!


「ああ…」


直くんは気にした風はなくサラリと答える。


私は直くんに掴みかかる勢いで聞く。


「な、直くん!それは本当に純粋なサークルの勧誘!?年上のお姉様方の毒牙にやられてない!?」


直くんはモテる!!自覚して〜!!


「は?」


直くんは訳が分からないといった顔をする。危ないって!気づいて!!


「もーホント変わんねーな。本田ちゃんと直!」


山内くんがそんな事を言う。変わって無い!?


「百子が慌て過ぎなのよ。」


愛梨が指摘する。


違うって〜!気づいて〜!!






✽✽✽


「…百子、何か怒ってる?」


待ち合わせして手を繋いで帰る。高校の時からもうすっかり定着している。


直くんは分かりやすく膨らんでいる私を見て言う。


「直くんは危機感が無い!」


そう言って、握ってる手にグッと力を込める。私のモヤモヤに気づけ〜。


「なんだ。さっきのサークルの事?」


直くんは顔色一つ変えない。手、痛くなかったのかな?


「…。」


ムスッとして下を向く。

両思いになって、愛梨の言う通り私は直くんに甘やかされてる。だからついつい我儘になって、なんかいつも怒ってる、可愛くない彼女だ。


「勧誘はするだろ。人集めたいんだから。」


――ほら、鈍感。


「キレイなお姉様に告白されたらどうするのよ…」


あ~もう。やっぱり私、可愛くない。まだ起こってもない未来に嫉妬して直くんに八つ当たりして…


「彼女がいますって断ればいいだけじゃないのか?」


「…。」


直くんは随分、饒舌になったと思う。前はもっと恥ずかしがり屋だった。


それを嬉しいと思ったり、寂しいと思ったり。なんか環境が変わって急に不安になる。


直くんのことは信じてるけど、…不安になる。


「百子は、か、彼氏がいますって言わないのか?」


たまに、今だに照れる直くんを見て安心する。私だけの直くんに思えて…


私は直くんと付き合って、どんどん強欲な独占欲の強い、可愛くない女になってる。


直くんが好きになってくれた私とは、違うかも知れない…


「私は直くんみたいにもてないもん…」


ブスッとして吐き捨てるように言う。あぁ、思ったそばから!


――直くんと釣り合いが取れる私になりたい。




ふと、思い出す。


高1の…直くんの言葉だ。


〝三重野となら釣り合いも取れる〟


あれはどういう意味だったんだろう…

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