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直くんとももちゃん、初恋の行方。  作者: 獅月
第一章終了後〜第二章の間の単発番外編
46/133

直くん、呼び名分かってる?


「本田さん。」


直くんが私を呼ぶ。この前は“百子”だったのに、今日は“本田さん”。


なんか、寂しい。


―直くんに下の名前で呼んで欲しい。






「直くん、私、直くんに下の名前で呼んで欲しい。ネームプリーズ。おーけー?」


直くんは、明確に的確に端的に伝えないと伝わらない。そして、お願い事の勝率を上げるにはダメではない状態を作ること!!


すごい!私、直くんの事分かってる〜!さすが“彼女”ね!!


「呼んでるけど…。」


「うん、たまにね。」


そう、“百子”と言うときもあれば“本田さん”と言うときもある。


基準は分からないけど、やっぱり“本田さん”が多い。


「100%、ファーストネーム。」


「…。」


「よし、試しに言い慣れよう!私が直くんって言ったら百子って言ってね。1000本ノック。やってみよう!」


直くんに考える隙を与えてはいけない。押して押して押す。これ極意。


「ヨーイドン!直く…」


「!!ちょ、ちょっと待って!」


あら、慌ててらっしゃる。後少しだったのに。


「何?」


「恥ずかしいから。」


…照れてらっしゃる。


「私の名前恥ずかしい?」


確かに、古風。もっと今風のかわいい名前が良かった。直くんが恥ずかしい思いしないで呼んでくれるように。

なんか、落ち込んで来ちゃった。付き合う事になっても、思い描く関係にはなれてない。


直くんが好き。それを力任せで押した形だ。彼女にさえ、なれればそれでいいと思ってたのに。私はやっぱり欲が深い。


「―百子。」


「!!」


びっくりした。不意打ち危険!破壊力マックス!まっすぐ私を見つめる直くんがかっこよすぎて…


と、思ったらすぐに目をそらされた。えー!ショックなんですけど…


「…言うようにはしてる。けど、大体女の人と話すことすら滅多に無いのに、そんな中でいきなり名前を呼ぶのは恥ずかしい。」


直くん、すっごく顔真っ赤…


「“本田さん”って名字で呼ぶのも、意識してから呼ぶとなんかくすぐったい感じがしてたくらいなのに…」


名字でもですか!?


……そっか。直くんは人とあまり喋らない。最近は前より笑ったり、雰囲気が優しくなったりしたとは思うけど、女子と雑談するまではない…。


直くんは人を呼ぶ事自体が慣れてなかったんだ。


「てっきり、私の古風な名前が恥ずかしいのかと…」


ハハハ。なんだ、なーんだ。


「…かわいい、名前だと、思ってる。」


―!…嬉しい!…しどろもどろで、いつもより小さな声で…


一生懸命言ってくれた。


「ありがとう、直くん。私、実は自分の名前に自信がなかったから、直くんにそう言って貰えて嬉しい。」


気づかないフリをしてたけど、ずっと古風な名前が恥ずかしかった。


だから、直くんがその古風な名前を言うのが恥ずかしいと思ってるなら仕方ないと思った。


一番、肯定してほしい人に褒めてもらえた。


「百子。」


直くんが、少し顔を赤くして言う。


「…なるべく、言うから慣れるまで…待って。」


「待つよ。直くんは嘘をつかない。」


10年以上片思いした。待つのは慣れてる。そして、直くんの誠実さが分かるから不安は無い。


「直くん、だーい好き!」


私は、やっぱり今日も直くんが大好き!

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