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直くんとももちゃん、初恋の行方。  作者: 獅月
第一章終了後〜第二章の間の単発番外編
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ロングとショート



「ねぇ、直くん!ロングとショートどっちが好き?」


平日の夕方、いつも唐突な彼女はまたしても唐突に口を開く。


会話の流れも何も無い。いきなり聞かれ何の事かも分からない。


「…何が?」


「だから、ロングとショート!」


だから、答えになっていない。


俺が、その質問の意図で思いつくのはパスタくらいだ。


ロングパスタとショートパスタ。


他には思いつかない。他には…


「直くん!ロング派?ショート派?」


答えない俺に痺れを切らした彼女はジリジリと近寄ってくる。


顔が近いって…。ドキドキする心を抑えながら、取り敢えず思いついた事を聞いてみる。


「パスタのこと?」


多分…いや絶対違うだろうが、質問の意図も分からずに回答する訳にはいかない。


「パスタ?」


百子がキョトンとする。ほら、やっぱり違った。


「ロングかショートか。その前に入る用語は?」


あぁ!と、彼女がポンッと手を打つ。


「髪だよ。髪の毛。直くんどっちがタイプ?」


あぁ、髪の毛の事か。全く思いつかなかったのは俺にそんな概念が無いからだ。


「特に」


興味は無いかも…。

別に髪の長い女性が良いとか逆に短い女性が良いとか思った事はない。


…冷たいんだろうか。


人を好きになったのは、百子が初めてだからだ。


強いて言うなら、今の百子くらい…だろうか。だがそれは長さではなく、百子の事を指している。


そして、俺はそれを本人に言えない。


「特に、どっち?」


更にズイッと詰め寄られる。その目は真剣そのものだ。

そんなに近くで見つめられると緊張する。色んな意味で。


「百子はどっちが好きなんだ?」


危機一髪。答えを待ち構えていた彼女に質問返しというちょっと卑怯な真似をする。


「私?私はね〜。…って違う!直くんの好みを聞いてるの!」


駄目だ。戻って来た。

そもそも質問の真意が見えない。それを聞いてどうしたいんだ。


「どっちでもいいよ。」


本当に、どっちでもいい。

そもそも髪型なんか人の好みで、皆自分が好んだ髪型をしているんじゃないだろうか…


「どっちかと言えば?」


駄目だ。必ずどちらかを選択しないといけないらしい。


「その人に似合う方とか…」


そう、人それぞれ好みがあって、その次にくるのは似合うか似合わないかじゃないだろうか?


「じゃあ直くん、私はどっちが似合う?」


そこで、なんとなく気付く。

つまり彼女は、自分がロングかショートかで迷っているんだろう。そこで、考えが纏まらず俺に相談してきた、といったところだろう。


(どっちって…)


百子がジッと俺を見る。駄目だ。直視出来ない。


「ち、中間…?」


今の百子くらいを指す長さを遠回しに伝える。


「セミロングくらいね!分かった!」


何とか彼女は納得をしてくれた。嬉しそうにしている姿を見てホッとする。


そして慣れない恋愛関係はいつも俺をドキドキさせる。


俺は、今日も百子の手のひらで転がされている。



【おしまい】


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