人を好きになること
「な、直くん〜!」
直くんが私を抱きしめてる…。こんな事が本当に起こるなんて。
夢じゃない?妄想じゃない?
「直くん、好き。」
「うん。」
「直くん、私、直くんが好きなの。」
「…うん。」
「直くんは?もう一回言って?」
「…。」
あれ?
「直くん、もう一回。」
「…さっき言った。」
「えっ!?あれで終わり!?」
もっと言ってよ!何回でも!
直くんは私が泣きやんだからか、パッと体を離して顔を背ける。
(耳まで真っ赤…)
きゅーんと愛しさが込み上げてくる…
恥ずかしがり屋の直くんが、人に興味を持たない直くんが…
私の事好きって…
しかも…
「直くんにプロポーズまでしてもらえるなんて…」
私達まだ高校生なのに、直くんったら。
「…えっ!?」
「え?」
そこ驚くとこ?
「直くん、一生って言った。」
「…それは、そういう意味じゃ…」
「じゃあ、私の気持ち弄んでるの?すぐ別れる気満々なんだ!?」
ちょっと、意地悪。直くんにもう一回好きって言ってもらいたい。
「いや、その…それはちょっと解釈が違うというか…」
すっごい焦ってる。直くんが私に。私に振り回されている直くんがかわいい。
「じゃあ、もう一回名前読んで?」
私は聞き逃していない。直くんさっき〝百子〟って言った。今度はボイスレコーダー撮っておくから、今度こそもう一回!
「本田さん?」
いつものように言う…
「違う!百子ってさっき直くん言った!」
「あっ!ごめん!馴れ馴れしく!つい…」
「ついって!〝俺の百子だ〟位の気持ちでいてよ!?」
「そんな、人を物みたいに言ったら駄目だよ!」
直くんはやっぱり真面目。そこは変わらない。大好き。
「直くんはもう私の彼氏なんだよ!そして私は直くんの彼女!恋人同士なんだから、そこは主張しようよ!」
「こっ!恋人って…。」
照れて赤くなる直くんが愛しい。こんな表情を知っているのは私だけだと思うと、どうしようもなく嬉しい。
「直くん、私、直くんが大好き。」
しっかりと目を見て言う。
「――うん。」
「直くん、フェアじゃないと思わない?」
「…?」
「私これまでもいっぱい、直くんに好きって言ってきた。直くんは一回。明らかにフェアじゃない。」
「…。」
直くんが困ってる。困ってる顔がかわいい。
無表情だと思ってた直くんの色んな顔が見れるようになった。気付けるようになった。
――それが嬉しい。
✽✽✽
ダブルデート当日
「直、愛ちゃんに惚れるなよ?」
「惚れないって。」
このやり取りは何回目だろう。山内は俺を警戒している。
それはこっちのセリフだ。山内の方が本田さんを好きになるんじゃないだろうか…お互い、惚れた欲目だ。
本当に、人を好きになるって不思議だ。
この世に沢山の人がいるのに、〝一人〟を好きになる。
それは、男女なんかで大きく分けられるものではない。
山内は松本さんを、俺は本田さんを好きなように、そのたった一人が、それぞれにいる。
それを、好みやタイプといった表現で終わらせるんだろうけど…
〝好き〟とか〝恋〟とかはやはり難しい。
俺はずっと、兄貴みたいな気の利くジェントルマンとか貴みたいな明るくて活発な人間の方がいいだろうと思っていた。
だけど〝俺が良い〟と言ってくれる本田さんのように、兄貴には兄貴の、貴には貴の、それぞれに引き合う人がお互いに〝好き〟という感情を持つんだろう。
俺は前より自分の事を肯定出来るようになった。
それは勿論本田さんのおかげで。
だからこそ、本田さんを好きな事に気付いたんだと思う。
自分を肯定的に捉えた瞬間に目の前の本田さんが好きな事に気づけた。
やっぱり、俺は兄貴や貴に対してずっと劣等感を持っていて、ネガティブだったが故に本田さんの気持ちを疑ってしまったんだと思う。
俺みたいな奴が人に好かれるはずが無い
――と。
「直くん!」
大好きな人が俺に話しかける。
「さっきから山内くんと何話してるの?」
今は、〝俺のどこがいいのか〟よりも〝俺が本田さんが好きか〟が大事だったことが分かる。
「百子がいて、良かった。って話。」
本田さんに耳打ちする。あぁ、うん。好きだな。
「ありがとう、もも…。俺を好きになってくれて。」
俺を、諦めないでいてくれて。
「…好きだよ。百子に恋をさせてくれて、ありがとう。」
ひとまず、両思いという事で完結です。
これから大学、就職など時系列で行くか、番外編や短編で行くかは決めていないです(^_^;)
連載中にはしておいて、また続きをどちらかの形で書こうと思っておりますのでもう少しお付き合い下さいm(_ _)m
直ももコンビを見て頂きありがとうございました。
初めて書いた小説ですので、これから加筆修正する点もあるかと思います。
そんな中、目に止めて下さった読者様に心より感謝申し上げます。
アクセス頂けていた事が更新への励みとなりました。
区切りまで書けたのも、読んで下さった全ての方のおかげです。
本当にありがとうございました!
これからも宜しくお願いします(*^^*)