自覚した心
「直くん、映画行こう!」
本田さんはいつも唐突だ。
「ほら、貴ちゃんも時間気にせず二人で会って。って言ってくれたし。」
「…まぁ、そうだけど。」
「映画行って、ご飯食べて、買い物がてら一緒に歩いて、カフェに行って、帰ろう!イヤ?」
「…イヤでは無いけど。」
「じゃあ、いいよね!ヤッター!」
本田さんが手をあげで喜ぶ。
…あーもう。かわいい。俺は重症だ。
✽✽✽
またしてもコテコテの恋愛映画だった。
でも前ほど苦痛ではない。なんとなくスクリーンの中の二人に感情移入も出来る。
横にいる本田さんを見ると感動しているようだ。
瞳が潤んでいる。
…これは本格的に自覚しないと。俺は今、かなり本田さんが頭の中を占めている。
認めざるをえない。俺は本田さんが好きだ。
以前、本田さんが言っていた事を思い出す。
〝好きな男の子に告白するのにどれだけの勇気がいるか分かる!?口や鼻から顔から体全身から心臓が火を吹いて全て飛び出るくらいの気持ちなのよ!!分かる!?〟
…うん、分かる。
そんな気持ちをしながら俺に伝えてくれた事を思うと愛しさがこみ上げる。
俺は気持ちを自覚した所でどうしていいか分からない。告白なんて早々出来そうにない。
俺は一生、本田さんに頭が上がりそうにない。
こんな思いをして、それでいて何回も告白してくれた。
クラクラする。隣にいる本田さんに。本田さんの香りに。
「直くん?」
「!」
目の前に本田さんの顔があってびっくりした。
「映画、終わったよ?」
「あぁ、うん。」
あんまり、近づかれるとドキドキする。
気づくともう無視できない。坂道を転がるように、俺は本田さんに惹かれている。
出来る限り、本田さんと一緒いたい。
✽✽
「あれ?兄貴は?」
兄貴が帰っていない。仕事?
「キヨさん、兄貴は?」
「あ、それが…」
珍しくキヨさんが口ごもる。
「…もしかして兄貴に何かあった?」
嫌な予感がする。
「それが、実は…」
目の前が真っ暗になった。