成長と進展と
本田さんは言うのをかなり迷ってから、三重野に誘われた話をしてきた。感情が分かりやすい。
「三重野、いいやつだよ。」
「…。」
「医者の息子で、本人も医学部に行くんだろ。頭もいいし、本田さんと釣り合いも取れる。」
何だかあれから気持ちが悶々として落ち着かない。
突き放すような言い方をしている自覚はある。
「釣り合い?」
「…。」
「三重野くんに誘われて、確かに断れなくて遊んだこともあるよ。それは私の意志が弱いからで…」
直くんはいつも私の意見を尊重する。だから、三重野くんに誘われたことは言わない方が良いと思った。言っても、私が決める事って言われるのが分かっていたから。
…結局、隠し事にはしたくなくて、誘われた事、言っちゃったけど。
断れない私が悪いのは分かってる。
けど、まさかの、、三重野くん擁護!?
「私、直くんと修学旅行過ごしたい。ダメ?」
若干、ドスを効かせて言う。
遊園地の一件以来、直くんは柔らかくなったと思う。クラスの皆とも喋れば普通に喋るし、私にも、前よりもっと優しい。
だから、こうして少々強気な発言が出来るようになった。
「…ダメでは無いけど。」
そして、一つ分かったこと。直くんは強気なお願いに弱い。
“私はこうしたい”という事を伝えて、それが“ダメ”か“イヤ”か聞く。こうすると大体は断らない。“ダメ”でも“イヤ”でもない。なら、“いい”にするように仕掛ける。
私ってやっぱり策士!
「じゃあ、“いい”よね?」
この後は肯定の言葉しか言えないはず。
「…う…ん。」
…ヤッターー!!本田百子選手やりました!!金メダルです!!
…あれ?
「直くん今日元気無いね。」
いつもは私の心の声を読んで笑ってくれるのに。
「そんな事ないよ。」
あれー??
「それで三重野にはちゃんと断ったって?」
「イエス!愛梨様!」
私は愛梨の前でVサインを作る。
三重野くんに悪いと思って断れなかった私も、直くんと一緒にいて随分強くなった。
ハッキリ、端的に、分かりやすく。これが直くんモットー!頂きました!
…やっぱり、落ち込んで、それでも明るく振る舞う三重野くんには罪悪感が募るけど。
「百子も、三井に泣かされまくってた時に比べたら随分と逞しくなったわね。肝っ玉母ちゃんみたい。」
「えっ!?お母さん?やだ、直くんと結婚して子供がいるなんてそんなのまだ早いわよー///」
「ポジティブにも拍車がかかってるわね。」
「あー、でも私もいつか直くんにそっくりなかわいい子供が欲しいな。」
貴ちゃんみたいな感じかな?かわいいな。また会いたいなー。
「最近三井も前ほど腹立つ感じじゃ無くなったし。」
「ちょっと、もう少し妄想させてよ!ってやっぱり愛梨、直くんの事が嫌いだったんじゃない!」
「嫌いじゃないって。興味ないの。」
「も〜。」
私まだまだ頑張る!確実に関係は進展してる!
このまま直くんを押して押して押し倒ーす!!!
早くイチャイチャさせてあげたい…