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直くんの変化


「こんにちは!三井貴将(みついたかまさ)です!今日は宜しくお願いします!」


(かっかわいい〜!!さすが直くんの弟!)


「いつも直之がお世話になっております!仲良くして頂いているようで、ありがとうございます!今日はお天気にも恵まれて良かったですね!」


(な、なんて礼儀正しい!!)


「貴、それ誰の受け売りだよ。」


「お兄ちゃんがいつも俺の友達のお母さんに言ってるよ?」


「貴と兄貴じゃ立場が違うだろ…」


「あはは!直くんと弟さんって仲いいね。」


結局、本田さんが行きたいと了承して三人で遊園地に行くことになった。


「そうなの〜。直兄ね、いつも遊んでくれるの。ねぇ、僕の事は貴ちゃんって呼んで〜。」


貴は外面の良さを発揮している。こうも180度自分を変えられるものなんだろうか。


「貴ちゃん!本田百子です。こちらこそ今日は宜しくね。」


「じゃあお姉ちゃんはももちゃんね!お手手繋ごう〜。」


貴は本田さんの手を取り歩く。本田さんも嬉しそうだ。俺は既にどっと疲れ二人の後ろを歩く。


「直兄も〜。お手手〜。」


貴が後ろを振り向く。ニタァっと悪い顔で俺を見る。

大体、今日はなんでそんなに猫なで声なんだ。


「直くんもッ!!」


本田さんがものすごく眩しい笑顔でこっちを見る。


…確実に貴将に騙されている。


「貴、お前今日ずっとそのキャラでいくのか?バテるぞ。」


貴の手を取って、小さく耳打ちをする。一応、猫を被っている弟のメンツは守ってやろう。


「もう既にバテてんだよ!作戦失敗した!直、なんとかしろ!」


何なんだコイツは。


「二人共、どうかした?」


本田さんが話しかける。


「ううん。何でもない。ももちゃんってかわいい名前だね。」


ぱっと、貴将が猫を被る。…すげぇ。


「ふふっ。ありがとう。直くんと貴ちゃんのお兄さんにも言われた事あるよ。やっぱり兄弟だね。」


「…そんな話をすることあった?」


ふとした疑問だ。


「うん、小4のとき、直くんがお休みで、でも直くんに会いたくて会いたくてお家にプリント持って行ったの。その時に…………あっ!」


本田さんはようやく気づいたようだ。

俺は何と返事を返していいか分からない。何だかすごく恥ずかしいというか…


「ふ〜ん。青いねぇお二人さん!」


二人して照れていると、貴将が茶化してくる。

これはまたしても強請りのネタにされそうだ。


「貴…」


「ふふふーん。俺あのジェットコースター乗って来るからここで待っててね!」


気を遣ったのか只ジェットコースターに乗りたかったのかは不明だが本田さんと二人きりになる。


「ごめん。騒がしくて。」


普通に考えて無理があった。貴を連れて本田さんと会うなんて、迷惑をかけるだけだった。


「えっ!いや、全然!私ひとりっ子だから新鮮で…!」


急に本田さんが静かになる。


「あのっ。…気持ち悪くない?」


「…何が?」


「だから、その…ストーカーでしょ。私のやってる事…」


…あー、そういうことか。


「いや、気持ち悪くはないよ。」


びっくりはしたけど。


「ほっホントに?」


「うん、むしろ……なんというか、そんなに前から思われてたとは思わなかった。」


つーかいつから?全然気が付かなかった。


「私、幼稚舎の入園式で直くんを見てからずっと直くんから目が離せなくて…好きって自覚したのは小学生になってからだけど…だから小4で初めて同じクラスになれた時は嬉しくて嬉しくて…会えないと悲しくて、家まで行っちゃった…。」


本田さんは下を向いてボソボソと喋る。後ろめたいんだろう。

俺はというと、それを聞いて特に気持ち悪いとは思わないというか…少し、嬉しい。いや〝かなり〟だ。


しかし、そこで俺はとんでもない失態をしてしまった事に気づく。


「ごめん俺、全然気が付かなかった。本田さんに…その…告白してもらったのも、からかわれたとか罰ゲームか何かかと思ってた。」


「……………えーー!!!!?」


びっくりした。意外と声が大きい。というか本田さんは俺以上に驚いているようだ。口をパクパク動かしている。


「な、直くん…私、小学校と中学校と高校で告白しました!い、いつまで本気じゃないと思ってたんですか!?」


明らかに驚いている本田さんが、ズイっと俺に丸めた手を差し出してくる。エアマイクのつもりだろうか…


「中学校の時、泣かせたと思って…もしかしたら本気だったのかな、とは思ったけど。」


「はぁ!?直くん、これまでの人生を思い返してみて!直くんずっとモテてたじゃない!しかも中学の時!いっぱい告白してきた女子がいるでしょ!?それを全部罰ゲームだと思ってたの!?」


凄い気迫に圧倒されそうになる。


「いや、…うーん。全部が全部そう思った訳じゃないけど。」


確かに何回か告白はされた。それは覚えてる。


「直くん!女子が好きな男の子に告白するのにどれだけの勇気がいるか分かる!?口や鼻から顔から体全身から心臓が火を吹いて全て飛び出るくらいの気持ちなのよ!!分かる!?」


…それは凄い。


「それを罰ゲームって!直くん!私が代表して言うけど!今!全世界の女性を敵に回したわよ!」


…それは怖い。


「……はぁ。それでも私は直くんの敵に回れない…。」


凄い剣幕が一瞬にして終わる。本田さんが俺に向けていた手を下ろす。


「直くんにフラれる度に、もう好きでいるのやめようとか、直くんに迷惑かけるからやめようって、すっごくすっごく悩んだのに…」


俺はどうやら自分が思っていた以上に色んな人を傷つけていたらしい。弁明の余地もない。


「何か言ってよ、直くん!?」


キッと俺を恨めしそうに睨む。…かわいい。


!!!


びっくりした…今、自分にびっくりした……


「ちょっと、直くん!今のお気持ちをどうぞ!!」


ズイズイと本田さんがまた丸めた手を俺の前に出す。


いや、これはまずい。―自分がヤバイ。


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