恋する気持ち…
夜、夕食を頂く。
「友達なわけないだろ!」
「ブッ!!」
すると、またしても弟が突拍子もなく言う。
そして俺も、また味噌汁を吹き出しかける。
「直之坊っちゃん、大丈夫ですか?」
デジャヴか?
「夏美先生さー。他のクラスの男の後藤先生といっつも一緒にいるんだぜ?だからさ、〝先生達付き合ってんの?〟って聞いたら、〝お友達よ〟ってさ。」
「…。」
「あの感じ、友達なわけない!少なくても後藤先生は夏美先生を狙ってる!」
「別に友達って言ってるならそれでいいじゃん。」
率直な意見を伝える。
「良くない!夏美先生が断りきれずに結婚まで行ったらどうするんだよ!俺と夏美先生の未来は!?」
「本人同士の事だろ。貴は関係ないって。」
「後藤のやろー、押せ押せなんだぞ!?グイグイ行ってた!俺の夏美先生がー!」
「〝先生〟つけろ。そして貴の物ではない。つーか人間を物扱いするなよ。」
(なんで毎回タイムリーなんだ。)
あの後、本田さんはいつものように話しだした。
ただいつもより空元気というか、心ここにあらずというか…。
俺はまた何かしたんだろうか…
また本田さんに告白…をされたし。けど返事を促された訳ではない。
質問されたのは、〝友達になって欲しいと言われた男と友達になるべきか〟だ。
俺に聞かれても。
というのが正直な所だ。
本田さんは社交的だし、クラスの半数は〝本田ちゃん〟と言って話しかける。
勿論俺より友達も多い。男友達だっていることだろう。
それを何故今回俺に聞いて来たかは分からない。
…あぁ、告白されたんだったか。
だからといって俺の回答は変わらない。
付き合う、付き合わないも本田さんの自由だし。
彼氏、という存在が欲しいならソイツと付き合えばいい………。
✽✽✽
「三井ってホント理論的に答えるよね。」
「愛梨〜。」
結局、一人では決められず愛梨に泣きついてしまった。
「百子も厄介なのに惚れたよね。まぁ外見はソコソコ良いからなー。三井。」
「失礼な!直くんは厄介でもないし、内面もスンッッバラシイんだよ!?しかもソコソコじゃない!世界一かっこいい!!直くんの素晴らしさ、語ろうか!?」
「いや、絶対やめて。」
「照れなくて良いから!」
「いや、この状況、確実に照れじゃないでしょ。いいじゃん、三重野とお友達でしょ?なれば?」
「え…?」
「友達なんて何人いても良いんだし、三井がそんな態度に出るならこっちはこっちで受けて立つわ。」
「えっケンカ?」
「考えてみなよ。百子ばっかり三井を好きで、損じゃない?百子は三井を甘やかしすぎ。意外と三井、百子と三重野が仲良くしてたらやくかもよ?」
「直くんが、ヤキモチ…いや、ナイナイナイ。それはない。」
そりゃあ、ヤキモチ焼いてくれたら嬉しいけどさ…
「この際いっそ三重野に乗り換えたら?意外とお似合いよ?」
「愛梨、直くんの時もそう言った!!」
「そうだっけ?百子も報われない片思いしてたら青春終わるよ?結局小学校も中学の修学旅行も三井との思い出ないじゃん?来年、高2。修学旅行。もうすぐだよ。どうするの?」
「直くんがいいー。」
「それホントに?中々三井が振り向かないから意地になって執着してるだけなんじゃない?」
「!!ひどい!愛梨!」
「ひどいのは三井。私にケンカ売るなら三井に売っといで。」
「直くんは優しいもん…。」
「週末ちょこちょこ一緒に過ごして、目の前の女は自分を好きと言っている。なのに、断ることも付き合う事もしない生殺し状態で、どこが優しいの?」
「優しいもん…。」
「…なんか奥さんと別れるって言って中々別れない男と別れるのを信じて不倫してるカップルみたい。」
「さっ!!流石にそれはないでしょー。」
愛梨のズケズケとした言葉に泣きそうになる。
「そうねー。手すら繋がない清い関係だものね。失礼。」
「…先生、結局答えが出ていません。」
「そうでした本田さん!結局三重野はキープとして友達になるべきだと思いますよ。」
「キープって!三重野くんに失礼だよ!」
「…じゃあ例えば三井が長年片思いしてる子がいたとしたら?」
「?」
「百子、キープでも二番手でも良いから三井と一緒にいたいって思うんじゃない?」
「!!」
(思う…。)
どんな形でも良いから直くんの側にいたい。ずっとそれだけを思って生きてきた。多分、私は直くんから利用されても何を思われていても、直くんの側にいれたら、それだけで幸せだ。
――不毛だけど。
✽✽✽
「考えてくれた?」
「うん…。」
「ごめん、悩ませて。ただ、友達としてでも本田さんと仲良くなれたらって思ったら、言わずにはいれなかったんだ…。」
ほら、やっぱり。三重野くんと私は似てる。
私は痛いほど三重野くんの気持ちが分かるのだ。
「いいよ。」
「…え?」
「お友達。なろう。」
「ほっ本当に?いいの?」
「うん。宜しくお願いします。」
ペコリと頭を下げる。
「〜〜!!ヤッター!!!」
めちゃくちゃ嬉しそうな三重野くん。またしても私と直くんがダブる。
私も本当に嬉しかったんだよ。
…直くん。
的確な愛梨ちゃんが好きです(*^^*)