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リサーチ




俺はずっと落ち着かない。


ソワソワ、ソワソワ。


何故あんなメールを送ったのか……。


けれども、今更断るのは男としていかがなものか。


(どうした、俺!!)


割と感情が顔に出ないタイプかと思っていたのに、赤くなったり、オロオロしたり、、


俺はおかしくなったんだろうか。


失語症もすっかり治り、後遺症も無い。


だから以前より口数が増えたのは自覚している。


兄貴もキヨさんも俺が喋ったり、表情を表に出すと嬉しいらしい。


喜んでくれるなら、素直に嬉しい。


最近は出過ぎだけど。


「直、最近キモい〜。いや、いつもだった〜」


「……」


横目で睨む。意外と目ざとい弟は俺の表情の変化にすぐに気が付き茶化してくる。


俺はこれがイヤなのだ。


だから感情は出さないようにしているのに。


しかし、デート。


デート!


何をしたらいいのか、どこに行けばいいのか、さっぱり分からない。


……誰かに聞くか。


兄貴?


……仕事忙しいしな。根掘り葉掘り聞かれそうだしな。おせっかいだしな。タイムテーブルとか渡されそう……


キヨさん? ……いや、違うだろ。


貴は論外。






✽✽✽


「おー! 直! どした?」


考えた先はコイツしかいない。


幼稚舎から同じで、高校までずっと同じ。


クラスの人気者タイプのコイツは、いつも俺を輪の中に誘ってくれている。


今の俺の人脈だと、適任だ。






「んー。映画行って飯かな。一番無難じゃん?」


「映画……」


「映画見てる間は会話とか考えなくていいし、その後の飯だと映画の感想言い合えるし」


「なるほど」


「ただなー、見るのの趣味がな。俺の彼女、大体恋愛ものだから、俺眠くなるんだよな」


「……彼女いたっけ?」


「いるよ! 中学の卒業式で告ったらOKだった! その時はクールに振る舞ったけど、天まで上がる気持ちだったわ!」


「……誰? 因みに」


「……直は本田ちゃんだろ? デートの相手」


「なんで分かるの?」


「いや本田ちゃん直の事ずっと好きじゃん」


「え? そうなの?」


何回か“好き”とは言われた。最初はかられているって思ったし、よく知りもしない本田さんから言われても犬猫に言うそれと同じ感覚かと……


「……なんか本田ちゃん、かわいそうになってきたな。あんなに分かりやすく好き好きオーラ出してるのに。肝心の直が気づかないって……」


「俺、鈍感?」


「確実に直以外のやつは皆知ってると思う。俺はいいと思うけどな。直と本田ちゃんカップル。とりあえず付き合ってみたらいいのに」


「“とりあえず”って……」


「いいじゃん。高校生になったんだから彼女位欲しいだろ? 彼女がいたら青春は楽しいぞ」


「……所で話それてないか?」


「バレた? 直と本田ちゃんが付き合ったら教えるわ」


……それは無いと思う。


俺は高校卒業したら働くつもりだ。


この裕福な家庭が通う幼稚舎から大学までほぼエスカレーターで進学出来る私立学校は勿論お金がかかる。


大企業の社長だった父だから行けた学校だ。


遺産は無かったのか、財産は。


両親が亡くなった時、お金の事は全て叔父と兄貴で処理した。


いくらあって、どうなったか俺はそれを知らない。


けど兄貴が今、他にも仕事を掛け持ちしていて、寝食すら満足に出来ていないのを俺は気づいてる。


要は、うちにはもうお金が無いのだ。


大学を辞めて俺達を育ててくれてる兄貴の横で俺は私立の大学なんかいけない。


高卒で働いて、兄貴に楽をさせたい。


だから一般的な高校生活を送るつもりは無いし、彼女を作る位ならバイトがしたい。……兄貴は許さないだろうけど。


“直くん!”


ふと、なぜか本田さんの笑顔が浮かぶ。





「いつかダブルデートしようぜ」


コイツの言う“いつか”はきっと来ない。


結局曖昧なまま、お礼を言って終わった。


一生懸命リサーチして頑張る直くんがかわいい(*´艸`*)

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