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お宅訪問



小学四年生の始業式から一週間が経過した。


三井くんは具合が悪いらしい。今日はお休みだ。


(寂しい。)


結局初日に私が一方的に挨拶して以来、三井くんとの会話は無い。


というより、三井くんは誰とも話さない。休み時間も一人でずっと静かにしている。


しかしそれでも、同じ空間にいれただけ嬉しかったのだと、三井くんがいなくなって思う。


(会いたい。)


ボッと顔が赤くなる。まだ小学4年生。淡い初恋は私の心を落ち着けなくさせていた。




そんな時、


「誰か三井くんのお家にプリント届けてあげてくれる人ー!」


担任教師がクラスに声をかける。


その瞬間、考えるよりも先に私の体が動く。


「はい!先生。私行きます!」


(千載一遇のチャンス!)


「そう?でも本田さんの家、逆方向じゃないかしら?」

「お稽古の教室がそちらにあるんです!」


私は三井くんの家を知らない。これはとっさに出た嘘の言葉。


…だけど、会いたい。






✽✽


「ここ…かな…?」


以前学校で貰った名簿の住所を頼りに、人に道を聞きながらなんとかたどり着いたのは大きくて立派なお屋敷というに相応しい邸宅だった。


裕福な家庭の子供が集う私の小学校は幼稚園から大学までほぼエスカレーターで通える俗に言うお金持ち学校だ。


だけど私は都心のマンション暮らし。こんなにも大きな一軒家は初めてで、不慣れなためインターホンを探してウロウロしてしまった。


(どうしよう…)


“三井”と書かれた表札を見つけ、家を間違っていないと思い、安堵する。その下にあったインターホンを押す。


「はい?」


若い男の人の声が帰ってきた。


「と、突然すみません!!」


私は緊張した面持ちで、プリントを預かって来た事を告げると門が開き、先程の声の人物であろう男の人が中から出てきた。


(ど、とうしよう…緊張する…。)

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