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秘密が明るみに出るとき


夕方になり、兄貴と貴将が帰って来た。


「お兄ちゃん!俺の今日の活躍すごかったよね!?さすが俺!!」

「うん、そうだね。」

「あー。お腹空いた〜。もうペコペコ!!キヨさ〜ん!ご飯〜!!」


貴将も兄貴もいつも通りだ。


いつ…言うのかな。


「…貴ちゃん、その前にお兄ちゃんお話があるんだけど…」


い、今か。そうだよな。兄貴は俺に気を使ってるんだ。俺がこの精神状態で食事を食べられないって…


「え?後にして。それより先にご飯。今の俺にご飯より重要な物はない!」

「…。」


これは…ご飯が先だ。







「あ~。お腹いっぱい!ご馳走様でした!!」


食事を終え、キヨさんが食事をダイニングからキッチンに下げる。


ダイニングには俺と貴将と…兄貴。


「貴ちゃん、あのね。お兄ちゃん貴ちゃんに謝らないといけない事があるんだ。」


つ、遂にきた。俺は緊張で心臓が飛び跳ねそうだ。


「え?お兄ちゃん何したの?じゃあゲーム買ってくれたら許してあげる。」


…。貴将はこの重々しい空気に気づいていない。



「うん…。あのさ、ずっと黙ってたんだけど…お兄ちゃん、直お兄ちゃんと貴ちゃんと…本当の兄弟じゃないんだ…。」



「え?」


貴将が聞き返す。


あぁ…遂に…。



「お兄ちゃんは二人とは血が繋がってないんだ。」



…泣き叫ぶかな。…きっと、貴将はそれでも、兄貴は兄貴と思うはずだ。…俺がそうだから。




出ていくと言った兄貴を、貴将と二人で止めよう。兄貴の家はここだろって。これからも兄貴でいて欲しいって。


そしたら…きっとこの、優しい兄貴は言うことを聞いてくれるはずだ。









「あ、そうなんだ!分かった!」



…ん?

随分と明るい返事…。


「話はそれだけ?」


貴将はあっけらかんとしている。


「えっ…。えーっと、まぁ、そう…かな。」


兄貴がしどろもどろになる。(あの兄貴がしどろもどろ…)


「じゃあお兄ちゃん、約束のゲーム!まだお店開いてるよ!買いに行こう!!」


…こいつ本当に分かってるのか?


「いや、貴ちゃん。お兄ちゃんは血が繋がってないから、貴ちゃんのお兄ちゃんじゃないんだよ?」


兄貴も俺と同じ事を思ったのかもう一度説明する。


「え?なんでお兄ちゃんじゃないの?」

「いや、だから…血が繋がってないから。」


兄貴は焦って説明をしている。あの兄貴を焦らせる。貴将は別の意味で、すごい。



「血が繋がってないとお兄ちゃんにはなれないの?」

「え…、」


「だってさ、ももちゃんもキヨさんも血が繋がってないよ?」


それは当たり前だろう。急にコイツは何を言い出すんだ。



「だけど、家族でしょう?」



…。


貴将はすごい。きっと、一番…兄貴の心に響いたはずだ。

(貴将の中では百子ももう家族なのか。)



「ははっ。そっか。ありがとう、貴ちゃん。」



兄貴が笑った。久しぶりに見た気がする。



俺が言われたときに、そう兄貴に言ってあげれたら良かった。そしたら、兄貴はこの数日だけでも、救われたのに…


俺が、深刻に考えたから、兄貴を傷つけてしまった。


俺はずっと、人として何かが足りないと思ってきたけど、まさかこれほどとは…。



「直くんもありがとう。」



俺が落ち込んでるのに気づいたのか、兄貴は俺を見て微笑む。


明るい、和やかな雰囲気なのに…


せっかく、兄貴が長年の重荷から解放されたのに…


「あれ?直、泣いてる?」

「泣いてない!!」


貴将にからかわれる。悔しい。


「貴ちゃん、直お兄ちゃんはお兄ちゃんの代わりに泣いてくれたんだよ。」


俺が泣いてること確定じゃないか。


「お兄ちゃん、人前じゃ絶対泣かないから。直お兄ちゃんが今のお兄ちゃんの気持ちを察して、代わってくれてるの。」


兄貴は俺をフォローする。…やっぱり気の利くおせっかいだ。


〝人前じゃ絶対泣かないから〟


俺は兄貴が泣いたのをこれまで一度も見たことがない。



〝男が泣くときは権力に負けたときだけだ〟



兄貴は覚えてなかったけど、確かにそう聞いた事がある。


あの穏やかな兄からは想像もつかない言葉だったから、小さいときだし、聞き間違いか夢だったんだろうとも思った。



今は、思う。


きっと、兄貴の実体験だ。




「お兄ちゃん!分かったから!早くゲーム!!」

「はいはい。ゲームね。」


…兄貴はすぐに甘やかす。


「直くんも一緒に行こうよ。」

「行かない!」


なんか照れくさい。






なんか、頭がグチャグチャだけど…良かった。


結局、俺が最初に取り乱してしまわなかったら、とも思うけど。


でも…色んな、隠されていた兄貴を知れて…良かったと思う。



家族なんだから。



血が繋がってなくても、格好つかなくても、どんな姿でも、どんなことがあっても、何でも受け入れたいと思える。



それが、家族というはずだ。


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