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直くんの気持ち


ーそういうの軽々しく言わない方がいいよ。ー


小学6年のときにクラスの女子、本田さんに言った言葉だ。


これが、あの場を切り返す最良の言葉だと思った。肯定も否定もせず、そこで会話が終わるように。


傷つけたのだろうか、怒らせただろうか。俺には女心は全く分からない。…からかわれたのだろうか。


あれから、特に変わったことなく本田さんはいつも通りだった。それは卒業まで同じで。


やはり、からかわれたのだろう――。




「直くん、制服似合うね。」

中等科の制服に身を包んだ俺を見て兄が眩しそうに微笑み、言う。


「ホント、良く似合ってらっしゃいますよ。」

使用人のキヨさん。


「馬子にも衣装!」

…相変わらずの弟。


仏間で両親の写真を前に兄が挨拶する。その後ろ姿は幾分痩せたようだ。どんな時も着丈に振る舞う兄はきっと一人で色んな事を抱えている。


兄を支えられる位に強くなりたい――。





✽✽✽



前にも増して、私は直くん好き好き光線を送る。

他の女子には負けていられない。直くんを取られたくない!!

怨念にすら近いような力を込めて今日も私は物陰から直くんを見つめる。

直くんはいつも、一人で誰もいない場所にいる。



クラスは離れ、中々直くんとの接点は無い。

風のうわさでは先日、直くんに告白した女子がいるらしい。


「直くん、彼女作るのかな…?」


…。イヤだ!!幼稚舎でひと目見てからずっと直くんに憧れていた。これを恋だと確信したのは小学校低学年くらいだ。


片思い歴なら負けない。


…それがなんになるというのか、結局の所直くんに選ばれなければ意味は無いのに。


「虚しい…。」


独り言は静寂な空間に響き、私の耳にしっかりと入り、余計にそう思わせられる。


(ヨシッ!)


「直くん!」


「!」


木の陰から出て行き直くんに声をかける。


いきなり物陰から人が現れ直くんはかなり驚いている。


周りに誰もいない。直くんと私の二人きりだ。


「彼女作るの?」


「…。」


直球過ぎたかな。直くんは黙って歩き出す。


私は慌てて後を付いていく。


「この間、告白されたって聞いて…」


「…。」


直くんは目も合わせようとしない。

私は痺れを切らしてしまった。


「直くん、私、直くんが好きなの。」


「…。」


「…軽々しい気持ちじゃないから。」


これだけはハッキリと言える。


「直くんが好きなの。」


「…好きなの。」


何一つ答えてくれない直くんに対して流石に泣きそうになる。


ようやく、直くんは足を止め私を見る。

目があった!心臓が飛び出そう。


「…他を当たってよ。」


衝撃だった。


「ッ〜〜。他の人じゃ駄目だよ。私が好きなのは直くんなの!!」


ボロボロと急に流れ出した涙を止めることが出来ない。吐き捨てるように言い、走って逃げてしまった。

へこたれないももちゃんが好きです(*^^*)

物陰からいきなり現れるって、ちょっと恐い(笑)

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