直くん、照れてごらん!
お花屋さんに寄って、お花を買った。
とっても、綺麗。いいニオイ。すーはー。
「俺も一人で花屋に来れるように頑張ろう。」
「ん?」
「…百子のその顔が見たいから、俺もお父様みたいに一人で花屋に寄れるようになりたい。」
な、直くんったら。饒舌ですこと…。自分から仕掛けて直くんが答えてくれるのとは違って、いきなり言われるとこっちが恥ずかしくなる。
ヨシ!
「そーんなに、かわいい顔してた?」
ドヤ!直くん照れてごらん!
「うん。」
!!ど、どうしたの今日の直くんは!!テレ屋をどこに忘れてきたの?あっ会社!?
「そこで二人何をしている!?」
ん、この声は…
「パパ!!」
お花屋さんの前でばったり!!
「今日は歓迎会じゃ…」
「それは来週だ!」
なんだって!?勘違い!!?
「…こんばんは。お疲れ様です。」
直くんがパパに挨拶をする。
「もう18時半だぞ!!」
「仕事が終わって、直くんお持ち帰りしたの!!そしたら真面目な直くんが手土産って言うからママにお花を買ったの!!」
直くんは本当に真面目なんだから!約束ちゃんと守ってるんだから!!
「パパはどうしてお花屋さんに?」
今日はラブラブ夫婦の記念日じゃないはず。
「百子が入社して初めての週末を迎えたから、その祝いだ。」
あれま!私用だったのね。
「…買ったのならもういい。」
パパはそう吐き捨てて、前を歩く。私達も後ろをついていく。
(直くんとの甘い一時が一瞬にして崩れさった。パパのバカ。)
✽✽✽
「あら。皆一緒になったの?直くん、いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
「くつろいでいってね。ご飯出来てるわよ。」
「ママ、直くんがお花を買ってくれた。」
いけない、いけない。私がずっと持ってたよ。直くんお花を持つことさえ照れてたから。
「まぁ〜!直くんありがとう。キレイねぇ。」
「百子さんが選んで下さいましたので。」
居心地悪そうにしてる直くんを尻目に店員さんにママの好きなお花と色を伝えて、後は見繕って美しくブーケにアレンジしてもらった。
私が全部選んだ訳じゃないのに私を立ててくれる。
「ふふふっ。早速花瓶に活けましょう。直くん座って待っててね。」
ママはとても喜んでいる。パパは無言。直くんに負けたとか、そんなこと思ってないでしょうね?
「いっただき、まーす!!」
お腹空いた。もうペコペコ。直くんが来たからか今日の我が家は豪勢で品数も多い。
「百子、ほら。これも食べなさい。」
パパが大皿に乗った料理を次から次へと取り分けてくれる。
「わーい。ありがとうパパ!」
もぐもぐ。美味しい。もぐもぐ。