エピローグ ステ振り失敗したけど、なんだかんだ幸せです
「ただいま」
「ただいまなのじゃ!」
時刻は夕方。
現在、アッシュとシャロンは家――旧ティオ家のあった土地に建てた新居へと、帰宅していた。
「うむうむ、相変わらず大きな家なのじゃ! 我にふさわしいのじゃ!」
と、言ってくるのはシャロンである。
しかし、そんな彼女に対し反論する声一つ。
「いえ……ここはアッシュさんと、私達の家です」
ティオである。
彼女はアッシュ達の出迎えに来たに違いない――とことこ歩いて来ると、気怠い様子でシャロンへと続ける。
「現におまえ、この家を建てる時に一銭も出してませんよね?」
「むっ! それを言うなら、おぬしだって大した額を出していないのじゃ!」
「それでも私は少し出しました……それに、この家が建っている土地は、もともと私達の土地です」
「へ、屁理屈を言うななのじゃ! 弱っちい人間の癖に生意気なのじゃ!」
「アッシュさんの奴隷の癖に生意気ですね……おまえは本来、家の中にも上がれない身分なのに……ふっ」
「っ~~~~~! アッシュ! おぬしは主である我がボロクソ言われていて、悔しくないのか! 早くティオに何か言い返すのじゃ!」
「…………」
正直言い返す要素がない。
この家は当初の予定通り、家ない同盟――アッシュ、ティオ、エリス共同の家にすべく建てられている。したがって、金を払ったのもその三人のみだ。
しかし。
何故かシャロンも住みついて居るのだ。
それも、しっかりと一部屋を使ってがっつり住み着いている。
なんでも本人曰く――。
『くははっ! ちょうどいいから、この家を人界征服のための拠点に使うのじゃ!』
とのことだ。
どう考えてもティオの言い分が正しい。
(もっとも、俺としてはシャロンも居てくれた方が、なんだかんだ楽しいからいいんだけど)
と、アッシュが考えていたその時。
「ちょっと! いつまで玄関で話してるのよ! 料理が冷めるんだからね!」
声と共にやってきたのはエリスである。
彼女はアッシュをキッと睨みながら言ってくる。
「全部あんたのせいなんだからね!」
「え、俺!?」
「当り前よ! そもそもあんたさえいなければ、あたしとティオだけで食事を始められたのに……あんたのせいでティオが『アッシュさんが帰って来るまで食べません』とか言うし、いい迷惑なん――」
「さっきと言っている事が違いますね」
と、エリスの言葉を遮るのはティオである。
彼女は口もとをやや嗜虐的に歪ませエリスへと言う。
「さっき『あ~あ、誰かを待つってこんなに素敵な事なのね』とか、『あいつが居なかったら、あたし達どうなってたんだろ』とか、他にも――もごもご」
「ちょっ――あんたは余計な事を言わなくていいの!」
「さっきから我を無視するななのじゃ!」
と、ティオとエリスに続きわーわーきゃーきゃー騒ぎ出すシャロン。
「…………」
アッシュはそんな彼女達を見て思うのだった。
何だかんだ楽しいこの生活。
ステ振りミスってよかったかもしれない。




