第三十話 予想通りの展開と……
「ほっ……よっ」
胴体に軽く蹴り。
頭部に軽くデコピン。
アッシュとしてはそんなつもりなのが。
ドゴォ。
メキャ。
と、響く轟音異音。
アッシュが軽く攻撃した魔物が、次々に壁にめり込んだり爆散したりする音である。
時はあれから数時間。
現在、アッシュとシャロンはダンジョンの奥深くまでやってきていた――ボス部屋まではもう少しに違いない。
そして予想通り、ある一定の階層になってから敵が出現し始めたのだ。
つまり。
(あの騎士二体を倒すほどの敵が湧くダンジョン。確かにレイド級ダンジョンといっても過言でない危険度だ……でも)
「アッシュよ、アッシュよ……これ、我がいる意味ないのじゃ」
と、言ってくるのはシャロンである。
彼女は数十分前から、暇そうにアッシュの後をついてくるだけ。
それには理由がある。
(ちょっと気合い入れてスキル《変換》でステータス弄り過ぎたかな)
現在のアッシュはステータス全てが限界値というだけではない。
様々なスキルを付与しまくっているのだ。
スキル《物理攻撃倍加》。スキル《防御貫通》。スキル《物理多段ヒット》。スキル《全体攻撃化》。スキル《自動防御》。スキル《自動反撃》。スキル《追撃》。
とまぁ、色々つけまくった。
これを簡単に表すとこうなる。
限界値の倍の物理攻撃で、相手の防御力を無視しての全体多段ヒット攻撃。そこからさらに限界値の倍の物理攻撃で、相手の防御力無視しての全体多段ヒット攻撃の追撃が入る。
さらにさらに。
攻撃を受けると、限界値の倍の物理攻撃で、相手の防御力を無視しての全体多段ヒット攻撃。そこからさらに限界値の倍の物理攻撃で、相手の防御力無視しての全体多段ヒット攻撃の追撃がカウンターとして自動で繰り出されるのだ。
結果。
「えーい」
と、アッシュがやる気なく拳を突き出すだけで、視界内の敵は一気に全員吹き飛ぶ。
運よくアッシュに攻撃出来たものも、カウンターで味方を巻き込みながら吹き飛ぶ。
「……ふぁ」
正直眠くなってきたアッシュであった。
●●●
さて、そんなこんなでやってきたのはダンジョン最下層。
現在、アッシュとシャロンの目の前にあるのは――。
「この扉を開けば、いよいよボスか」
「うむ! 暗黒騎士ゾンビがいるはずなのじゃ!」
と、シャロンは尻尾をふりふり言ってくる。
「おぬしの強さはよく理解したのじゃ! スキル《変換》によるコンボ……それを持ってすれば、暗黒騎士ゾンビも確実に瞬殺できるのじゃ!」
「油断するな~とか言われると思ったけど?」
「くふふっ、油断していてもおぬしなら絶対に負けないのじゃ。おぬしのスキルと、おぬしの戦い方を知れば、それくらいの事容易にわかるのじゃ!」
「はは……それじゃあ――」
「行くのじゃ!」
そうして、アッシュとシャロンは扉を開くのだった。




