第二十八話 スキル《変換》
スキル《変換》の正体とは何か。
そう聞いて来るシャロン。
アッシュがそんなシャロンに言うべき言葉は、現状一つしかないに違いない。
それは。
「お前はどこまで知ってるんだ?」
「ん~っとじゃな。我が知ってるのは、さっき言った通りなのじゃ。おぬしが元は違う世界の住人だと言う事。あとはスキル《変換》とやらを使って、色々やらかしてるくらいじゃな」
と、言ってくるシャロン。
彼女は尻尾をふりふり、興味津々といった様子で続けてくる。
「我は詳細が聞きたいのじゃ! スキル《変換》の詳細がすごく聞きたいのじゃ!」
「色々やらかしてるっていうと、かなり語弊がある気がするんだが……まぁそれは置いておくとしてだ。まずいくつか約束を守ってもらいたい」
「その約束とやらに同意したら、スキル《変換》について教えてもらえる。そういう判断でよいのかの?」
「あぁ」
シャロンがアッシュの秘密を知っているのは、十中八九彼女の能力――心が読めるとかそんな力のせいに違いない。
であるならば。
(隠しても意味ないよな。それならむしろ、何もかも話した方がいい)
その方がシャロンの性格からして騒がないに違いない。
と、アッシュはそう判断して彼女へと言う。
「まず一つ目の約束だが――」
「待て待て、まつのじゃ! そんなにいくつも約束があるのかの?」
「俺にとってはかなり重要な事なんだよ。それに安心しろ、そんなにハードル高い約束じゃない」
「むぅ……とにかく言ってみるのじゃ」
と、あまり納得していない様子のシャロン。
アッシュはため息一つ、そんな彼女へと続ける。
「まず一つ目――俺が別の世界から来たことや、スキル変換の事。それらに関しては、今後絶対に他言しないでくれ」
「ふむ、よかろうなのじゃ。他はなんなのじゃ?」
「二つ目――まぁこれは約束というか、後々言おうと思っていたお願いなんだけど」
「もったいぶらないで早くいうのじゃ!」
「俺はあまり目立ち過ぎたくない。だから、今回のクエストもそうだけど、俺が特別目立ちそうになったら、上手く話しを合わせてお前の手柄にしてくれ」
「……ふ、む?」
ひょこりと首を傾げるシャロン。
彼女は怪訝な表情で言ってくる。
「それはつまり、こういう事かの? 今後、我といる時に二人で立てた手柄は、全て我のものにして欲しい。と」
「まぁそういう事だ」
「くふふっ、別に構わないのじゃ! いやむしろ、それは我にとって好都合といえるのじゃ! なんせ手柄を多く立てれば、その分英雄に……人界の征服に近づくのじゃからな! くはっ、くははははははははははっ!」
二つの約束を飲んでくれたシャロン。
ならば問題ない。
アッシュはこれまでの経緯をかいつまんで話した後、スキル《変換》について――その理解している事全てを、余すことなくシャロンに伝えるのだった。




