第二十四話 奴隷を手に入れてみる
「どうしてこうなった……」
現在、アッシュは一人魔王城の廊下を歩いていた。
そうなった理由は簡単。
「エリスの奴本当に何考えてるんだよ……急に俺の腕ひっぱってベッドに連れ込むとか」
しかもその後、エリスはジッとアッシュを見つめながら『あ、あたしをベッドに連れ込んでどうする気よ!?』などと言い出す始末だ。
本当に意味がわからない。
おまけに、エリスは一通りアッシュに体を押し付けたり、身をくねらせた後――。
『んぅ……』
などと、寝息を立て始めてしまったのだからもう何も言えない。
そう……現在、アッシュのベッドはエリスに占拠されてしまっているのである。
「今日は一日中横になって、だらけていたかったんだけど。さすがに女の子が寝ているベッドで一緒に横になるのはな……」
一瞬、アッシュは『だったら、エリスのベッドに行くか?』とも考えたのだが、それは論外である。
女の子のベッドで眠るとか、メンタルが耐えられる気がしない。
「はぁ……こうして歩いていても仕方ないし、とりあえずティオを探しがてらシャロンの部屋にでも行ってみるかな」
と、アッシュは通りがかった魔物――人語を理解していそうな人型の魔物に、シャロンの部屋の場所を聞いてみると。
「魔王様の部屋の場所ですか? 魔王様がいらっしゃるのは、この城の頂上です。そこの階段を昇って行けば着きますよ」
丁寧に教えてくれる魔物さん。
しかし、その魔物は最後に聞き捨てならない事を言う。
「魔王様のご友人は魔王様と本当に仲がいいんですね。その質問をされるのは、今日で二人目ですよ」
「二人目?」
「はい。最初の一人は気怠そうな視線と、魔法使いの帽子が特徴的な――」
ここから先の言葉は、アッシュの耳に入ってこなかった。
どうしようもなく嫌な予感がしたからだ。
(特徴と一致しそうな外見なのは、まず間違いなくティオだ。そのティオがどうして一人で、シャロンのところまで行ったんだ?)
ティオとシャロンは先ほどまで揉めていた。
ティオから内容を聞いたところ、シャロンに散々舐めプされたとのこと。
「…………」
そして、ティオはドSだ。
その性格からして、バカにされることなどプライドが許さないに違いない。
と、これらの事から導き出される結論。
そんなもの一つしかありえない。
「ティオのやつ……シャロンに復讐しに行ったな」
いったいどのような復讐をするつもりなのか。
殺伐としたものではないに違いないが、いずれにしろ放っておいていいものではない。
「頼むから、また面倒事を起こすのは勘弁してくれよ。ないとは思うけど、魔王城まで吹っ飛ばされたら、本当に住むところなくなるぞ!」
一刻も早くシャロンの部屋まで行かなければならない。
アッシュは一人、全力で階段を駆け上がるのだった。




