第二十三話の二
手足が思う様に動かない。
気を許せば、すぐにティオに服従してしまいたくなる。
「わ、我に近づくななのじゃ!」
なんという屈辱。
現在のシャロンはこうして、言葉を発するだけで精一杯なのだ。
しかも。
「それで威圧しているつもりですか? 全く効きませんよ」
と、シャロンの傍までやってくるティオ。
彼女はシャロンの尻尾をぎゅむっと掴んでくる。
「こやぁっ!?」
「ふっ……可愛い悲鳴ですね」
などと、小ばかにしたような笑みを浮かべるティオ。
彼女は更に続けて言ってくる。
「魔王とはいえ、所詮は狐……尻尾は弱いようですね」
「っ……わ、我に何をする気なのじゃ!」
「私は今日からおまえのご主人様です……」
「だ、だからなんなのじゃ!? どういうことなのじゃ!」
「おまえに立場をわからせてあげます」
ティオがそういった直後だった。
再びシャロンの尻尾が、彼女により強く握られる。
「こ、こやぁっ!?」
「相変わらず可愛らしい悲鳴ですね……」
と、ティオはなおも尻尾攻めを続けてくる。
尻尾を握ったり、毛を引っ張ったり。
「んっ……やぁ……くぅ」
シャロンは情けない声を出さないために、シーツを噛むが襲い来る快楽はどうしようもない。
「し、尻尾……我の尻尾から手を放せ、なのじゃ!」
「嫌です……少なくとも、私が味わった屈辱を返すまでは続けます」
ティオは容赦ない。
彼女はにぎにぎシコシコ尻尾を弄ぶだけでなく、時折尻尾の毛を抜いて来るのだ――快楽の中に奔る僅かな痛み。
「あっ……こやぁ……っ!」
いつの間にやら、シャロンはそれでどうしようもなく快楽を感じてしまっていた。
こんなのはおかしい。明らかに異常だ。
(こやつ……隷従の首輪を通して、我の体に何かしているに違いないのじゃ! でなければ、こんな……こんなっ!)
シャロンはシーツを握りしめ、襲い来る快楽に流されまいと思考を続ける。
(い、今は我慢なのじゃ……わ、我は――んきゅっ! っ……我は魔王、まだ挽回のチャンスはあるのじゃ!)
隷従の魔法は成されたばかり。
であるならば、まだ完全に効果を発揮していないに違いない。
狙うならばそこだ。
(従ったふりをして魔力を回復させる……その後――んっ! くっ……その後、この魔法を首輪ごとどこかへ弾き飛ばしてやるのじゃ!)
「ほら、どうしたんですか? やめて欲しかったら、ちゃんと相応の態度を示してください」
と、さぞかしい楽しいに違いないティオ。
シャロンはそんな彼女へと言うのだった。
「くっ……我は絶対に屈しないのじゃ!」




