第十二話 魔王襲来
「ふぅ……なんだか、物凄く疲れたな」
アッシュはティオから貸し与えられた部屋――そのベッドへと横になり、ゆっくりと目を閉じる。
(こうしてベッドで寝るのは、本当にリラックスできるんだけど、やっぱりこうしてばかりじゃいられないよな)
ティオはアッシュの事を命の恩人。そう呼び、無償で部屋や食事を提供してくれている。
(その状況から抜け出すために、早く自立しないとな。このままじゃ、何度も言う様に完全にヒモだ)
とりあえずはギルドで冒険者としてクエストをこなす。
それがダメなら、スキル《変換》を使って、様々な商売をするのもいい。
「…………」
アッシュはそんな事を考えながら、眠りに落ちていくのたっだ。
…………。
………………。
……………………。
「くふふっ……見つけたのじゃ」
アッシュが眠ってからしばらく経った頃、ふいにそんな声が聞こえてくる。
アッシュの至近距離から聞こえて来たそれにより、彼は少し覚醒するが。
「ん~……」
圧倒的に眠いのでそれを無視。
アッシュは再び意識を深い深い闇の底へと落としていく。
だが。
「あっ! 寝ちゃダメなのじゃ!」
バンバン、バンバン。
声の主は言って、アッシュの胸をバンバン叩いて来る。
しかししかし。
「くか~……」
アッシュの眠気は決して覚めない。
すると。
「むぅ~! もういいのじゃ! アッシュの事は許さないのじゃ! でも……なんだか、我も眠くなって……んぅ」
アッシュの意識が再び闇に落ちる間際。
確かにそんな声が聞こえたのだった。
●●●
その夜、アッシュは夢を見た。
その夢の中でアッシュはまだ佐藤で、日本で普通に暮らしていた。
では、その夢の内容はというと――。
「こやぁ~ん!」
狐の夢だ。
日本に金色の狐が出現し、それを制限時間内に捕まえる必要がある。もしも、制限時間を過ぎれば、日本人全員が狐になってしまうというもの。
「ふざけるな! 狐になったらバイトできないどころか、生活できなくなるだろ!」
それだけではない、狐になれば大好きなゲームも出来なくなってしまう。
故に佐藤は走り出す。
走って走って。
走って走って走り続けて。
ついに。
「捕まえた!」
佐藤は金色の狐を捕まえる事に成功する。
しかし、彼にはここから先どうすればいいのかが、わからなかった。
(もう捕まえたから、日本人の狐化は防げたのかな? うーん……うん、それにしてもこの狐、もふもふして可愛いな)
佐藤がそんな事を考えていると。
「こやぁ~」
と、狐は甘えた様な声をあげる。
(か、かわええ……もう狐は捕まえたんだし、少しくらいモフモフしてもいいよな)
佐藤はそんな事を考えながら、捕まえた狐をもふもふし始めるのだった。
と、佐藤ことアッシュはそんな夢を見るのだった。




