第九話 初めての強敵
「まず試すのは、スキル付与をしない純粋なステータス操作のみの戦闘能力」
と、アッシュはスキル《変換》を使用し、次々にステータスを操作していく。
そして出来上がったのは、いつもの無敵モード――オールステータスマックスである。
「スキルは付与してないし、スライムは打撃攻撃を軽減する特性がある――死にはしないよな?」
と、アッシュは腕を引き、地面を蹴り砕き、スライム将軍へと瞬時に接近。
スライム将軍が間合いに入ったところで、それのコアがない位置へと腕を突き出す。
直後。
数秒前の光景とは真逆。
スライム将軍はトラックに衝突されたかのように、凄まじい速度で後方へと飛ぶ。
だが。
「っ!」
スライム将軍はすぐさま態勢を立て直し、アッシュへと突進を放ってくる。
アッシュはそれを強化されたステータスで躱し切り、スライム将軍の様子を観察する。
(スライム将軍のコアが発光してる……という事は、一撃で危険域までHPが減ったってことだ)
ここからわかるのは、純粋なステータス操作のみでも。そして、打撃を軽減する相手であっても、アッシュの一撃は相手に致命傷を与える事が出来るという事。
(とはいえ、さすがはスライム将軍というべきか。やっぱりまだまだ余力は残してるな……でも、もう攻撃系の実験をするのはダメだな。殺しかねない)
アッシュは心の中で舌打ちしながらも、次の実験へと移行する。
それは防御魔法である。
これまで、アッシュは防御する必要がなかったため、それを一度も使用していなかったのである。
(スライム将軍はゲームにおいてはレイドボス。そのスライム将軍相手に防御魔法を使って、攻撃を完全に防ぎきれれば、今後何が相手でも大抵は安全だろ)
と、アッシュはステータスを開き、そこへスキル《変換》により魔法スキルを書き加える。
書き加えたのは、魔力の高さだけ頑丈な壁を作り出すスキル《ウォール》。
かなり単純で初歩的な防御魔法である。
だが、魔力が防御力に直結するため、現状の実験においてこれ以上最適な物はない。
などと、アッシュが考えていたその時。
「スラァアアアアアアアアアアアアアアっ!」
スライム将軍が再び突進攻撃を仕掛けて来たのだ。
凄まじい速度、目視することすら困難の一撃。
しかし、アッシュの素早さは最高値。
故に、彼は余裕を持ってその攻撃を目視。余裕を持って攻撃へと対処する。
「スキル《ウォール》!」
同時、響き渡ったのは凄まじい音――交通事故でも起きたのではないかと思う程の音である。
「スラァアアアアアアアアアアアアアアっ!」
そう、スライム将軍がスキル《ウォール》により作り出した半透明の壁にぶつかり、止まったのだ。
アッシュはすぐに壁の様子を確認するが。
(よし、ヒビも入ってる様子はない。それに感じからして、まだまだこの壁の耐久値はありそうだ)
最強クラスの魔物、スライム将軍の攻撃を完全に防ぎきった。
これで先に言った通り、アッシュは大抵の相手の攻撃を――。
「スラァアアアアアアアアアアアアアっ! スラァアアアアアアアアアアアアアアっ!」
と、攻撃が防がれ怒ったに違いないスライム将軍。
スライム将軍はアッシュの思考を遮るかの様に、連続して壁への突進を始めたのだ。
当然、スライム将軍の攻撃をいくら喰らっても、壁は健在だった。
のだが、ここでアッシュにとって予想外の事態が起きた。
「す、スラァアアアアアアアアアアア……スラァアアアアアアアアアアアアアっ!」
スライム将軍の様子がおかしくなってきたのだ。
その攻撃は徐々に威力をなくしていき、スライム将軍自体も元気がなくなって――。
「え、ちょ……ちょっと待った!」
アッシュは気が付いてしまった。
スライム将軍は壁に突撃する勢いで、自らダメージを受けているのだと。
そう、アッシュが作った壁が硬すぎたのだ。
「だ、ダメだ! まだ死ぬな! まだお前としたい事が沢山あるんだ!」
アッシュはスライム将軍に手を翳す。
スライム将軍を救うために、再度魔法を発動するのだった。
「お前は俺が絶対に助ける……だから、お前も絶対に諦めるな!」




