ちらりと見て、俺のバイト先
いらっしゃいませ!
え? 別にお店に来てるわけじゃない?
まぁそうでしたね、すみません。
あ、どんなバイト先か教えて欲しい?
わかりました。
こちらはその一部です。
ちらりと覗いてみてください。
俺は怖いから見たくありません……。
「いらっしゃいませー」
俺は普通の高校生……っていうのはよく聞くと思うけど、特に紹介するところがないから使わせてもらう。
本当に普通の高校生なのだ。
両親兄弟姉妹がいて、普通に高校に通っている。
そしてここ、"希望"でアルバイトをしている。
「いらっしゃいませー」
このお店は自営業でラーメンを作っている。
従業員は店長のみで、アルバイトが俺のほかにあと二人いる。
基本的にはバイト一人いれば店が回るので、今日は俺と店長だけだ。
客が少ないのである。
小さなお店なので、来る客も常連の人しかいない。
ごく稀に、いつもは来ない客もいる。
「おい店員!」
今、俺を呼んだのは、本日唯一の常連ではないお客さんだ。
それにしても……。
なんであんな怖い顔してんだよ!?
「は、はい……どうなさいましたか……?」
ビクビクしながら尋ねてみると、相変わらずの怖い表情でこう言われた。
「店長を出せ」
「え……」
「店長を出せって言ってんだよ!!」
「は、はい!」
そう答えたものの、店長を呼ぶのはよろしくない。
「あの……」
「なんだ」
「店長を呼ぶのはちょっと……」
「アァ!?」
俺が困っていると、騒ぎを聞き付けたのか店長が来てしまった。
「どうされましたー?」
「は?」
お客さんの間の抜けた声が店内に響く。
あぁ……終わった……。
「お前が店長……?」
「そうですよー?」
「バカにしてんのか!!」
お客さんがそう言うのも無理はない。
店長の見た目は完全に女子小学生なのだ。
小さな身長に小さな体。
セミロングの茶髪にぷにぷにしてそうなほっぺ。
ぷるぷるな唇にちょこんと付いた鼻。
ちょっと膨らんだ胸元と小さいけどたしかに丸みを帯びたおしりは身長通りの年齢でないことを微かに強調している。
そんな店長はほっぺを膨らませてこう言った。
「む……てんちょーですよー! いったいなんのようですかー?」
「ああそうかよ! なら言わせてもらうぜ。この俺にこんな狭いとこで飯食えってのか!? アァ!?」
あーあ……言っちゃったよあのお客さん……。
店長は終始笑顔……営業スマイルで客の話を聞いていた。
そして、そのままのーー端から見れば営業スマイルには見えないかわいらしい笑顔で答えた。
「あ? なんか文句あんなら出てけや」
ね?
怖いでしょ?
え? この後?
聞かない方がいいと思うよ……。