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ワルツを踊れ  作者: 脱獄王
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ユーテロの揺籠#15

光理を見送った後、祥子は自室に戻るつもりだった。が、それを目撃した遥に強引に連れられ、今は遥の部屋に連れ込まれている。遥は根掘り葉掘りと言わんばかりに、光理と祥子が二人きりであった間の出来事をまるで事情聴取のように質問している。しかしながら、祥子からの返答に対して遥は大変ご不満のようで、事情聴取から反省会へと変わってしまっている。テーブルには飲み物とお菓子。布陣は完璧だ。遥はテーブルに頬杖を付きながら、六月の梅雨のような視線を祥子に送っている。

「私がセッティングしない内に折角二人きりになったっていうのに・・・どうしてもっと強引にいかなかったのよ?ぐっすり寝てたんだから、キスの一つや二つしたってバレないでしょうに」

 遥の暴論に祥子は身体を前のめりにし反論する。

「そんな事したらただの犯罪者でしょ!何考えてるのよ、遥は!?」

「そんな事ないと思うけどなー」

 遥はずいと祥子の顔に迫り人差し指を突き立てる。

「祥子はもっと自分に自信を持つべきなのよ」

 祥子は何とも言われぬ遥の迫力に思わず怯む。遥は元の位置に戻り、再び頬杖を付く。

「可愛い女の子にキスされて嫌な気分になる男なんていないわ。祥子は誰から見ても美人だし、神永くんだってキスされたらされたで満更じゃないと思うの」

「でも---------」

「いい、祥子!!」

 祥子の反論を許さず遥は声高々に物申す。

「世の中、所詮は手に入れたものがちなのよ。その力があるのに手を拱いているなんて、ただの臆病者と一緒。天下の星宮女子校の生徒会長に怖いものなしよ」

 遥の発言に祥子は上手く反論出来ず口を噤む。

 確かに、祥子自身も自分に自信がない訳ではない。容姿も悪くないと思っているし、校内の生徒からの信頼によって生徒会長を任されるようにもなった。それは認める。だが、恋愛はそれとは別物だ。自分に幾ら自信があるといっても、その自分に相手が好意を抱いてくれるとは必ずしも限らない。それだけではない。祥子には大きな『強敵』が存在しているのだ。

「正木祥子さんは神永くんの事・・・大好きみたいだよね。それもかなり」

 彼処まで分かり易く好意を表現しているのにも関わらず、光理自身はただの幼馴染と恋愛感情を否定していた。長年ずっといると、案外その辺の気持ちが鈍感になってくるのだろうか。

「私はそれこそ、チャンスだと思うけどな」

 遥はポッキーを口に運びながらぼやく。

「私の見解だと、神永くんは正木さんの好意よりも祥子の好意にドキっとしてるに間違い無いよ!」

「・・・・どこにそんな根拠があるのよ?」

 祥子は呆れたように質問する。

「今までの事は全部祥子から聞いてるし、実際に祥子と神永くんの青春ラブコメ状態を見れば尚更ねー」

 遥の生暖かい視線に、祥子は頬を赤らめ目を逸らす。遥はそれを満足そうに眺めると、

「・・・・後悔して欲しくないのよ」

 急に声色が変わった。祥子は慌てるように遥に視線を戻す。

「祥子には後悔して欲しくないんだ、私は・・・・今の気持ちが本物ならそれに従った方がいいよ。私だって恋愛経験あるわけじゃないけど、誰かを好きになるのは良い事だし、その人と幸せになるのはもっと良い事だよ。親友としてね、私は誰よりも祥子に幸せになって欲しい。--------私はきっと幸せになれないから」

 遥の最後の言葉に祥子は胸の内にふと不安が過る。

「変な事言わないでよ。遥だってこれから好きな人が出来るかもしれないし」

 祥子は慌てて取り繕うように遥を励ます。久しぶりに見た顔だった。この状態の遥を。

「まあ、そうは言ってもね。私の家も所詮、旧態然とした家だし。家の決まりに従うしかないのよ。私は精々、親の決めた結婚相手がイケメンなのを祈るだけよ」

 遥はそう言って再びいつもの状態に戻っていた。冗談を言ってはぐらかしているが、祥子の目から見れば、遥の表情はとても儚気に見えた。遥が言うように、二条家は代々政界に名を連ねる名家で、家柄や名誉を重要視している。遥には祥子にも話していない家の事情があるのだろう。祥子は遥にそれとなく訊ねた事があるが、いつもはぐらかされてしまうのだ。だから、敢えてそれ以上を追求した事はない。誰にでも、誰にも話したくない秘密はあるものだからだ。

「そんな事よりもさ」

 遥はテーブルの下から雑誌を取り出す。表紙には『夏のデートスポット特集』と派手な色ででかでかと書かれている。

「神永くんをデートに誘う算段を考えない?」

 祥子は無邪気に雑誌を見せる遥にこれ以上は野暮だと思った。

「そうだね。頑張って誘わないと!」

「その意気だ、恋する乙女よ!」

 遥は祥子の隣に移動すると、二人で雑誌の頁を捲り始めた。

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