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「飯時は基本駄弁り過ぎて食いきれないってコミュ力お化けが言ってた」

昼休み――――それは、学校が戦場となるひと時。

我が校は学食と購買、二つの主戦場に加え、近所のやたら安いパン屋、カップルに人気の昼食スポットと、多くの戦場を持ち合わせる激戦区である。

そこには多くの人間が居る。

購買という名の戦場に挑み、志半ばで倒れ空腹のままの六時限目(じごく)を迎える者、悠々と購買の人混みを掻き分け、目的のブツ(購買パン)を手に入れる者――――購買は死屍累々の戦場と化していた。


一方、学食に挑抜かりなく席を手に入れたのは良いがあまりの賑わいに食事を手に入れることの出来ない者、誰よりも早く食事を手に入れたのは良いが、席はすでに占領されており泣く泣く立ったままの食事を強制させられるもの。その二者を尻目に一人孤独に食事をする裏切者(ぼっち)。役割分担というチームプレイによって糧を得る理不尽(リア充)たち。


――――しかし、そこに現れた第三勢力、超越者(弁当勢)。彼らは圧倒的な安定感を持って戦士たち(非弁当勢)を蹂躙した………


------


「ってなんだよこの茶番」


昼休み、美術部所属の友人、郁馬(いくま)が俺と武、そして弁当を渡す際に一悶着あって合流した亮太に謎すぎる文章を見せてきた。

いやまぁ、確かに寸分の狂いなく純然たる事実ではあるんだけどな。ウチは近所では唯一の公立で偏差値50オーバーだからやたらと人が多いし、それがゆえに昼食を奪い合う激戦は毎日のようにというか本当に毎日起きているのだけれど。


「学校の方で出来るだけ弁当を持参し、学食及び購買の現状をなんとかしましょう的な企画をやるらしくてな。それのお知らせ的なものの内容を書けと言われたから書いた」


………お前は勇者か!?

俺たちは一斉に信じられないものを見るような目で郁馬を見た。

コイツはいつもいつもゴーイングマイウェイな奴だが、まさか学校からの公式なお触れの内容にここまで変なものを突っ込んでくるとはなぁ。一応は生徒会だからって………良いのか?

いやまぁ、これはこれで良いのか。どうせコイツのことだし。


「だが一応数名に意見を聞いておこうと思ってな。どうだ?」

「最高だな、やっちまえ」

「もちろん」


武が郁馬の評価を求める声に二つ返事で最高評価を付けると、郁馬は自らのカバンに紙をしまい、袋を取り出した。

今日のコイツは弁当らしいな。いつもは近所の安いパン屋のパンを前日に買って持ってくるスタイルなのに………って、んなっ!?

やっぱりパンなのか!?


「いやー、今日はサラダが食いたくなってな。適当に作っただけだよ。つーかなんで驚いてんだ?」


郁馬が前回パンだけじゃなかったのは母親がマジの重病の時だったからな。心配になるぞ俺たちは………


「あぁ、なるほど。まぁ大丈夫だぞ?今回は母さんもただの風邪だ」

「お前の母さんと言えば俺の知る限りでもただの風邪で三回は死にかけている人間だからな!?」


………なんだろう、すごく対応に体力を持っていかれるな。

とりあえず郁馬にツッコミを入れる係には亮太と武が着任したみたいだし、俺は先に飯を食わせてもらうとしよう。

なんかさっきから色々やってて大事なことを忘れてる気がするが、ひとまず腹ごしらえをさせてもらうとしようか。

俺は、やたら盛り上がっている三名を横目に一人食事を開始した。


………あ、しまった。


「どうしたいきなり立ち上がって………課題を忘れたか?」

「違う、俺のこの現状をこの昼休みに説明しようと思っていた相手が居たんだが忘れていたんだ!」

「どーせ彼女に、だろう?勝ち組(リア充)様は良いご身分だねぇ?」


ウザいぞ郁馬。ただいつも通りなので許してやろう。

あと察しが良くて助かる。


「というか、今からお前がTSしたことを説明したら飯食えないぞ?放課後にやれ放課後に。出来れば俺の感知できない場所で」


ぶれないなぁ………しかし、説明なら早い方がいいような………

俺が悩んでいると、郁馬は俺に対して致命的な決め手となる一言を言ってきた。


「じゃああえて言っておいてやるが、六時限目は体育だ。飯を食わずにいるのは生死に関わる」


………さ、とりあえずご飯食べましょか。

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