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壊滅

 戦図グラフィカには再び戦場の様子が映しだされた。運良く生き残った魔導師が、上空から峠を見下ろしていた。

 山道のいたるところ土がむき出しになっており、激しい破壊の爪痕が生々しい。特にあの老人が放ったと思われる光条を受けた場所では損傷が激しく、山の形さえも変わっていた。

 上空の魔導師が視界を拡大すると、穴だらけになった地面をひょいひょいと楽しげに跳ねている老人の姿が映しだされた。道端には魔導師たちが幾人も倒れている。まだ息のある者も多く残っているだろう。

 しかし、無常にも時は来た。突然、老人の足元に半径100mはあろうかという巨大な穴が出現した。


 奈落の門(インフェルノ)


 それは、遥か冥府まで続く道を開き、引きずり込んだ者を生きたまま冥府へと送り込む究極魔法の一つ。

 穴の上にあったものは、木や草や岩だけでなく、傷だらけになってうめいていた魔導師たちも奈落へと堕ちていく。


 老人は咄嗟に宙へと舞い上がった。

 しかし、穴から這い出てきた無数の触手に絡み取られ、抵抗あえなく冥府へと引きずり込まれた。


 やった!


 サングリアの握りこぶしに思わず力が入った。

「門を閉めろ。奴をこちらの世界から締め出すんだ!」

 命令を出した直後だった。魔法陣の上空に、輪郭だけの老人の姿が浮かび上がったのは。


『遠くからコソコソと仕掛けてきたのは、貴様らか』


 その声は音としてではなく、野戦陣地にいる者全員の脳に直接届いた。


『これはほんのお返しじゃ。受け取れ』


 そう言い残して老人が消え去り、


「いけない! 早く魔法陣を解いて!」

 魔法陣に表示されている超高密度魔言語リンガがめまぐるしく変化しているのを一目見て危険に気づいたサングリアだったが、その叫びは彼らに届かなかった。魔法陣を作り出していた魔導師たちはすでに、暴走した魔法陣へ魔力を供出するだけの存在になっていた。


 そして、魔法陣が()()()()


 色とりどりに輝いていた魔法陣が、月のない闇夜よりも暗い漆黒の穴となり、36人の魔導師を一瞬のうちに冥府へと飲み込んでしまった。瞬く間に穴は閉じ、そこには平穏のみが残された。


「な、こんな、」


 残された者達には言葉もなかった。こんなことはありえない。あるはずがない。

 魔槍マジックランスを受けきって無傷で立っていられるかと問われれば、サングリアにもフィールズにもできないことではない。要は発射する瞬間を見切ってしまえばいいんだと、いとも容易げに答えるだろう。

 だがそれは一本二本の話であって、全方面からの飽和攻撃を想定したものではない。ここは百歩譲ってそれが可能だとしても、だ。


 フィールズ将軍がゴクリと唾液を飲み込む音が、隣りにいるサングリアまで聞こえてきた。

「魔法を跳ね返した、だと……」

 そんなことがあり得るとは信じられない、いや、信じたくなかった。これまで学んできた魔術の理論が根本から覆りかねなかったからだ。

この物語は将棋✕ファンタジー✕青春小説『魔法を使って将棋を指したらダメだなんて誰が決めたの?』の前日譚になります。


https://kakuyomu.jp/works/4852201425154876316


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