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桃太郎の弟子は英雄を目指すようです  作者: 藻塩 綾香
第1章 桃の花が咲く頃に
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4話目 祝杯の席にて

 室内は大きく開放的であり、明るい室内には大きな笑い声や話し声で埋め尽くされ、賑やかな雰囲気が漂っていた。


 冒険者御用達の酒場の一つである『水銀の魚亭』に来ていた。客層は、駆け出しの冒険者から、中級の冒険者までを狙い、値段もリーズナブルに抑えられており、それなりに美味しい。

 

 室内は、木製であり多くの机と椅子が若干無造作にも思えるように配置されており、それぞれの冒険者が適当に机をくっつけたりして、盛り上がっている。


 そんな一角に、蒼と千鶴、そして昼間に会った冒険者四人でグラスを持って構えていた。


『かんぱーい!!』


 皆が一斉にそういうと、それぞれが手に持つグラスを打ち付け合ったのち、ゴクゴクと飲んでいく。ユリウス、アール、ゲブハルトの三人は豪快に酒を飲む。ペトルは果汁に蜂蜜を加え水で割ったもの飲んでいる。


 四人はそれぞれこの酒場に合ったものを飲んでいる中、蒼と千鶴はお金節約のために、店員さんから無理を言ってお水をもらっている。何か、料理は頼むつもりで入るが、安いものでなければ、日々の節約が水の泡になってしまう。


 こういう場所では、相手に会わせつつどれだけお金を使わないかが大切なのだ。


「いや、今日はありがとうございました」


 ユリウスが口に泡を付けながら答える。


 あの戦いの後、蒼と四人は行動をともにして一緒に討伐をして回った。その後、換金を済ませたのち、一緒に祝杯を上げようという話になり、今に至るわけだ。


 どうして祝杯を上げようという流れになったかは、正直四人がどんどん話を進めるので覚えていないに近い。


 蒼だけでは千鶴に申し訳ないと思い、一緒の席で水を啜っている。


「ユリウスさん、もう大丈夫ですので」


 あの後、何度この言葉を聞いたかわからないくらい聞いてきており、この返事も何度言ったかわからないほどだ。


「そういえば、蒼ってこの辺の出身じゃないよな?」


 アールが横から話に入ってくる。アールの近くには、もう皿の上にいくつかの料理が置かれていた。


「はい、極東のほうから来ました」


 極東、大都市アルフレドからはかなり離れた場所だ。出身は島国のような場所で、アレフレドとはだいぶ環境が違う。四季がはっきりとしており、春には桜という木の花が一面に咲きほこり、夏は緑色に爽やかに彩られ、秋は赤一色に染まり、冬は一面白銀の世界に変貌する。


「極東のほうですか。そちらには、多くの英雄の逸話が残っていますしね」


 蒼たちの故郷には、魔法という概念が発達していなかったために、大都市ほど技術力もなかったし、発展もしていなかった。ここに着た瞬間に、自分たちがどれだけ田舎の暮らしをしていたか思い知らされたものだ。


 戦闘についてもそれが言える。魔法という概念が、故郷ではあまり浸透していなかったが、『技』という武術において反映されていた。


 武器に力を込め、その瞬間に圧倒的な攻撃力を生み出す、一つの魔法のようなものだ。極東では、それが発達していたため、アレフレドとは戦い方が大きく二極化しているように感じた。


 ゲブハルトが大きなジョッキに入ったビールを飲み干すと、机にジョッキを置くと話しかけてくる。


「確か、最近の英雄でいえば、大英雄と謳われる『桃太郎』が有名であるな」


 ケブハルトは自信の髭をなでながら答える。


「あぁ、桃太郎ね。確か、王国に反逆した鬼神『鬼童丸』の退治に一人で請け負ったとか」

「それに加え、何千という鬼の大群を四人のパーティーで全部屠ったとか。すげぇよな」


 ユリウスとアールも興奮しながら答える。


 鬼童丸。

 昔は『鬼神』という名で多くの人々をその力で救ってきた英雄であったが、一人の女性を巡り王国に反逆したという没落した英雄だ。鬼童丸に狙われた王国は、首都の住民には一人の死者も出なかったが、壊滅的な被害を多い、多くの難民を出したことで有名だ。だが、話には尾ヒレが着いて回るものだ。どこまで真実かというのは定かではない。それが英雄の話で、酒が混じるとなれば尚更である。


「確か、桃太郎といえば、都市の四賢者の一人とも縁があったよな?」

「黒騎士のギル様ですね」


 黒騎士のギル。

 多くの難民の救助に携わっており、現在大都市アルフレドにおいてギルド本部を総括する四賢者の一人だ。現在もなお、現役で英雄の名を使い、大都市を中心に活動をしているというから、現在の生きる伝説にも近いものがある。


 四人が、蒼の師匠である桃太郎のことを、英雄として語らってくれていることに対してつい笑みが漏れてしまう。


 昔から、英雄という存在は憧れの的であり、小さな子から年老いた人まで、幅広い年齢がその話題で盛り上がる。そこには、いつだって尊敬と称揚の言葉で飾られる。


 その話題の中心が、自分の師匠であるということだけで、にんまりとした笑みが止まらない。


「どうしたんですか、蒼さん。そんなにんまりして」

「お酒でも飲んでないのに、酔ったであるか?」


 ゲブハルトが言うと、四人は大きく笑い声をあげる。蒼もつい、それに笑い声を重ねる。千鶴も、蒼の様子を見てか微笑みをこぼす。


「いや、自分の師匠が褒められるのを聞くと、自分のことじゃないのは分かっているけど、なんだか嬉しくって」

「蒼は、師匠のことをすごく慕っているからね」

「それはもう、俺の憧れだし、夢だからな」


 そう蒼と千鶴で笑い合うと、その反応とは逆に四人の表情が一気に硬くなる。


「えっ、蒼さん、今何て言いました?」

「僕もよく聞きとれなかったんです……」


 ユリウス、ペテルが不思議そうに聞き返してくる。それに、これは少しだけ声を大きくし、もう一度言う。


「俺の師匠は、桃太郎なんですよ」


 自慢げじゃないが、少しだけ高揚した胸でそれを伝える。

 四人は驚きが隠せないようで、一瞬硬直していた。突然、アールが話を切り出した。


「英雄からはどんなことを教わったんだっ!!」

「アール。そう慌てるなよ」


 アールのその剣幕は必至そのもので、興味という言葉が顔から全面に表れている。ユリウスはアールをなだめてはいるが、三人はアールと同じ事を並べていく。


 師匠との思い出はいくつもある。それを初めから最後まで話せなんて言われたら、朝が明けるのは確実だろう。あの日々は楽しかった。厳しいこともあったが、最終的には笑っていた気さえするのだ。


 そんな日々の中で、師匠が蒼に教えてくれたことは多くある。蒼が一人で生きていけるように、勉強から生活の基本に至るまで教えてくれた。それに、桃太郎以外にも犬、猿、雉の三人もいてくれたから、蒼が不自由するようなことはなかった。


 俺が、師匠から学んだ一番のことと言えば――――


「困っている人には手を差し伸べ、泣いている人にはそれ以上を出しだせ。って事かな? 具体性はないけど、師匠にも、ほかの三人にもずっと言われてた」


 この言葉だけが、今の自分の教本なのだ。そして、すべての行動の一つの指針でもある。


「なんか、英雄らしいお言葉だな」

「あぁ、自分のゲスな考えが馬鹿みたいだぜ。英雄っていうのは、その場にいなくても、人に尊敬されられるような存在なんだな」


 アールは、椅子に再び深く腰掛ける。

 その言葉と行動から、アールが何を聞きたかったのか理解できた。


「戦闘関連だと、あんまり教えてくれなかったな……」


 蒼がそうつぶやくと、四人はちょっぴり驚いたような顔をした。


「学んだことと言えば、魔法かな?」


 ペテルがその言葉を聞き、好奇心と興味を示してきた。四人の中で唯一魔法が使える身としては、やはり気になることなのかも知れない。


「どんな魔法を教わったんですか?」

「魔法といっても、直接的な魔法じゃないよ。一般的にいう、強化魔法みたいなものかな?」

「強化魔法ですか?」


 ペテルは、若干小首をかしげながら答える。


「本当に単純な強化魔法だよ。物体の持つ力を高めるくらいの魔法」


 強化魔法といえば、魔法の中でも初級の初級、初手の初手で習得の可能な魔法だ。具体的には、支援強化魔法と物質強化魔法の二つに分かれる。


 支援強化魔法は、他人に唱えることで魔法が付与された人の基礎能力が向上するというもの。物質強化魔法は、物体に唱えることで魔法が付与された物体そのものの硬度を上げたり、潜在能力を上げたりする。


 物質強化魔法は魔法の中でも、物体に魔力をつぎ込むだけで発生するため、一番簡単かつ基礎の魔法でもある。


「えっと……」


 蒼は手ごろな物がないかと探すと、目の前に盛られていた食材がすべて食べられた後の陶磁器の皿があるのを見つける。それをおもむろに手に取る。


「まぁ、普通の物質強化魔法だよ」


 そういうと、蒼はテーブルに置いてある皿に向かって魔法を付与させる。一瞬白く光るだけで、皿自体に何か起こったようには思えない。

 その皿をテーブルの外まで持っていくと、皿を持つ手を離す。すると皿は、重力に引っ張られ地面に向かって一直線に落ちていく。


 普通ならばここでパリンと音を立てて割れるところが、カコンと木の桶のような無機質な音を立てると割れることなく地面に落ちる。


 物質強化魔法は、このように物体に対して付与させることで、通常の状態よりも強く硬くといったことが可能になるのだ。


 しかし、物質強化魔法にも強化できないものというものがある。回復ポーションなどの特殊な効果を発するものだ。回復ポーションに魔法をかけたとしても、効果が上がることはない。逆に、容器が硬くなるだけだ。


 蒼は、皿を拾うとぺテルの方へと視線を向ける。ぺテルはというと、どこか呆けたような表情をしている。この反応が妥当だろう。


 英雄といえば、伝説に残る人間。ひとつの森を大火球によって焼け野原にしたり、砂漠地帯に雨を降らせ森林に変えたり、ドラゴンを倒す際に氷魔法で氷山を作ったり。実際に天変地異なんじゃないかと思うような魔法を使用するのだ。


 蒼が英雄の師匠から教わったのは、魔法の基礎の基礎である物理強化魔法。それでは、ぺテルもつまらない表情をするわけだ。


「師匠からこれをずっと教わってたな。他の魔法は教えてくれなかったし、師匠も攻撃魔法自体は得意じゃなかったらしいから」


 蒼はそういうと、手に持つ皿をテーブルの上に置く。


「英雄って……実際どんな魔法を使っていたんですか?」


 ぺテルが話題を変えようと話をふってくる。


「俺が戦いに連れて行ってもらったときは、いつも師匠は強化魔法しか使ってなかったな。刀一本に魔法を付与させて、魔物と戦ってたかな」


 いつだって師匠が炎系魔法や氷系魔法といった攻撃魔法を使ったことがない。属性魔法付与エンチャントだって見たことがない。ただ、物質強化魔法しか使ったところを見た所がない。


「でも、きじ姉ぇはよく属性魔法を使ってたなぁ」

「雉といえば、桃太郎のパーティーの一人であったな。確か、魔術師に属されていたとか」

「そうそう。雉姉ぇだったら、師匠と違って魔法を普通に使ってたなぁ」

「雉さんですか?」


 桃太郎のパーティーは桃太郎と、犬、猿、雉の四人で構成されているのは有名は話だ。桃太郎をリーダーに、焔狼えんろう猿綱えてこう帝雉みかどきじの二つ名があるほどだ。桃太郎の下にいるというだけで、個々の力はそれこそ英雄と同じほどだ。それぞれがめちゃくちゃ強い。


「雉姉ぇに一回、魔法を教えてくれって頼んだけど、『蒼が魔法の真髄に触れるのは早い』とか何とか言って教えてくれなかったなぁ」


 雉姉ぇはとても優しい人だったが、魔法のことになるとすごく真面目な人だった。


「そうなんですか。やっぱり、魔法は難しいんですね」


 ぺテルはどこか納得した風に答える。ぺテルの満足のいく答えが出して上げられないことが、少しだけ悔やまれる。


「そういえば、どうして蒼さんは師匠のもとから離れたんですか。自主的な修行か何かですか?」

「修行っていうか……」


 蒼はユリウスの質問にすこしだけ戸惑って頬をかく。


「修行じゃないんだけど、今に至る経緯は少しだけ話すと長くなるかなぁ」

「そうなんですか? う~ん、すこしだけ興味ありますね」

「そうだよなな、ユリウス。英雄の弟子の経歴、気になるよな!!」

「うむ、我も少しながら興味を抱いたのである」

「僕も……気になります」


 四人がそろった意見を出す。蒼は少しだけ困ってしまったが、蒼は千鶴に反応を求めると「良いんじゃない」と軽い返答が帰ってきた。


「まぁ、別に減るもんじゃないし大丈夫か」


 蒼は少しだけ気を落ち着けると、簡単に話し出す。


「俺は捨て子でさ。そんな俺を師匠たちが拾ってくれて、人里はなれた山奥で師匠たちと暮らさせて貰ったんだ。大体十四歳くらいまで一緒に暮らしてた。本当の家族みたいに接してくれたんだ。それだけど、ある日家に大量の魔物が襲ってきて、俺一人だけ何とか生き延びたんだ」

「えっ? 生き残った?」


 アールが不思議そうな顔をしてこちらを見てくる。


「あぁ、生き残った。山を覆いつくすほどの魔物の群れ。尋常じゃない数の魔物が、家を襲ってきたんだ。そのときに、師匠たちが何とか逃してくれたけど、その後は、さっぱり……」

「全滅ってことか?」


「……かもしれない。でも、師匠は強いし、他のみんなだって強いからきっと生きているはずなんだ」

 

 蒼は、気づくと拳を硬く握り締めていた。


「小さい頃の俺は、ずっと師匠が人を助ける姿を見ていたから、人助けができる英雄になりたいって夢ができたのがそのときだった」

「英雄願望であるな。うむ、やっぱり皆と同じ志の持ち主であったか」


「それから俺は、千鶴のいる武家の甲斐家に弟子入りして、三年くらい雑用をしてたかな」

「……? 雑用ですか?」


 ぺテルが不思議そうな顔でこちらを見てくる。何かおかしなことを言っただろうか?


「あぁ、雑用だよ。家に住む人たちのご飯を作ったり、掃除とか洗濯とか家事全般をこなしたり、鍛冶屋とか薬屋とかにおつかいに行ったり。刀なんて一回も握らせてくれなかったかな」

「えっ、それじゃあどうやって剣術を学んだんですか?」


「一応、千鶴から甲斐家に伝わる技は全部教わった」

「千鶴さんからですか?」

「あぁ」


 千鶴が少しだけ重たそうに口を開く。


「私は昔から体があまり強くなくて、女って事で技を教えてくれなかったんですが、父たちの技を見ているうちにその動き方だけはしっかりと覚えてて」

「それで、俺と千鶴で試行錯誤しながら、技を使えるようにいろいろ考えて、今に至るかな」


「それじゃあ、千鶴さんと蒼さんは師弟関係なんですか?」

「うん。そうでもあるけど、今はほとんどの技を教えきっちゃったから、ただのギルドマスターと構成員かな」


 ギルドには蒼と千鶴の二人きり。それこそ本当の弱小ギルドだ。


「こんなところじゃないかな」

 

 蒼は、一通り話し終えるとコップの水を一口飲む。


「桃太郎たちが、ご無事であるとよいな」

「そうだな。英雄なんだからきっと無事だとは思うがな」


 ベルハルトとアールがそれぞれ頷く。

 蒼だって、そうであってほしいと願っている。だが、焼け野原と化し、巨大なクレーターができたあの山を見たら、その言葉が真実になるのは難しいかもしれない。


「俺も、そうあってほしいと願うよ」


 ユリウスも共感の声を上げる。


「そういえば、ユリウスたちはどこのギルド所属なんだ?」

「ん? 俺たちか?」


 ユリウスはどこか誇らしげな顔を浮かべる。そして、一枚の羊皮紙を取り出した。そこには、ギルドの紋章エンブレムが描かれていた。

 白い鳩が中央に描かれており、その両端には羊の角が描かれている。


「都市の中の中堅ギルドの『ピジョンスケープ』に入らせていただいています」

「ピジョンスケープですか……」


 確か、冒険を主に行っている傍らで、貿易にも手を出して利益を上げているギルドだったはずだ。Bランク中堅というだけあって、貿易品などは根強いユーザーに支えられ、安定した経営をしていたはずだ。

 そして、冒険者ギルドとしても優秀で中級の冒険者から、上級の冒険者までいたはずだ。


「すごいじゃないですか!!」


 蒼は、驚きのあまり声を上げてしまう。まだアレフレドにきて間もない蒼でさえ知っている大手ギルドに所属しているなんて、とてもすごいことなのだ。大手となれば、その門はとても狭い。冒険者ギルドであれば、その素質がないと入れなず、年に数人しか受け入れないなんていうギルドすらあるほどだ。


「いや、俺たちが入っても上には上がゴロゴロといますから。先輩方なんて、俺たちからすれば本当に人間離れってやつです」


 ユリウスは謙遜してそんな風に言って見せるが、事実ピジョンスケープに入るためにはかなりの難関だと聞いたことがある。そこに受かったユリウスたちは、初心者の中でもエースに入るのではないだろうか。


「私たちのギルドなんかとは大違いですね」


 千鶴がどこか謙遜した風に言ってみせる。


「いえ、千鶴さんたちのギルドは創立したてですから始まったばかりなんですよ。これから強くなりますって。なんたって、英雄の弟子がいるんですからね!!」

「そうですよ、俺たちなんかより蒼は素質あるって!!」

「そうであるな」

「僕たちなんかじゃ太刀打ちできないかもね」


 そういうと四人は笑って見せた。


「俺はまだまだですよ。でも、きっといつか英雄になってやりますよ」


 師匠が俺を助けてくれたみたいに、俺は誰かを助けられる人になりたい。

 師匠が俺に優しくしてくれたみたいに、俺は誰かに優しくできる人になりたい。

 師匠が俺にしてくれたことを、俺は誰かにできる人間になりたい。


 師匠のあの大きな背中に追いつけるようになりたい。それが、蒼の英雄願望である。


「そのときは、俺も英雄になってるからな」

「アール!! 俺たちな!!」


 ユリウスがアールの思いっきり叩く。


「それじゃあ、今日ははしゃぐか!!」

「アール、ぶっ倒れるなよ」

「ユリウスこそな」


 そういうと、ユリウスとアールが互いにジョッキを打ち付けあう。そこから、ビールが溢れてこぼれる。そんなことをお構いなしに、一気飲みをする二人。


「今夜は祝杯なのですし、楽しみましょう」

「そうであるな。祝杯は笑って、語り合う楽しい宴のこと。さぁ、存分に楽しもうではないか」


 ぺテルとゲブハルトも自分の飲み物を一気に飲み干す。


「俺たちもそうするか」

「そうしましょうか。それじゃあ」


 蒼と千鶴はそう言い合うと、互いにコップに入った水を一気飲みする。


 今夜ばかりは、水以外に手を出しても良いのかも、と心の中なで思う。

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