表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎の弟子は英雄を目指すようです  作者: 藻塩 綾香
第1章 桃の花が咲く頃に
29/378

28話目 略奪者と被害者

 ―――スキル『略奪者ウバウモノ


 かつて勇者まで上り詰めた男がいた。その男には仲の良い仲間、ライバルとも呼べる存在がいた。だが彼はひとつ思うことがあった。なぜ、自分にはないものが、アイツにはあるのだろうかと。勇者の彼はそれを妬み、悋気、嫉妬に駆られた。


 いつしかそれは彼の手にナイフを握らせていた。そして、最後には刺し殺し、勇者を堕落するという結末に終わっていた。その代わりに彼は仲間の能力を手に入れ、後世に『略奪者』として語られることになる。


 その能力は、敵の魔力を奪い取る。


 だが、ルシア・パントゥーナにはスキルが二つ備わっていた。

 それに気がついたのは、『聖槍の騎士』のギルドマスターであるジェット・グルーヴァーに最初の一撃を貰ったときだった。


 一緒だけ、体から意識が抜け、死んだのだ。

 だが、自分の体は呪いのような自然高速回復オート・ハイヒールにより体は再生される上に、死ぬことが許されない体により、再び自由を得ることになる。


 だが、それだけでは終わらなかった。

 相手は気づいていたかもしれないが、ジェットの行動速度が若干低下していたのだ。

 最初の一撃以来、自分が死んだという感覚が無かったのもそのためだと、後で気がついた。


 ――――スキル『被害者ウバワレルモノ


 かつて勇者までのぼり詰めた男がいた。その男には仲の良い仲間、ライバルとも呼べる存在がいた。だが彼はひとつ思うことがあった。なぜ、俺はヤツに殺されたのだろうか。なぜ、俺はヤツに殺されなければならなかったのか。


 死ぬ間際、彼はそのことを恨み、憎み、呪った。

 いつしかそれは、呪いのように彼に纏わりついた。彼が違和感を覚える程度の全ステータスを下げた。だが、それだけしか叶わなかった。

 いつしか彼は『被害者』と呼ばれるようになる。


 その能力は、全ステータスの低下。


 私は、この二つのスキルに気がついたからなのか、それとも単に惚れた青年の惨めな姿が見たくなかったからなのか祈ってしまったのだ。願ってしまったのだ。


 勝利してほしいと。


 その願いのために、私は何度も死んだ。

 触れれば発動する『略奪者ウバウモノ』で触れるたびに魔力を少しずつ削っていき、死ぬ度に発動する『被害者ウバワレルモノ』によりステータスを少しずつ下げていく。


 これによって、ヤツは今頃ステータスだけで言えば上級冒険者と大差ないだろう。それに加え、魔力もほとんど削り、蝋燭の火よりも弱々しく残っているだけだろう。


 この選択は、失敗だ。

 もしかすると彼は死んでしまうかもしれない。

 だけど、消える瞬間、最後のひと時に彼の勇ましい姿を納めておきたかった。


 それだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ