ホテルでの出来事
珈琲を片手に持ち、新聞を読む。毎朝の日課のようなものだ。
さあ!新たなる一日の始まり!と思ったその時である。プルルルルルプルルルルル…
あぁ、今日こそは事件などに追い回されずに済んだと思ったのに……
私の名前は武田松五郎。とある町の警部だ。
どんな事件でも簡単に解決してきたためか、
世間では「名探偵まっちゃん」などと呼ばれている。まっちゃんというのはちょっと気に入らなかったが、名探偵と言われるのは嬉しい。
ピッ
「もしもし」
「おはようございます。武田警部!今日は難事件ですぞ!」
いつも通りの台詞。飽きてしまった。
今の電話相手は私の部下の新田慎太郎。一般人でも解けそうな事件もしばらく考えこまないと解けない。
非常に使えない部下。だが、事情聴取などの行動だけは早い。頭の回転を早くして欲しいものだ…などと考えている暇はない。
とっとと珈琲を飲み、パンを加えながら
愛車に乗り込み事件現場へと急ぐ。
今日の現場はまあまあでかいホテル。
それじゃあいつも通りちゃっちゃと片付けますか!!と気合いを入れた。
「来た来た!名探偵だ!」「今回のは何分で解けるかな」
既にTV局が来ていた。今回はホテル内での殺人事件。まあ結構有名なホテルだからニュースになってもおかしくないかなどと考えつつ現場へ急いだ。
第一に挨拶したのは新田だった。
「お疲れ様です。警部!」相変わらず元気なやつだ。「現場の状況は?お前ならもう既に知ってるだろ」すると彼は嬉しそうに答えた。
まず、被害者は…面倒なのでAとしよう。
被害者Aは貿易商をしている35歳の男性。
部屋で首を絞められ殺害されたらしい。
容疑者は5人。これまた面倒なのでB、C、D、E、Fとしよう。
容疑者Bは穀物業をしているAと同年代。
Cは魚屋に務める同年代。
Dは石油業をしている同年代。
Eは服屋に務める同年代。
Fは宝石商をしている同年代。
つまりは全員ばらばらの職業をしている同年代。その六人がこのホテルに泊まっていたらしい。
全員真横の部屋にそれぞれいたらしい。
705→A 706→B 707→C 708→D 709→E 710→F
といった感じ。705〜710の部屋は真横に並んでいる。そして710つまりFの部屋の右側にトイレがある。とまあこんな感じ。
頭の中で構図を思い浮かべて欲しい。
Aはなぜ殺されたかという動機はあるのか?と問うと、Aのアメリカとの貿易商はここ最近上手くいっていて、それをずーっと5人に自慢していたらしい。
それに腹を立てた誰かが殺害したのではないかとされている。
そして有力な手がかりがあるらしい。
と、ここまで聞くのに精一杯な武田は彼を止めた。
「成る程、よく分かったがちょっと待て、
ふう、、よくそんなに喋れるなお前…」
「で、その有力情報っていうのはですね」
「…」こうなったら止めようがない。
「Aがあるメッセージを残していたんです」
「ほお、ダイイングメッセージってやつか。
なかなかダイイングメッセージに出会うことは…」「なんて書かれていたと思います?」
「……知らん」
「なんとなんと!」「おお」「なんとなんと!!」
言う気があるのかこいつは…
「[710]と書かれていたんです!!これは710号室ということですよね?つまり犯人はFだ!間違いないですよね?警部!!!」
「落ち着け、容疑者はなんと証言しているんだ?」
<証言と犯行時刻何をしていたか>
B「俺はやってないぞ![710]なんだろ?ならFだろ。」
彼はその時部屋にいたらしい
C「私ではありません。アリバイはないですが…」 その時、部屋の風呂へ入っていたらしい
D「自信はないですがBが怪しい気がします…」
犯行時刻辺りにトイレへ行った時Bらしい人を見た
E「俺がやるわけないじゃん。[710]なら、Fしかないだろ。あの足音はFに違いない!」
ちょうど犯行時刻あたりにAの部屋からこちらへ向かってくる音がした。
F「疑われていますが、僕ではありません。
あと、Cは嘘をつきやすいので注意して下さい」その時部屋にいたらしい。
「とまあこんな感じです。警部!これは間違いなくFですね。そうですよね⁈」
「………………………ほお」
「警部?」
「これは……難しいな…だがFではない」
「ええ⁈しかしメモには確かに[710]と…」
「メモ?つまりそれは紙に書かれていたと?」
「はい。それはAが持っていました。死ぬ間際にちからを振り絞り書いたのでしょう」
「成る程….お前は本当にFだと思うのか?」
「はい。これは誰でもFと思うのでは…?」
「もう一度良く考えてみろ!!!」
「うーーむ………」
皆さんも考えてみてください‼︎