表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サキュバスは今日も夢を見る  作者: 佐藤つかさ
第一章 ~花と雨~
5/17

4.都 ~Tir na nOg~

 その街は、ティル・ナ・ノーグと呼ばれていた。

 

〝常若の国〟あるいは〝勝利者の島〟という意味がこめられているという。

 

 だがこの街は島にあるわけではない。広大な大陸の湾岸部に作られており、国土面積は20万平方キルトマイス――この世界における長さの単位。1キルトマイス=1キロメートル――で、人口は3万人。これはこの大陸に内在する都市の中でも最大級を誇る。その市民を守るために、街の四方をぶ厚い城壁で囲んでいるのは当然と言えるだろう。

 

 この城塞都市には、両極端が同居している。

 街に歩を進めれば、ブランネージュ城やサン・クール寺院などといった文明開化の〝シンボル〟が並んでいる。

 

 しかし、ほんの少し足を運べば、人跡未踏の森や平原など、文明を寄せ付けぬまま歴史以前の姿を今も保っている。

 現在と過去。異なる二つが同居していながら微塵も違和感を抱かない。それがティル・ナ・ノーグなのだ。

 

 この国が人々に重宝されている理由。それは規制が少なく低税率な自由経済を特徴という点にほかならない。

 わかりやすく言うならば〝安くて自由な取引ができる〟ということだ。さらにありていなことを言ってしまうなら――楽に儲かる。

 

 だからたくさんの人々が集まる。この国は貿易によって潤っているのだ。人口3万人は伊達じゃない。

 

 住む人が多くなってくると、人種というものは極めて雑多になってくるものだ。

 

 人間、エルフ、ゴブリン、サキュバス、狐人ワーフォックス……。

 耳がとがっていたり角が生えていたり翼をはためかせていたりと実に多彩。まさに世界人種の展覧会。

 それ故なのか、ここでは他人の肌の色や姿かたちを気にすることはない。それもまた、この街が好まれる理由の一つでもある。

 

 一見するとまとまりのない雑多なグループのようだが、時折共通点が見受けられるときがある。

 

 それはタトゥーだ。

 

 足、胸、腕、首、体のどこかしらに存在する刻印。老若男女模様色々奇々怪々。

 しかしこれは決してカラダに墨を入れているわけではない。かといって焼きゴテで熱したものでもない。

 

 

 では何なのか。――それは魔法だ。

 

 

 ティル・ナ・ノーグという言葉にはもうひとつの意味があると言われている。――〝妖精の住み家〟である。

 

 この世界において妖精とは世界の創造主であり――神。

 

 そしてその妖精の亜種とも呼べる〝精霊〟という生き物が存在する。神ではないが人でもない。そんな存在。

 

 精霊と契約を結ぶことで、ヒトは魔法を使うことができるようになる。科学を超えた力を、まるで指を曲げるようにいともたやすく使うことができる。人の手に神が宿るのだ。

 

 

 そういう人種を、人々は〝魔法使い〟と呼ぶ。

 

 

 ティル・ナ・ノーグの総人口は3万人。現在確認されている魔法使いの数は300人とされている。おおよそ人口の1%が魔法使いだという言い方もできるだろう。

 

 

 この街には、1%の神がいる。

 

 

 この街はいつか、いつしか、魔法使いに侵略されてしまう日が来るのだろうか?

 

 いやいや。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ