15.厄 ~emergency~
緊急事態。
赤い背景に黒い文字で“緊急事態”と書かれた表示が、ヴィジョンにハッキリと映し出されている。
「…………」
クラリスは立ち上がり、その光景を見つめていた。周りの人々もクラリスと同じく、建物にかけられた巨大スクリーンを見つめている。この場にいる誰しもが今、たった一つの感情――不安を共有しているのだ。プロである天馬騎士団の面々ですら。
隣のスクリーンも、そのまた隣も、ティル・ナ・ノーグ中のヴィジョンが緊急事態だと悲鳴を上げている。
赤と黒のコントラストが世界を包む。
今も明滅する“緊急事態”の文字。いきなり飛び込んできた非日常に、誰もが呆気にとられていた。
一体何が起こっているのだろう。
一体何が始まるというのだろう。
この時のクラリスはまだ知らなかった。
この警報が、かつて6年前に出現した厄災――イーバ01が侵入してきたときと同じ警報であることを……。
◇◆◇◆◇
緊急事態の警報が鳴り始めた時と同じ頃。
天馬騎士団の本部を、ある男が歩いていた。
石畳の通路を草履で踏みしめ、男は進む。
彼は天馬騎士団の人間ではない。そもそも草履などという藁を編んだ履物を扱う文化はティル・ナ・ノーグには存在しないし、そんなものを履いている騎士もいない。能登上布縞織り出しの着物を着ているのならば尚更だ。
白花と呼ばれる東の島国――日出ずる国から来た男。
着物に刺繍された家紋を背負って、肩で風を切る益荒男のごとき姿はまさに“粋”といえるだろう。
男の名はソハヤ・トウドウと呼ばれていた。
Special Thanks
ソハヤ・トウドウ(Sohaya Todo/日本語表記:藤堂楚葉矢)
考案――タチバナナツメさん
ビジュアルデザイナー――シャバドゥビタッチヘンシーン!――麻葉紗綾さん




