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サキュバスは今日も夢を見る  作者: 佐藤つかさ
第二章 ~クラリス・リベルテと夢の先~
16/17

15.厄 ~emergency~

 緊急事態エマージェンシー

 赤い背景に黒い文字で“緊急事態エマージェンシー”と書かれた表示が、ヴィジョンにハッキリと映し出されている。


「…………」 

 クラリスは立ち上がり、その光景を見つめていた。周りの人々もクラリスと同じく、建物にかけられた巨大スクリーンを見つめている。この場にいる誰しもが今、たった一つの感情――不安を共有しているのだ。プロである天馬騎士団の面々ですら。

 

 隣のスクリーンも、そのまた隣も、ティル・ナ・ノーグ中のヴィジョンが緊急事態だと悲鳴を上げている。 

 赤と黒のコントラストが世界を包む。

 今も明滅する“緊急事態エマージェンシー”の文字。いきなり飛び込んできた非日常に、誰もが呆気にとられていた。

 

 一体何が起こっているのだろう。

 一体何が始まるというのだろう。

 

 この時のクラリスはまだ知らなかった。

 

 この警報が、かつて6年前に出現した厄災――イーバ01が侵入してきたときと同じ警報であることを……。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 緊急事態エマージェンシーの警報が鳴り始めた時と同じ頃。

 

 天馬騎士団の本部を、ある男が歩いていた。

 石畳の通路を草履で踏みしめ、男は進む。

 彼は天馬騎士団の人間ではない。そもそも草履などというわらを編んだ履物はきものを扱う文化はティル・ナ・ノーグには存在しないし、そんなものを履いている騎士もいない。能登上布縞のとじょうふしま織り出しの着物を着ているのならば尚更だ。

 

 白花シラハナと呼ばれる東の島国――日出ずる国から来た男。

 着物に刺繍ほどこされた家紋を背負って、肩で風を切る益荒男ますらおのごとき姿はまさに“粋”といえるだろう。

 

 男の名はソハヤ・トウドウと呼ばれていた。

Special Thanks


ソハヤ・トウドウ(Sohaya Todo/日本語表記:藤堂楚葉矢)

考案――タチバナナツメさん

ビジュアルデザイナー――シャバドゥビタッチヘンシーン!――麻葉紗綾さん

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