13.仇 ~konseki~
父の仇を取る。
それが、娘であるクラリス・リベルテと姉のアイリス・リベルテの誓い。
アイリスをかばって命を散らした父。その父の命を奪った怪物をいつかこの手で――
「…………」
カフェテラスのテーブルで頬杖をついて、クラリスは静かにため息をついた。
時間が昼手前であることもあってか、それなりに店内は賑わっていた。パラソルの下で子供を学校に送り届けた主婦たちが、カフェラテを片手に楽しく談笑している。
澄んだ青空。邪魔にならない程度に飾られた観葉植物たち。木漏れ日が射しこむ穏やかな場所なのだが、それでもクラリスの心は晴れない。
「…………」
クラリスはポケットから小瓶を取り出すと、オーク材の机にコトンと転がしてみせた。
牛乳ビンをそのまま小指の指先程度まで小さくしたようなそれは、本来ビーズなどを入れておくアクセサリー用品である。
だけど中に入っているのは、そんな可愛らしいものではなかった。
カランと石のようなものが揺れる。白く、冷たく、そして固い。
リン酸カルシウムと脂肪で構成された物質。――つまり骨だ。
父の命を奪った仇。その仇の骨。
より正確に言うなれば、これはアイリスが切り落としたイーバ01の腕――そのカケラである。
腕そのものは研究サンプルとして天馬騎士団に回収されている。
「…………」
骨を持ち歩いている事実に苦笑するも、もう6年も続けているのだからどうしようもない。アイリスだってこれと同じものを持っている。
それに――これを失ったら父のことを忘れてしまう気がする。
だからこの骨は憎悪の対象でもあり、過去の確認のためでもあり――大切な思い出でもあった。
父親の痕跡が、父の仇の一部だなんて皮肉ではないか。
それにいくら憎んだところでこの怪物はもういない。イーバ01と名付けられた未知の怪物は、父とアイリスを襲ったあと6年間発見されていないのだ。
「…………」
クラリスは骨の入った小瓶をしまって、大通りを眺める。
とりあえずお腹がすいた。
頼んだサンドイッチとアイスティーはまだだろうか?




