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BLR15「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」  作者: 青佐厘音


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四十六、アラン様の不在とお城からの手紙


 

「気をつけて行ってきて下さいね。アランさ……、アラン」

「ああ。できるだけ早く帰ってくる」


 アラン様……、アランはそう言って僕の頬にキスをして出かけて行ってしまった。

 僕は迎えにきた馬車へ乗って、アランのお屋敷に帰った。……自分の家じゃないのに、帰るというのは変だけれど。


「寂しい」

馬車の中で呟いた。

 昨日はあんなに近くに、アランさ……アランがいたのに。

 そういえば、僕は昨日の夜。勇気を出してアラン様の部屋に行って一緒にいたいとお願いした。

 アラン様は嫌な顔をせずに僕と一緒にいてくれたけれど……。


 何か、したかもしれない。

『俺にあんな事を』ってどんなことをしたの!?

僕は頭を抱えて一人、真っ赤になっていた。



「お帰りなさいませ」

「ただいま帰りました」

お屋敷で働く皆さんに『お帰りなさいませ』と言われて返事をした。


 アラン様は隣国に行ってしまった。やっぱり寂しい。

「ルカ様、喉が乾いてませんか? お茶をお持ちしますね」

「ありがとう御座います」

 ネネさんが、僕が寂しがっているのに気がついて話しかけてくれた。


「アラン様があのコテージに、人を連れて行くのは初めてでしたのよ」

 ネネさんがアラン様の事を教えてくれてた。人を連れて行くのは初めて?

「いつも急に一人で行ってました。きっと何かあって一人になりたいとき、あのコテージに行っていたのでしょう」


 アラン様が……。

「ルカ様と一緒に行かれたのは、よほどルカ様にお気を許していられるかと思います」

「そうかな? そうだと嬉しいな」

 ネネさんはニコニコと笑っている。僕もネネさんに微笑んだ。


「ゆっくりなさって下さいね。ルカ様」

お菓子とお茶をテーブルに置いてくれた。お菓子はアラン様が作ったものかな?


 猫の形のクッキー。僕の大好きなアラン様が作ったお菓子を食べる。

「美味しい……」

 ……やっぱりアラン様と一緒に食べたい。


 ガヤガヤと話し声がして、メイドさんがパタパタと早足で動いている音が聞こえてきた。珍しい。

ゆっくりお菓子とお茶を堪能していたら、なんだか騒がしくなった。

 

「何だろ?」

コクンとお茶を飲んだ。

「ちょっと見てきますね」

 ネネさんが様子を見に行った。 


「ルカ様、失礼します。ニール様がいらっしゃいました。ルカ様に至急、お話があるそうです」

「え?」

ネネさんが戻ってきた。ニールさんが? 今日会う約束はしてなかったよね? 僕に至急のお話?


「……どうぞ」

……まさか、アラン様に何かあったことなんてないよね?

 

「失礼します。お帰りになられたばかりで、申し訳ない」

 いつも髪をキチンとしている、ニールさんの前髪が乱れている。急いでこのお屋敷にきた?

扉を開けて、まっすぐ僕が座っているソファの横に来た。


「ニールさん。アラン様に何か……?」

僕は震えそうになりながら、ニールさんに話しかけた。

「あ、いえ! アラン様は予定通りに。あの方は強いですから、心配ありません」

 ニールさんが、心配ないとはっきり言ってくれたのでホッと安心した。


「では何でしょうか? 僕に話があるとは」

アラン様ではなく、僕に。

「ですよね。単刀直入に言います」

 ニールさんは持ってきたカバンから、大事そうに豪華な封筒を取り出した。


「えっ……? その封筒はまさか」

封蝋されたその封筒には、()()の紋章が押されていた。


「この場で読んで返事を聞いてくるように、と」

クールなニールさんが焦ったように言ったので、冗談ではないとさらに真っ青になった。

 アラン様に、お世話になっているとはいえ僕は何も、地位もないただの平民だ。

 その平民がなぜ、王家から……。


「……」

封筒をあけて手紙を読む。ニールさんは内容を知っているようだ。

「アラン様が不在ですが、お返事はルカ様がなさって下さい」


 内容を簡単に言うと、王様が僕に会って話をしたいからお城に来てくれ……という意味の手紙だった。

 行かないなんて、そんな逆らう事なんて出来ない。これは王命だ。

拝謁(はいえつ)……光栄です。すぐに登城いたします」

 カタカタ……と震えながら、ニールさんに伝えた。


「一緒に行きましょう。ルカ君、持っています」

僕はネネさんの方を見ると、力強く頷いてくれた。王様に拝謁するための支度は、ネネさんにまかせる。

「はい」


 ――正直、怖い。なぜ平民の僕に? 心当たりは全然ない。しいて言えばアラン様とのつながり、英雄騎士のアラン様との関係は、()()と問われること。


 いつかアラン様とはどういう関係か? と聞かれる日が来るだろうと思っていた。

 英雄騎士とただの平民。側にいれば、目立つ。

「ルカ様、こちらへ」

 ネネさんに呼ばれてついていく。


 ニールさんが頷いた。とにかく時間がないので、ネネさんに任せるしかない。

「ルカ様のお洋服や靴などそろえていましたので、お支度は大丈夫ですよ」と、言ってネネさんは僕の支度をしてくれた。


「ああ、いいね! そうやって正装すると、もともと品が良いから似合うよ」

 ニールさんがそう言ってくれたので安心とした。


 急いでニールさんとお城に向かった。


「失礼いたします」

重くて立派で大きな扉を、近衛兵さんが開く。

 お城についてすぐに拝謁するなんて、よほど急ぎの用事なのだろうか?

 アラン様がいないので不安だ。


 ズラリと並んだ臣下の人達と大勢の貴族達。

何が行われるか、皆も知らないらしい。僕とニールさんが中に入ってきたら、ヒソヒソと話しあって見定めをしているようだ。


 そんな中を進んでいく。

玉座に座っている王の前で、ひざまついた。

声をかけられるまで黙っている。


「頭を上げろ。急の呼び出し、驚いただろう」

 王の声は威厳があり、誰もがひれ伏すような迫力があった。頭を下げたまま、隣のニールさんに目線を向けると頷いた。

 僕はニールさんにならい、頭を上げた。


 あっ……!

いけない。声を出すところだった。言葉を飲み込み失礼のないようにする。

 

 玉座に座っている王の隣に、植物園で会ったトラの獣人さんが座ってこちらを見ていた。


 

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