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番外編 ルカの寝相 〜アラン視点〜


 

  〜アラン視点です〜


 ルカに「アラン」と呼ばれたいので、話してみた。いつまでも()付けは、よそよそしい。


  すると、恥ずかしそうにしながら「アラン」と言ってくれた。……破壊力は抜群だった。

 照れた赤い顔を隠すために、枕へ顔を伏せた。


  ルカは近づいて「アラン、どうしたの?」と、話しかけてきた。

 あの声が、たまらなく愛しくてしばらく顔をあげられなかった。


 邪念を祓うため、すぐに明かりを消した。

「ルカ、お休み」

頬にお休みのキスをして離れた。

「お休みなさい」

 暗くしたので、ルカの顔をあまり見られなかったのが残念だった。


 そのうちにルカから、静かな寝息が聞こえてきた。

良かった。眠ってくれた。

 俺は眠れそうにないけど。


 明日は隣国へ行かなければならない。王命だから詳しくは言えなかった。急に『俺でないと解決しない』とまで言われば、行くしかないだろう。

 もっとルカと一緒に過ごしたいのに。

 

「うーん、アラン様……」

「ん?」

 ルカの寝言か? 俺の名を、寝ていても呼んでくれるなんて嬉しい。しかし、様はいらない。早く、()をつけずに呼んで欲しいものだ。

 

 もそもそ……。

いつもと違う場所だから、眠りづらいのだろうか?

 暗さに慣れてきて、ルカの姿が見えてきた。


 ――耳が、出ている。

あのシルエットは、耳だ。今日、たくさん触らせてもらったから形を覚えている。……寝ているときは、出したままなのだろうか。

 その辺をルカに聞いてみたいところだ。


 横向きでこちら側に体をむけてきたので、顔が見えた。綺麗な緑色の瞳は、まぶたが閉じられているため見えない。だが、まつ毛が伏せられていて長いのが分かった。

 幼く見えがちだが、こうやってじっくり見ると整った青年の顔だ。


  年より下に見えたのは、細い体つきと愛らしい顔のせいだ。ルカは自立していて、俺にあまり甘えてこないと思う。

 甘えてきたならば、存分に甘やかしたい。最近は少しずつ、甘えてきてくれているが……。


「……いや、だ!」

「ルカ?」

急に表情がくもり、何かを手足で払うような動作を始めた。

「離し、て! 母様! 家に帰りたい……!」


 家に帰りたい? 

もしや。さらわれたときの夢をみている?

「ルカ」

 声をかけるが聞こえてないようだ。手足をバタバタさせている。


「ルカ、大丈夫だ」

いきなり起こすのはよくない。静かに落ち着いた声で呼びかけた。

「……助け、て」


 ルカは手を伸ばして、俺にしがみついてきた。目が覚めたのか?

「騎士、さま」

 ギュッと寝間着を掴んで、震えている。やはりあの時のことを夢に見ている。


「もう大丈夫だから、ルカ」

首の下に腕を入れて抱きしめ、頭と背中を撫でる。落ち着いてくれればいいが……。

 顔を上下に動かしている。頷いてるのか?

「アランさ、ま」


 震えはとまったようだ。

 

 目は覚めてない。もしかして今までも、このように悪夢をみていたのだろうか。


 少しだけ枕元の明かりを灯して、ルカの顔を見る。

涙の跡があった。

「俺がいるから。守るからな、ルカ」

そう言って頭を撫でる。聞こえてるのかわからないけれど、これは本心だ。


「アラン……様」

落ち着いたか? 表情が和らいだ。眠りは深いみたいだ。


 いつも明るく振る舞っているが、一人のときはどうなのだろう。

ルカの寝顔を見ながら心配になる。


「……好き」

ん? 好きと聞こえたような?

「わっ」

 ルカが俺の胸に顔をスリスリ……としてきた。表情は笑っている。寝てる……よな?


「えっ!?」

フワフワの何かが、腰をサワサワしている?

 しっぽか!? しっぽが俺の腰に絡んできた。それに体をかなり密着させてきた。


「ルカ……。寝相は良いほうだって、言ってなかったか?」

 俺の首に腕をからませて、顔をスリスリ。体を密着させて腰にしっぽをからませて……。


 俺は寝れないだろう。……このルカの密着。起きているのではないか? と疑ったが、どうやら完璧に寝ているらしい。

 嬉しいが、どうせなら起きているときに甘えて欲しいものだ。


「わっ」

今、頬にキスされたのだが。

 寝ているときは皆、無防備になる。だが、ルカのこの寝相はいつもなのだろうか?

 ちょっと引き離さないと。


「ルカ、少し離れてくれ」

胴を掴んで離そうとした。が、ルカの抵抗にあって離せなかった。……仕方がない。このまま眠ろう。


 腕を首に巻き付けたままじゃ、痛くなるだろうだから剥がした。掴まるものがなくなった手は、何かを探すように動いていたので、俺の背中に片手だけまわした。ルカを抱きしめてやると静かになった。


 しっぽは変わらず、俺の腰を撫でていた。くすぐったいが我慢した。

「この部屋に、ドリームキャッチャーが飾ってあるからもう悪夢はみないぞ。安心して眠れ、ルカ」

 ルカから追加で購入して良かった。


 ルカは俺の腕の中で、今度は悪夢を見ずに眠った。



 モゾモゾとルカが動き出した。目が覚めたらしい。

「ルカ、まだ早い。もう少し寝てよう」

「え……? アラン様?」

 まだ寝ぼけまなこのルカが、腕の中で顔を上げて俺を見た。

「様はいらない。アラン、だ」


 様はつけないで呼ぶのに、時間がかかりそうだな。でもそれも愛しい。

「……アラン」

まだこの状況を把握してない。それにしても寝起きも可愛いな、ルカ。


「ルカ」

まだ寝ぼけている間に、オデコにキス。

「……っ!」

 真っ赤になっているルカ。


「昨日はルカから、くっついて来たのだぞ?」

えっ!? と驚くルカ。本当に覚えてないのか?

「寝言も言ってたし、俺にあんな事を……」

「嘘ですよね!? 僕は寝相が良いほうと……!」

真っ赤になって反論するルカ。そうか、覚えてないのか。残念。


 まあ、覚えてないのは残念だけど、俺だけの秘密にしておこう。


「お早う、ルカ」

 

 

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