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BLR15「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」  作者: 厘


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番外編 アラン様の願い 〜アラン視点〜


 

  〜アラン様視点〜


■お屋敷で、ルカの髪の毛の手入れをしているアラン様視点です■


  …………………………


「だんだん毛艶(けづや)が良くなってきたな。ルカ」

夜、ルカがお風呂に入ったあと。

 ルカの髪の毛に、いい香りのするオイルを使って髪の毛を丁寧に手入れしていた。


「ありがとう御座います」

遠慮がちにお礼を言うルカ。そんなに遠慮しなくていいのに、と思う。

 まだルカは俺に対して遠慮、というか壁がある。


 恋愛をしたことがないのか、知らないのか。

もっと甘えて欲しいと思うことがある。


 かと言って、俺が下手に近寄ると逃げてしまいそうで……。まるで猫のようで、躊躇(ちゅうちょ)してしまう。


「綺麗な金髪だったのだな。前髪は短くなってしまったが、後ろの長い髪の毛はこのままなのか?」

 しっぽのようにひと結びになっている、ルカの後ろの髪の毛。

「長い方が、何かと都合がいいので……。このまま伸ばします」


 何かと都合がいい……? ――戦士が首を切られないため、後ろの髪の毛を伸ばして首に巻くと聞いたことがあるが、まさかルカは……。

 

「加護をつけるときに、自分の髪の毛を一本切って使う時があるので長い方がいいんです」

「……」

 そうだよな。ルカは戦士ではないからな。


  手のひらにルカの長い髪の毛を乗せると、柔らかい感触が気持ちいい。

 オイルを少量つけて浸透させるように染み込ませてしていくと、香りが広がっていい匂いだ。

 ルカもこの香りを気に入ってくれているようで、リラックスしているように見える。

 

 髪を梳(と)かしていくと艶が出る。

俺が手入れして、綺麗な髪になっていくのは嬉しい。


しばらく髪の毛の手入れをしていると、気持ちが良いのかルカの獣人の耳が出てくる。

 本人は無意識みたいだけど、気を許してくれているみたいで俺はこの時間が好きだ。


 ……ただ。このルカの耳を触ってみたいのだが、無自覚らしいし、黙っているしかないのがツライ。

 ピクピク動く耳が、可愛い。

鏡越しに見えるルカは目をつぶって、口元がにっこりと口角が上がっていて機嫌がいいところも、いい。


 手を出したいが、我慢だ。本人に許可を取らなければ耳を触ってはいけない。……正直に言うとツライ。


「アラン様?」

ハッ! と気がついて、髪の毛の手入れを続ける。

「痛くないか?」

 ルカに聞いてみると、こちらを振り向いて微笑んだ。

「とても気持ちがいいです」


 気がつくとルカを抱きしめていた。

優しく、包むように気をつけて。

 俺が本気を出して抱きしめると、ケガどころじゃないからな。優しく、そっと……。

「アラン様、好きです」


 前より言葉で伝えてくれることが多くなった。

けれど、その気持ちはどんな気持ちなのだろう。


 ふと不安になる。

昔、助けてくれた憧れの騎士への思いなのか。それとも、父君へ向ける親愛みたいな……? いや、それはキツイ。


 ニールにも言われた。

『なぜそんなに臆病になっているのですか?』


 一応、この年なのでそれなりに経験はある。色々な意味で。結婚相手は難しかったが……。


 ルカ、だから。急ぎはしない。

怖がらせないし、無理はしない。


  そっと、髪の毛にキスを贈る。

 意味は『思慕(しぼ)』

 次に首にキスをする。

「ん」

 ルカの声が漏れる。


  同じ石けんの香りのはずなのに、少し違う香り。

 すりすり……とルカが頭を擦り寄せる。甘えているのか? そうだと嬉しい。

 もう一度、髪の毛にキスをする。逃げるどころか体を近づけてくる。


 ルカの耳が、俺の顔の近くに。ピクピクと動く耳を黙ってみていた。

  

 ――今日はここまで。

「ルカ、お休み」

 片付けてルカの部屋から出ていく。あまり長居をしないようにする。


「お休みなさい……」

 部屋を去るときの、ルカの寂しそうな声と表情を見ると少しは好かれているのかと、安心するのはおかしいのだろうか。


 好き……というより愛しい。

彼の人柄や考え方、容姿もそうだが好ましい。

 前髪が短くなって、綺麗な緑色の瞳が見えるようになった。

 その方がいいのだが、皆にルカを見せたくない。

きっと求婚者が増えるだろう。


「……」

 ルカに求婚してきた奴らを、無傷で対応するのは難しい。

 またニールに笑いを我慢させるのは避けたい。肩が震えるほど笑われるのは屈辱だ。


 戦場とまったく違う俺を見て、ホッとしたというニール。

敵に囲まれていたアイツを手助けしたら、命の恩人と言い慕ってくれたのはいいが、ルカ関係で心配し過ぎだ。


 それにルカは子供の頃、悲惨な出来事があったのに立ち直って頑張ってきた。

 うんと甘やかしてやりたい。


 コックに頼んでバランスの良くて栄養の高い食事を摂り、やっと手首や顔周りがふっくらしてきたので良かった。

 顔色も良くなって、肌艶や髪の艶も輝いてきた。

頬もほんのり赤みがさして健康的になった。


「アラン様」

 声は高くなく、低くもなく聞いていて落ち着く声だ。

「アラン様、どうかなさいましたか?」

「え! あっ」


 どうやらルカの部屋を出てから数歩の所で、立ち止まって考えごとをしてしまったようだ。


「いや、なんでもない」

動揺を顔に出さず、返事をする。

「お仕事、大変ですね。無理はしないで下さいね」

にっこりとルカは俺に笑顔を返した。


 このまま、一緒に朝まで話をしたい……。

 だが、我慢をする。


「ありがとうルカ。お休み」

 ――できればずっとルカと一緒にいたい。

 

 そんなことを思いながら眠りについた。

 

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