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BLR15「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」  作者:


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三十八、耳と背中としっぽ


 

  僕は家の修理が終わるまで、このままアラン様のお屋敷にお世話へなることにした。


「ルカ様が、ホコリまみれ傷だらけ……! なんてこと! それに、前髪が酷いことに! アラン様、どういうことですか!?」

 アラン様と一緒にお屋敷へ帰ると、ネネさんやメイドさん達が僕に駆け寄ってきた。


「すまん。とにかくルカは、先にお風呂へ。ケガの手当をしたい」

「ケガ?」

 ケガなんてしてたかな?


「膝をすりむいているし、あちこちに擦り傷がある。手当をしなければ」

「あ……」

 今頃、あちこちが痛くなってきた。


「すぐにお風呂の用意をいたします!」

パタパタと、せわしなくメイドさん達が準備をし始めた。


「さあ、部屋に行こう」

 アラン様に促されて部屋に向かう。


 兄様がいなくなってしまった、あのあと。

騒ぎを聞きつけたご近所さんが、見回っていた騎士さんに知らせてくれていた。


 連絡を受けたニールさんが駆けつけてくれて、事情を話した。

 僕の実の父親はもう逃げることができず、裁かれることになった。他に余罪があるので、重い裁きが下されることになるだろうと話をしてくれた。


「……いつ言うか、迷っていたのだが」

部屋に着いてソファに座り、お茶を頂いていたときにアラン様から伝えられた。

「ルカの戸籍は、父君と関係がなくなっていた。つまり……、ルカリオンは、()()()()とした手続きがされていた」


 やっぱり……。

「たぶん、そうなのかなと思ってました」

 孤児院に置いて行かれたときに、そんな気がした。

家名に傷がつくのを許せなかったようだった。


 だけど父は母だけは愛していたと、母へ会いに来る父を見て子供心にそう思っていた。

なので、きっと……母を傷つけてしまった罪悪感に耐えられずルカリオン(僕(半獣人)と獣人)に、怒りの矛先を向けたのかなと思った。……憶測だけど。


 だからと言って許されない。


「さ、お風呂を用意できましたので、どうぞ。お二人で入られますか?」

 ネネさんが、お風呂を用意してくれて伝えにきてくれた。え……、二人で?

「ルカ、ケガは大丈夫か? 一人で入れるか?」

 アラン様が少し動揺して、お茶をこぼした。


「あ……。大丈夫、です」

僕もテーブルを拭くのを手伝った。拭きながらドキドキしてしまった。

「そうか。風呂から出たら、ケガの手当をしよう」

 アラン様はテーブルを拭きながら、僕に言った。ネネさんに布を渡しながら、スマンと謝っていた。


「では、お借りしますね」

僕はアラン様のお屋敷の、このお風呂が好きだ。

汚れを流して体を洗っていると、知らぬ間にあちこち傷を負ったのか痛みがあった。


 ザッと洗ってお風呂から出て部屋に戻ると、アラン様がソファに座ったまま手招きした。

「傷を手当しよう」

「……はい。お願いします」

 痛そうで、ちょっと返事が遅れた。


「膝の部分をめくってくれ」

 言われた通りに、寝間着のズボンの裾をめくる。


 テーブルの上には、ガーゼや消毒液などが並べられていた。アラン様はしっかりと手当する気だ。

「アラン様。放って置けば治りますから、大丈夫です」

 お湯できれいに汚れは流したし、すぐ治ると思うし。


「駄目だ。キチンと手当しておかないといけない」

キリリ! と迷いのない目で見られて、これ以上断れない。

「はい……」


 傷に効く薬草をガーゼに塗りつけて、そっと擦りむいていた膝のすり傷に塗る。

「あっ……っ!」

 しみた。痛い。

「痛いだろうが、少し我慢だ。ルカ」

 

 優しく塗ってくれているけど、痛い。

「……ゔ!」

「痛いな。もう少しだ」

 痛みをこらえて涙目になる。痛みは苦手……。


 両膝のすり傷をガーゼで押さえて、他の軽いすり傷を手当した。

「よく我慢したな。あとは……」

 アラン様が他のすり傷に、塗り薬をつけようとしたので慌てて話しかけた。

「あっ! すり傷はもう大丈夫ですから、背中を見てもらっていいですか!」


 背中は兄様に踏みつけられたので、多少アザにはなっているだろうけど薬を塗るほどで無いだろう。

 僕は寝間着の上を脱いで、アラン様に背中を向けた。

「ルカ」


「あっ……」

アラン様の指先が、背中に触れた。

 ピクン! と体が跳ねた。後ろを向いていて見えないので、よけいに意識をしてしまう。

「アラン、様……」

 

アラン様の指が、上から腰までツツッ……と肌を滑った。

「んっ!」

 いけない。変な声が出てしまった。

「これは、兄がやったのか?」

硬く、低い底冷えするような声で囁かれた。

 

「あっ、つ! そう……、です」

 自分が思っているより踏まれた背中は、酷いかもしれない。アラン様の静かな怒りを感じる。

 でも痛みがある場所を避けて、その周りを指先でなぞっている。


「アラン様……。なぞるのは、やめて」

変な声が出てしまう。アラン様はやめてくれない。

「まだ、首にできたアザも治ってないのに。許し難い」

「アザになってますか? あ。っ……ぅん」


 背中に柔らかい感触。アラン様の唇?

「アラン様?」

「……耳としっぽが出てる」

 

 あ! アラン様と一緒にいて安心するのと、痛みで制御できてなかった。

「しっぽを触っても?」

後ろから声をかけられる。耳がピクピクと反応してしまう。

「え、ええっ!? しっぽ、は……。家族や伴侶、恋人同士しか触らせていけないのですが……」


「俺は恋人じゃないのか?」

あ。しまった。

「お互いに『好き』と言った者達は、恋人になると思うが……違うのか? ルカ」

 アラン様は後ろから覆い被さるように、僕を抱きしめる。


「違く、ないです。先だけなら、触ってもいいです、よ……」

「いいのか?」

 はい。と言うとアラン様は僕か離れて、しっぽの先を手のひらにすくい取った。

 

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