12話
「な、適当なことっ」
「ああ、俺の勘違いだったか?それは失礼。つまり君は金を使ってまで美夜から男を遠ざけて自信を無くさせ、表では暴言を吐いて撤退的に傷付けるくらい彼女のことを嫌っていたのか?そこまで嫌ってる相手と婚約しようとするとは、やはり俺には理解出来ないな」
白々しく言い放ったカイに和樹は何か言い返そうと、口を金魚のようにパクパクとさせている。
カイはわざと和樹を徹底的に煽り、追い詰め逃げ道を塞いでいった。
和樹はどうするのか。反論するのか、した場合カイの言い分が当たってると認めることになる。が、プライドの高い彼が素直に認めるとも思えない。ギリギリと唇を噛み、じっと考え込む様は彼の葛藤が表れている。
結局、彼が選んだのは。
「…き、嫌いなんかじゃない、寧ろ逆だ…」
逆、つまり美夜が好きだったと。長年美夜を傷つけ続けたのは好意故だったと、認めたのだ。
幼馴染の本心を聞いた美夜は。
(…気持ち悪い)
嫌悪感しか生まれてこない。心を動かされることも当然あり得ない。美夜の心も身体もカイに捧げてしまった。和樹の気持ちに答えることは未来永劫、ないのだ。
汚物を見るような目を美夜から向けられてることに気づいた和樹は、それでも「美夜!」と縋るように名を呼ぶ。
もう怖くはない、ただ気持ち悪いだけ。
「は、話を聞いて」
「和樹くん」
言葉を遮った美夜の背筋も凍るような冷たい声に和樹は固まった。そしてみるみる表情が絶望に染まっていく。
「…私あなたのこと、大っ嫌い。顔も見たくない。もう話しかけないで」
そう吐き捨てるとキャリーを引いてその場から去って行く。
「…好きならそれを行動で示せば良かったんだ。そうしたら美夜と君の関係も変わっていたかも知れないのに、君は間違えた。もう取り返しがつかないな」
「…」
「君が散々傷つけた美夜は俺が幸せにする…せいぜい後悔に苛まれ続けろ」
カイも虚ろな目の和樹を置き去りに、美夜の後を追いかけた。




