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独裁者同士の会談

作者: 雉白書屋

 二つの核保有国の独裁者による会談が決定し、世界中に緊張が走った。

 国際的に孤立する両国。その狙いは、この会談で平和条約を締結し、敵対する陣営に対して結束を誇示することにあるのだろう。

 プライベートジェットで到着したピグ大統領を、チョウ国家主席が笑顔で出迎えた。二人は穏やかに握手を交わし、写真撮影のフラッシュが絶え間なく焚かれた。

 その後、二人は別々の車で移動し、首都で盛大な歓迎セレモニーに臨んだ。セレモニーを終えると官邸へ移動し、互いに贈り物を交換してから昼食を共にした。

 ここまではすべて予定通りだったが、両者の間には終始、微妙な警戒心が漂っていた。しかし、食後に二人きりで出かけたドライブを境に、その雰囲気は一変した。

 車を降りた二人は、互いの肩を叩き合いながら大笑いしていた。そして突如、予定にないサウナルームへ直行。裸になった二人はそのまま外に出て芝生の上で相撲を取り、追いかけっこまで始めたのだ。

 さすがに見かねた両陣営の側近たちが止めようとしたが、二人はまったく聞く耳を持たなかった。側近たちは従うしかなかった。無理にでも止めれば、相手側に統率力の欠如を示すことになりかねない。まさに裸の王様だ。

 その後、二人は裸のままキッチンでお菓子作りを始め、生クリームをお互いの体に塗り合ってはしゃぎ、シアタールームへ移動。一本のドリンクに二本のストローを差し、一緒に飲んで目が合うたびに照れ笑いを浮かべた。バケツいっぱいのアイスを食べながらポルノ映画を鑑賞し、女の子たちを招いて、あらあらまあまあ、『英雄色を好む』を見事に体現した。その後、予定時間を大幅に超えたものの、最終的には平和条約が無事に締結され、会談は終了した。

 別れ際、二人は熱い抱擁とキスを交わしたが、周囲の人々はもはや驚く様子もなかった。

 チョウ国家主席は、ピグ大統領を乗せた飛行機が見えなくなるまで手を振り続けたのだった。


 会談の緊張から解放された機内で、側近がピグ大統領に訊ねた。


「世界に向けて仲の良さをアピールできたのはいいですが、いったいどうしてあそこまで信頼し合えたのですか? 二人でドライブに出かけたあとから急に打ち解けましたよね? 何がきっかけで……」


 ピグ大統領は満面の笑みで答えた。


「ああ、車の中で話したんだけどさ、なんと向こうも影武者だったんだよ! いやー、それで意気投合しちゃってさ! はははははは!」

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