言ってる意味、分かるね?
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
喚かないのが~。の二人。
お家デート導入回。母行ってらっしゃい。
現在、午前九時少し前、ただいま我が家は非常に混沌としていた。母と弟は出掛ける準備に気を取られていたし、私も『恋人になった』彼が来るので非常に緊張していた。
「ほら、出掛けるよ。準備出来たか?」
「兄ちゃんもうすぐ来るかな? 来るなら会いたい」
母は私を一瞥する。その瞳に憐憫の色が含まれているのを感じ取り、私は小刻みに頷く。
思っているのは『君、迷惑じゃないかい? さっさと二人きりになりたいだろう?』と言ったところだろうか。常に冷徹で、無情に思えるかも知われるかも知れないが、決して気遣いの出来ない人では無い。
「もうすぐ来るよ」
そう言ってから数分後だった。部屋にインターホンの高音が響き渡る。誰が来たのか明白で、私が真っ先に出る予定だった。そう、予定であった。
弟の顔が輝くと私を差し置いて玄関に向かって全力疾走する。躊躇いもなく玄関のドアを開け放つと、その勢いのままに叫ぶ。
「久しぶり!! 兄ちゃん」
「ああ。久しぶり。これ、土産。悪いな、お前の姉ちゃん借りるわ」
彼は膝を折り、視線を合わせた状態で何かを渡している。恐らくお菓子でなろう。
「全く。子供は元気だね」
何時の間にか母が私の隣に立って、溜息混じりに呟いた。もう準備は出来ている様で、跡は靴を履くだけの状態。だからもう、弟を連れて出て行ってもおかしくはないのだが。
「五時以降に帰る予定だよ。昼は棚を漁るなり、作るなり、金を置いておくから二人で食べに行くなり好きにしたら良い。じゃあ、邪魔者は居なくなるよ」
「有難う」
お菓子を渡終わった彼は私を見つけると、僅かに口角を上げて微笑んだ。足早に彼に近付くと、彼の柔らかな微笑み安堵を届けてくれる。
「じゃあ、私達は五時以降に帰るから。君はそれまで好きにしたら良いよ」
「有難う御座います」
「まぁ、戦利品も得られたら君にやるよ。言ってる意味、分かるね」
母はそんな意味深な事を言って、彼の返事を待つことなく颯爽と去っていた。弟の手を引いて、振り返ることの無いその背中は、強い女のそれで、語り掛けられていないのに、そんな気分になる。
「じゃあ、お邪魔します」
「ど……どうぞ……」
今日は絶対怖気付かないぞ!! 女は度胸だ!!
『五時以降に帰るから』これが入れたかった台詞。
裏を返せば『五時前には帰らないから、それまで娘の事好きにしたら良いよ』という意味です。
本当にまんまの『邪魔者は居なくなるよ』という意味。
不器用な母なりの気遣いです。
んでもってタイトル『言ってる意味、分かるね』。
これちょっと前に巻き戻って『戦利品得られたら、君にやるよ』ここの強調文。
母は五時以降に帰る予定。けれども戦利品を渡すには五時以降も彼は家に居ないと駄目。
つまり『五時以降に帰宅するけれど、お前は私達が帰るまで家にいろよ?』という意味です。
多分、牽制とまんま『戦利品渡す』の意味です。
『娘の身に傷付いたらお前許さんからな』という意味かと。
あとクレーンゲーム得意なんで、『お前にやるよ』をやりたいのかと。
でも物が増えるから、食べてなくなりそうなものを積極的に狙いそう。