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均衡の守護者たち

アレンが城門の向こうに消えてから数日が経った。リアム・ヴァルディアは自室に籠もり、夜の帳が下りるまで何度も同じ問いを自分に投げかけていた。


「俺は……本当に正しい選択をしたのだろうか……?」


 均衡を守るためにアレンを追放した。仲間を守るための最善の選択だと信じていた。だが、日が経つにつれ、その決断に対する自信は揺らいでいった。彼の心には、アレンの最後の視線が焼き付いている。あの、覚悟を持った眼差し――。


 リアムは机に肘をつき、顔を手で覆った。「これで本当に良かったのか……」


 その時、部屋の扉がノックされた。リアムが顔を上げると、扉の向こうからマリアの声が聞こえた。


「リアム、入ってもいい?」


「……ああ、どうぞ。」


 マリアがゆっくりと扉を開けて入ってきた。彼女はリアムの顔をじっと見つめた後、小さなため息をついた。


「リアム、まだ考え込んでいるの?」


 リアムは苦笑いを浮かべた。「ああ、少しな。お前が正しいと言ってくれたとしても、俺は自分の決断を納得しきれない。」


 マリアはリアムの隣に座り、優しい声で話しかけた。「リアム、君はリーダーとして最善を尽くした。私たちは皆、その決断を理解している。だけど……君がその決断に納得していないのなら、それを受け入れるのもリーダーの責任だわ。」


 リアムは深く息を吐き、しばらくの間黙り込んだ。「俺は……俺はアレンを守るためにも、追放が最善だと思った。だが、今になって思うんだ。もしかして、別の方法があったんじゃないかって……」


 マリアは静かに頷いた。「私もそう思う。だけど、私たちは過去に戻ることはできない。今、私たちにできることは、これからどうするかを考えることだけ。」


 リアムはその言葉に耳を傾けながら、ふと窓の外を見る。遠くの山々に霧がかかり、まるで何か不吉な兆しのように感じられた。


アレンが追放されてから一週間が過ぎた。リアムは仲間たちと共に、次なる任務の準備を進めていた。彼らには、均衡を守るためにすべきことが山積みだった。


 リアムは、部屋の中央に広げた地図を見下ろし、険しい表情を浮かべていた。地図には、「ノクスの森」という場所が赤いインクで囲まれている。ノクスの森は近頃、異常な現象が頻発しているという噂が立っていた。夜ごとに奇怪な光が森の中で点滅し、行方不明者も出ているという。


「このノクスの森、最近奇妙なことが起こっているようだ」リアムは、周りに集まる仲間たちに向かって言った。


「確かに、ノクスの森に関連する依頼も増えてるわ」マリアが頷く。「夜になると、森の中から奇妙な光が見えるって話を何度か耳にしたわ。」


 ガレスは腕を組み、考え込むように言った。「そうだな、でもそれだけじゃねぇ、森の中で行方不明になった人たちもいるらしい。何かが起こっていることは間違いない。」


 リアムは地図を指でなぞりながら続けた。「この森を調査する必要がある。何が起きているのかを確かめて、必要なら対処しなければならない。均衡が乱れている兆候があるのなら、俺たちの仕事だ。」


 マリアが頷いて答える。「そうね。私たちで調査して、森で何が起こっているのか確認しましょう。」


リアムたちは翌朝、ノクスの森に向けて出発した。森へ続く道は険しく、薄暗い雲が空を覆い、不気味な静寂が漂っていた。リアムは仲間たちに注意を呼びかけながら、慎重に進むよう指示を出した。


「気を引き締めろ。森には何が潜んでいるか分からない。」


 彼らが森の中に入ると、木々が鬱蒼と茂り、日差しは完全に遮られていた。森の中には奇妙な冷気が漂い、風が葉を擦り抜ける音がどこか不自然だった。


「何かがおかしいわ……この冷たさ……普通じゃない」マリアがつぶやく。


 リアムは周囲を警戒しながら、森の奥に進む。「確かに……この感じ、何かがいる……」


 しばらく進むと、突然、リアムの足元に何かが光った。彼は足を止め、地面を見つめる。そこには、不思議な青白い光を放つ石が転がっていた。


「これは……何だ?」リアムがしゃがみ込み、石を手に取る。


「魔法石……かしら?」マリアがそっと近づいてきた。「でも、こんなにたくさんあるのは珍しいわ。」


 リアムはその石をしばらく眺めてから、仲間たちに向き直った。「何かの手がかりかもしれない。森の中でこれがどうしてこんなにあるのか……調べてみる必要があるな。」


リアムたちは青白い光を放つ石を手がかりに、森のさらに奥へと進んでいった。道が険しくなるにつれ、冷気がますます強まっていく。やがて、彼らは森の中央にたどり着き、そこには古びたほこらがあった。


「これは……ただの祠じゃない。何かが封じられているかもしれない」リアムが祠を見つめながら言った。


 彼は慎重に祠に近づき、周囲を調べ始める。すると、祠の壁には古代の文字が刻まれているのを見つけた。


「これは……『封印』という文字だ……。この祠に何かが封じられているということか……?」


 ガレスがリアムの肩越しに文字を見つめて言った。「まさか、これが森の異常の原因か? 封印が解かれかけているのかもしれない。」


 リアムは祠の周りをさらに調べ、魔力を感じ取ろうと集中する。その瞬間、祠の奥から低いうなり声のような音が響き、地面が微かに震えた。


「気をつけろ……何かが目覚めつつあるようだ……」リアムが警戒を呼びかけた。


 その時、祠の扉がひとりでに開き、内部から冷たい風が吹き出した。リアムは剣を抜き、仲間たちに身構えるよう指示する。


「ここで何かを解放するわけにはいかない。準備をしろ、何が出てきてもすぐに対応できるように!」

反響あれば続きかきます

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