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3-3話

 石室と推定された埋蔵物は徐々にその姿を現し、発掘スタッフだけでなく近隣住民をも驚かせた。それはとても古墳の石室には見えなかった。


 とはいえ、誰も発掘を中止しようとは言わなかった。巨岩には明らかに人の手が加えられていたし、地層の状況から奈良時代以前からそこにあったものだとわかるからだ。その姿が少しずつ現れるたびに研究者たちは驚き、期待を膨らませた。


 それは40日ほどで掘り出された。全長95メートル、幅45メートル、高さは20メートルほどで、直径45メートルの円盤と底辺が50メートルの台形状の箱とを接続したような形状をしていた。薄い灰色の表面には規則的に小さな凸凹があるが滑らかで、亀裂や接続部分などは見られず、一気に焼き上げられた陶器のようだ。


「台風が逸れてくれて良かったよ。直撃を受けたら、掘りなおさなければならなくなるところだった」


 お気に入りの岡に立った四条教授が、台風の進路が変わって発掘現場が無事だったことを喜んだ。拭き戻しの風が強く、彼の白い髪をかき乱した。


「時間も予算もありませんからなぁ。……しかし、これは石室ではありませんなぁ」


 渡辺教授が言うのを、彼は嫌わなかった。彼も当初の意見を変えているようだ。


「すると何なのでしょう?」


 誰もが同じ疑問を持ち、首をひねった。


「まるでアンドロメダ号だ」


 渡辺教授が巨岩を見降ろして感嘆する。大きくふくれた腹をゆっくりとさすった。発掘に参加した作業員は陰で、妊婦さんと彼を揶揄していた。


「アンドロメダ?」


 四条教授が怪しむように目を細める。


「昔、アメリカの映画であったでしょう。円盤の様な宇宙船で星々を旅する話ですよ。あの宇宙船がアンドロメダ号でした」


「ああ、そんな名前だったかな」


 四条教授が思い出したようにうなずいた。


「居住空間の本体は円形で、台形の機械室が後部に突き出ていた。デザインがこの岩に似ていましたよ。映画の宇宙船は、これに比べれば遥かに大きかったでしょうが……」


「しかしこれは、前方後円墳そのものだ。アンドロメダとは、前後は逆だが……」


「確かに、そう言ったほうがあっていますね。しかし、自然石から削り出したものではなさそうです。スコップやツルハシでは傷もつかない」


 発掘作業中、その材質に関する調査も試みた。サンプルが削り出せないために、科学的な分析は先送りにされている。


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