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27-3話

「住吉君、ひとつ教えてほしい……」影村が尋ねた。「……あれの出入り口はどこにある?」


 比呂彦がパソコンを閉じ、リュックに入れた。


「出入り口というものはありません。認められた者なら、どこからでも自由に出入りできます」


「君なら自由に出入りできるということかな?」


「ハイ、今のところ、拒まれていないはずです」


 姫香は、彼の言い回しの中に天鳥船の複雑さ、あるいは、彼とジングウとの微妙な関係を直感した。


「私たちも自由に出入りできるようにならない?」


 宗像博士が頼んだが、彼は首を横に振った。自由に出入りできるようにするためには中で認証を受けなければならないが、そこの放射線に生身の人間は耐えられないだろうということだった。


 それで彼が中に入ろうとしないことに、姫香は納得した。


「ジングウはあれを出て、何をしようとしている? そもそも、どうしてあそこにいた?」


 影村が尋ねた。


「彼女の正式な名はオキナガタラシ。古代文明の遺産です。基本的には、あの船をメンテナンスするために作られた人形ですが、戦闘能力にも優れています。船を守るためなら何でもするでしょう。戦略、戦術……、彼女より優れたものを見たことがありません」


「オキナガタラシ!……あれが神功皇后だと言うのか?」


 渡辺教授が目を見開いた。驚いたのは姫香も同じだった。


「僕は何度もそう言ってきました。皆さんがどのように考えようと自由です。真実と理想や期待は同じではありませんから。しかし、僕の知っている彼女は、オキナガタラシです」


「そのオキナガタラシだが……」影村が言った。「……止める方法を教えてくれ。人形なら止められるのだろう?」


 比呂彦が首をわずかに傾けた。


「彼女は独立した存在です。意識を操作して止めることはできません。どうしても止めたいなら破壊することです」


「破壊……」


 今度は影村が首を傾げた。その躊躇ためらいはジングウとそのテクノロジーを手に入れたいからだろう。欲が邪魔をしているのだ。


「銃でも爆弾でも、武器をもってすれば簡単なことです。好きな方法を選べばいい。あの船も同じです……」


 彼が窓の外に目を向けた。足場の上を自衛隊員が行き来している。


「あれはすでに致命的なダメージを受けています。もう飛ぶことはありません。解体すべきなのです。軽い気持ちで利用したら大きな害をこうむるでしょう」


 その発言はとても生意気なものに聞こえて、彼を囲む大人たちを不機嫌にさせた。


「解体などもってのほかだ。我々は必ずATFの技術を解明する。それが日本経済の未来を拓くことになる」


 井島博士が拳を握った。


「また経済ですか……」彼がため息をついた。「……そんな考えで進むと後戻りが効かなくなると思いませんか?」


「核エンジンだよ。それが使えれば、世界のエネルギー問題は解決する。宇宙へも行けるだろう。人類が新しい翼を手に入れることができるのだ」


「イカロスの翼かもしれませんよ」


「学生さん、言葉遊びは止めてくれ。我々は日本の未来のために真剣なのだ。君と違って責任がある」


「井島博士、今は議論を止めてください。彼にはやってもらいたいことがあるのです」


 その場の視線が影村と比呂彦に分かれた。


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