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24-3話

「グェ……」野田3尉の喉が鳴る。


 反動をつけて身体を右へひねった。


 ――ゴギ――


 頸椎けいついが折れる鈍い音がした。


 倒れかかる彼の身体を蹴り、バク転する。彼の身体は前方に倒れ、逆立ち状態のオキナガタラシは、後続の福島曹長に狙いを定めた。


 彼は自動小銃を構えて射撃の体勢に入ろうとしていた。


「撃つな! 相撃ちになる」


 背後から土佐堀3佐の声がした。その言葉が終わるより早く、オキナガタラシは飛んでいた。


 その身体能力は尋常でなかった。天井ギリギリの高さで福島曹長の頭上を飛び越えると、カマキリが獲物を狩るように首へ足をからめ、落ちる勢いを使って後ろに引き倒す。野田3尉の分まで荷物を背負っていた彼を後ろに倒すのは簡単だった。


 荷物を背に仰向けになった彼は亀のようだ。その亀が起きようと、あたふたもがいている。その手から自動小銃を奪うのは赤子の手をひねるようだった。


 意外と重いものだな。感じながら、一瞬でその構造を理解した。トリガーのあるそれは、古代の石弓と同じだった。


 目の隅にコマンドナイフを手にして迫ってくる土佐堀3佐が映る。


 彼に銃口を向けてトリガーを引いた。


 ――タタタタタ――


 軽快な音の連打が通路に木霊す。


「最高だ」


 オキナガタラシは久しぶりに快感を覚えた。戦いが与えてくれる喜びだ。


 土佐堀3佐のヘッドライトが床を照らし、主人の肉体を引きずるようにして崩れ落ちていく。


 足元で人が動く気配がする。転がっている福島曹長が腰の拳銃をぬいていた。


 それも武器に違いない。……頭脳が判断すると、迷いなく彼の顔に銃口を向けてトリガーを引いた。透明のシールドに穴が開き、内側から赤く染まった。


『どうした? 何があった?』


 ヘルメットの内側から高島1佐の声がした。


 オキナガタラシは、野田3尉の戦闘服を脱がして身に着けた。他の2人のものは血で濡れていたからだ。


 奪った戦闘服はオキナガタラシが2人はいれるほど大きかった。ベルトをきつく締め、袖口と足首は、アンダーシャツを切り裂いて紐を作り、それで縛った。重いヘルメットには目もくれない。ただ、無線機だけは取った。


「ほう、意外に面白いものを持っているではないか」


 改めて3人の荷物を確認し、自動小銃、拳銃、予備の弾倉と弾丸、コマンドナイフ……。使えそうな装備を背嚢に詰めた。福島曹長のポケットからはあのタブレットとスマホを取った。


『全班に命じる。緊急事態だ。土佐堀班が襲われた。敵はジングウと名乗る女。自動小銃を奪ったと思われる。発見次第拘束しろ。必要とあれば射殺しても構わん』


 荷物を選びながら彼の声を聞いた。戦争が始まると思うとワクワクする。


「私に勝てると思うな」


 そう宣言してその場を離れた。


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