表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/123

17話 此花姫香 ――悪い知らせ――

 姫香は桜井駅に近いファミレスで比呂彦と向き合っていた。電車の中で汗はひいてしまったので、目的は食事だ。そして彼の秘密を探ること。


 姫香はカルボナーラとアイスティーを頼んだ。彼はオムライスとミルク。


「住吉君、卵料理が好きなの?」


「どうして?」


「オムライスやオムレツ、天津飯を頼んでいることが多くない?」


「あー、そうかもしれませんね。たぶん、好きなのだと思います」


「彼が真顔で応じた。まるで他人事だ。


 ――キンコン――


 鳴ったのは彼のスマホだった。一瞬、ディスプレーが目に入った。メッセージのようだ。


 彼はそれを一瞥して表情を暗くした。


「どうかしたの?」


「いえ……」


 彼はそっとスマホを置いた。ディスプレーを伏せるようにして。


「もしかしたら、昨夜会っていたお年寄りから?」


「見ていたのですね」


「偶然、通りかかったのよ」


「そうですか。でも、彼からではありません」


「悪い知らせ?」


 彼の表情からは、それしか想像しようがなかった。


「ええ、まあ」


 そう応じながら、彼はスプーンを口に運んだ。


「あの人って、住吉君のおじいさん?」


「いいえ。そんな風に見えましたか?」


「見た目の年齢がそんな感じかなぁ、って」


「なるほど。そんな風にみえるのですね。でも違います」


 両親がいないことはすでに聞いていた。家族のいない彼に悪い知らせがあるとしたら、友人か、居候をしている宗像家のことに違いない。


「東京に帰らなければならないの? 私ならひとりでも大丈夫よ」


 気を利かせたつもりで言った。


「食事が済んだら、僕は発掘現場に戻ります。先輩は先に帰ってください。ここを離れた方がいい」


 悪い知らせというのは、天鳥船に関することなのだろう。


「あそこで何かがあったのね。ここを離れた方がいいというのは、どういうこと? 私にできることはない?」


 彼を守りたい、と思った。が、彼はこちらの気持ちを知ってか、知らずか、返事さえしない。ただ、黙々と食事を続けている。


 何も教えないつもりらしい。そうわかると、気持ちは反発した。絶対帰るものか!……淡々と食事をとる彼の顔を睨むように見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ