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5-2話

 非破壊検査が終了した翌日のことだった。吉本たちがいつものように自家用車に分乗して発掘現場に到着すると、駐車場に黒塗りのセダンが2台停まっていた。それに乗ってきたのだろう、本部テントの前にスーツ姿の男たちが並んでいる。


「何事かな?」


 怪訝けげんそうにつぶやく四条教授を先頭に近づくと、待機していたスーツ姿の一団から40代と思しき強面の男性が歩み出た。


「国家安全保障局の者です」


 彼が身分証を提示した。国家安全保障局参事、影村かげむら辰夫たつおとあった。


「国家安全保障局?」


 四条教授は目を細め、その視線を渡辺教授に向けた。


「国家安全保障局というとNSCというやつですな?」


 渡辺教授が前に出た。


「ご存じとはありがたい」


 影村の顔に薄い笑みが浮く。


「我々は考古学者と歴史学者です。国家安全保障など、私どもには縁の薄いものだと思うが、どういうことでしょう?」


「この物体が放射能を帯びているからです。政府の管理下に置くことに決まりました。そういうことでご理解いただけますか?」


 影村が背後の天鳥船を見上げてから、一枚の書類を取り出して渡辺に提示した。天鳥船を原子力施設に認定し、政府の管理下に置く、という命令書だった。


「ばかな。貴重な古代遺産だぞ」


 四条教授が声を上げた。


 調査の準備を始めていた作業員たちが手を止め、スーツ姿の男たちに注目した。


「もちろん、調査そのものを妨げるものではありませんが、調査並びに管理手法は私どもに報告いただきます。手法に問題がある場合は是正を指示しますので、それに従っていただきます」


 その言葉が終わらないうちに、どこに待機していたものか、自衛隊のトラックが駐車場にやって来た。荷台から迷彩色の戦闘服姿の隊員が降りた。よく見れば武装している。それには、ぼんやり話を聞いていた吉本も緊張した。


「陸上自衛隊の特殊部隊です……」影村が自衛隊員をあごで指す。「……万が一の事があると困りますので、私の方で出動を要請しました」


「万が一、とはどういうことだね?」


 四条教授がみつくように尋ねた。


「テロ、若しくは事故です」


 影村が事務的に言った。


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