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零章 始動
奈良県桜井市十二柱神社の境内、ふたつの影が岡を見つめていた。
「とうとうあれが発見された」
「発見されるのは時間の問題でした」
「うむ。我々も覚悟を決めなければなるまい。間違いなくオキナガタラシは目覚める。我々も準備にかかろう。まあ、いま発見されたのは天恵かもしれない。私に残された時間は少ない。早く方をつけたいものだ」
「オキナガタラシがどのような心を持って目覚めるか……」
「現実を受け入れてくれると良いが。……幸運を祈ろう」
2人の影は闇に溶けて消えた。
――大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない―― アルベルト・アインシュタイン