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魅惑のピンクちゃん



・・・「お・・・ま」


・・・・・・・「おじょ・・さま」


・・・・・・・・「お嬢様!」



パッと目を開けると視界は明るくてベッドの側には侍女のカナンが立っている。


「ん〜・・・・お〜は〜」

寝起きで頭も口も回らない。

ゆっくりと起き上がると、すかさずカナンの手が背中を支えてくれる。

ありがたいね。ひとりで起きれなくてごめんよ。

「お嬢様。朝の挨拶のやり直しをしましょう」

やれやれ。通じてるからいいじゃないかと思わなくもないけど、こういうのは習慣づけないとだもんね。分かってるんだよ、ほんとはさ。

「カナン。おはよう。起こしてくれてありがとう」

「はい。おはようございます。お嬢様、今日は良い天気ですよ」

微笑むカナンの視線の先にはレースのカーテン越しに温かな光が溢れている。

「これなら太陽のおかげで昨日泥濘んだ場所も乾きそうだね」

「ほんとに。あと洗濯物がカラッと乾きそうです」

天気がいい日に干すと洗剤の爽やかな香りが漂って気持ちいいもんなぁ。

「さてと、準備お願い」

「はい。畏まりました」



朝の支度を済ませて食堂に向かう。

「ねぇ、お父様たちは帰ってきてる?」

見上げた先のカナンの表情で察した。

そっか。やっぱりな。

あのひとたち帰ってないか。

ま、いつもの事だし。

「仕事忙しいんだね」

「・・・・お嬢様」

まるで『おいたわしや・・・』と続きそうなテンション感だね。

あれ?カナンもしや悲しんでる??

全く問題ないし、平気なんだけどなぁ。

だって私の中身は大人よ。ホンマモンの寂しいとか感情はないね。

正直にいうと、仕事に精を出してこそ男が輝くってもんです。

働かないとほんとに背骨抜いたみたいな人間になる気がする。だから頑張って領民の暮らしが良くなるように我武者羅に働いてくれてるっていうのが誇らしい。


父は明るくて社交的で、商談とかも多いし貿易業も行ってるから海外にもよく行ってる。

父と私の共通点は髪の色で、父もプラチナブロンド。天パっていうほどではないけど緩いウェーブがかっている。瞳は琥珀の様でとても綺麗。

顔を合わせるのは月イチくらいかな?

まぁ、帰って来るたびにお土産たくさん用意してくれてるし、父なりに愛してくれてると思っている。ただ女の子相手のプレゼント選びはセンスが無い、皆無。お土産に希少な動物の角を渡された時は反応に困ったな。大人の私でもだから、心も子供だったら大泣きしてたね。前世を思い出してて良かったよ。



母はほんとに穏やかで、THE貴族の奥様って感じ。楚々としてて心は常に一定のラインを保ってて感情的になったとこは見たことがない。でもしたたかでもある。

THE貴族っていうのはそういうこと。

結構お腹の中が真っ黒。真っ黒けっけよ。

ほんとに純粋だと貴族ではやってくのキツイと思うし良いんじゃん?って思ってる。

瞳の色は母から譲り受けた。

髪はアッシュグレーで個人的にめちゃくちゃ好きな色合い。前世でもアッシュ系の色に染めてたから勝手に親近感わいてる。

母は母で社交という女の闘いに日々忙しくしている。

あとは私が開発してるものの広告塔になってくれてるから感謝である。うん。

母とは週イチくらいでは会えるし別に問題ない。次会った時には新作の下着とスキンケア製品をプレゼンしたいわ。



・・・・・

「ご馳走でした。今日も美味しかったわ」

口をナフキンで軽く拭いて、食事終了の合図よ。

「ねぇ、ジェフリーとステファンは風邪ひいたりしてない?大丈夫?」

「ふたりとも体調は問題ありません。今日も元気に働いてます」

「そっかそっか。なら良かった」

あれ???わたしなんか忘れてる?なんだっけ?

首を傾げたらカナンも鏡合わせしたみたいに同じ行動をした。

やだっ!カナン可愛いっ!!



「お〜いっ!!!待ってくれ〜!!!」



突如外から聞こえてきた大きな声に、窓を見る。

庭ではピンクの小竜がそんなに大きくない羽をパタパタ動かしながら地上1m辺りを低空飛行していて、その後をジェフリーが見事なガニ股で追いかけていた。


「あ〜!!!昨日の小竜ちゃんだっ!すっかり忘れてた。元気になったんだね」

「あらあら。追いかけっこでしょうか。楽しそうですね」

「絶妙に追いつけそうで追いつけない距離をキープしてるよね。ジェフリー弄ばれてるなぁ」

「そうですね。駆け引き上手な子かもしれません」

「ほう。そりゃ魔性だね」

ここで眺めていてもつまらないから、勢いよく椅子を下りた。

「カナン。魅惑のピンクちゃんに会いに行こう」

「お嬢様っ。それよりも椅子はもっと優雅に下りて下さいませ」

「は〜い。すんませ〜ん」

「お嬢様っ!!!」


カナンのお小言を聞きながら玄関に向かい、庭に出た。





庭では未だにクルクルと小竜とジェフリーがラウンドをしている。

その近くではステファンが庭の手入れをしていた。

「あっ、お嬢〜。おはざす」

「ステファンおはよう。体調は大丈夫そうだね」

「大丈夫っすよ。馬鹿は風引かないって言うじゃないですか」

ステファン、それはね、馬鹿は風邪引いたことにすら気づかないという皮肉だよ。だから引く時は引くんだよ

「それでも、これから数日間は栄養つくものを積極的に摂んなさいね」

「うい〜す」

ステファンは今日は庭師の仕事をするらしい。邪魔はしないようにしようっと。



「お嬢様っ!!!」



「ぐふっ!!!」

カナンの声が聞こえたと同時に腹部に強い衝撃を受けまま後ろに吹っ飛んだ。

なんだっこれ?!!

砲弾かっ?!

事故とかに合うとほんとにスローモーションに感じる。

背中から地面に当たってゴロゴロとそのまま後ろに何回転かした。

やべぇ、やべぇよ。

朝食でちゃう、リバースしちゃう。

なんとか深呼吸をして内臓を落ち着かせるわよっ!!

頑張れわたし〜!!


「キュウ〜」


お腹に抱えたピンクの砲弾がさっきから鳴いてる。

けどこっちはそれどころじゃないの。

だって吐きそうなんだもん。

あたしゃ、ボロボロだぞ。


「お嬢様!!大丈夫ですかっ!?」

カナン、大丈夫じゃなさそうな人に大丈夫かって聞かないで。

大丈夫しか言えなくなっちゃうの、強がりでごめんね。

「お嬢、顔真っ青っすよ。エチケット袋持ってきますね」

ステファンっ、ありがとう!!!!

でも歩いてないでダッシュで行ってきて!お願いっ。

「お嬢様〜っ。すんげぇ草と土まみれだなっ。受身上手いんだな」

ちょっと、ジェフリー感心してる場合かよ。

今は吐きそうで口を開けない。

ぐっと歯を噛み締めてなんとか耐えてるからっ。



「キュウ?」



その後にステファンが持ってきてくれたミント水を飲んだら落ち着いて、リバースすることなく済んだ。

魅惑のピンクちゃんは、ずっと私のお腹から離れなかった。

まじで堪えられて良かった。

やれやれ。






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