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曇らせたがりな君の噂

 出雲と別れ、教室に入った俺にケンジが話しかけてきた。ニヤニヤとした笑みを浮かべているのを見るに、朝一緒に登校していたところを見られていたようだ。


 内容もまた、予想通り出雲のことだった。


 「例の後輩ちゃん、それなりに有名人らしいぞ?」

 「え、そうなのか?」


 ケンジは続ける。


 「単純に可愛いからな。まぁだから有名人というよりは、()()って言う方が正しいかもな」

 「なるほどねぇ」


 確かに、ケンジの言うことはもっともだろう。


 出雲がモテていると言われて、まぁそうだろうなという感想だ。特にあの明るい性格は、誰に対しても受けが良いだろうし。


 でも結構癖が強いから、誰とでも相性が良いわけではないのだろうけども。


 「特に人気なのは、ギャップらしいぞ?」

 「ギャップ?あー、まぁ確かにギャップは凄いかもだけど」


 ギャップといえば確かにそうか。確かにぱっと見、あんまりオタク趣味とかそういうのに興味なさそうではあるか。でもあれか、オタクに優しいギャル的なあれか。カースト上位の近寄り難い感じかと思いきや、オタク文化に理解のある女子。これなんてラノベ?


 まぁオタク趣味なんて隠してるだけで、本当は女子にもたくさんいるらしいし、見た目で判断なんかしてもしょうがないのだが。


 「お前多分、勘違いしてるぞ?」 

 「勘違い?」


 かんちがい?何をだ?


 「昨日、あの子がお前を迎えに来ただろ?あれ実は、結構話題になっててな」

 「げ、そうなの?いや別に、それで嫌な思いをする訳じゃないけども」


 ぶっちゃけ覚悟はしてたしな。客観的に見てああいうのは面白く映るだろうし、それはもう仕方ない。


 「出雲とあめの関係についてもそうなんだけど、もっと話題になってることがあってだな」

 「え?普通にそのことだけじゃないの?」

 

 なに、怖いんだけど!?


 「別に誰が悪いって話じゃないさ。まぁなんだ、噂によるとな?」



 ーーーー出雲ことは、極度の男嫌いである



 らしい。



 いや、嘘でしょそんなの。


 「いやね、これは結構有名な話らしくてな。なんでも男子に対しては中学の頃から超塩対応らしいぞ?」

 「そんなことないって。むしろあそこまで人懐っこいやつ他にいないって」

 

 尻尾振ってる子犬みたいなやつだぞ。態度がコロコロ変わるのは猫っぽくもあるが。


 「だからこそ、昨日の一件は学会に多大なる影響を与えてるらしいぞ?あんな笑顔を男子に向ける出雲は、今までで初だったらしい」

 「なんだそりゃ。どう考えてもたまたまだろ」


 そもそも、出雲が入学してからそんなに月日は経ってない。まだクラスメイトの男子に、仲のいい子がいないだけかもだしな。


 「あんなに笑顔が、その、よく笑うやつもそういないだろ」

 「ふーん。ま、俺も聞き齧りだから詳しいことは知らんがね。お前が仲良くできてるなら、別に深刻な問題ってわけでもないだろうし。それでからかったりしたいわけでもないしな」


 そんな感じで、話は終わった。


 所詮は噂だと思っている。だけどやっぱり気になるものは気になるわけで、授業はあんまり頭に入ってこなかった。



ーーーー


 「あっ、新城さん」

 「あっ、天城先輩。朝はどうもです」


 昼休み、飲み物を買いに食堂に来たら、新城さんと鉢合わせた。


 「あーその、何か飲む?」


 後輩の友達という、少々気まずい(勝手にそう思ってるだけかもしれない)空気を誤魔化すように、俺は新城さんに問いかけた。


 先輩風を吹かせたわけだが、断られないかドキドキする。断られたらそれはそれで気まずい。


 「いいんですか?じゃあミルクティーで!」


 思いの外明るく提案に乗ってくれて、胸中でホッとする。いかんいかん。慣れないことするもんじゃないわ。


 「あ、そういえばさ」

 「どうしました?」


 「出雲のことなんだけどさ」


 俺はケンジの言っていた、出雲の例の噂のことを尋ねてみた。本人がいたら聞きづらいし、彼女なら詳しい事情も知ってるかもしれない。


 俺との会話も実は無理して……いや、それはないか。そもそも接触してきたのは向こうだしな。


 とはいえ、気になるものは気になるのだ。


 「あーそれはですね」


 俺に質問されて、どこか答えづらそうにする新城さん。もしかして結構触れづらい問題だったか?


 「いや、あれだ。答えづらかったら別に大丈夫だ」

 「いや、そういう訳じゃないんですけど。うーん。別に教えても、でも、えー?」


 めちゃくちゃ濁す新城さん。少しすると何かを決心したのか、パッと目を合わせてくる。


 「本人に聞いてください!別にデリケートな問題でもないので、全然遠慮しなくて大丈夫ですよ!」

 「あ、デリケートな問題ではないのね。それが聞けただけでも良かったよ」


 どうして答えてくれなかったのか。そんな疑問もあるが、そもそも今日会ったばかりの仲で、こんなことを聞くのも良くなかったかもな。


 「奢り、ありがとうございます!じゃあ、またどこかで?」

 「おう。またどこかでだな」


 出雲と関わる以上、どこかでまた話すこともあるだろう。そんな風に軽く挨拶をして別れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  これはまさかの昔から知ってたパターン‥‥‥?  前回意外と居住圏被ってそうなこと書いてあったし。  あめの方が忘れてるだけなのかお互い覚えてないのか。  出雲ちゃんも覚えてなくて何かの出…
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