曇らせたがりな君の案
「俺が、作品を、つくる?」
トンデモ発言である。俺は読み専だ。作品を生み出したことなんてない。
「正確には、私と先輩二人での合作ですね。ちなみに今朝思いつきました!どうです?面白そうじゃないですか??」
「面白そうって言ってもなぁ……そもそも出雲はテニス部だろ?時間とかあるのか?」
「あ、テニス部なら辞めましたよ?今から正式に、私は文芸部員です!」
そう言って彼女は、机の上に入部届を置いた。
「もちろん先生から許可はもらってますよ!!もともとやる気なかったし、テニス部からも普通にオッケー貰えました!」
「んな雑な」
でもまぁ、そんなもんか。もともと温度差ある部活って言ってたし、誰に迷惑かけるわけでも無いのだろう。
「唯一の部員どころか部長の俺への確認は?」
「ダメですか?」
「ダメじゃないけど」
「じゃあいいじゃないですかー」
じゃあ、いいのか?じゃあいいんだろうなぁ。実際ダメな理由も見つからないし。
俺からしても、彼女の入部を拒む理由はない。部として目標があるわけでもないから、歓迎するのもおかしな話だが。
「で、部活動として、俺と出雲で合作を作ると」
「その通りです!どうです?楽しそうじゃないですか?」
問われ、考える。
今まで一次創作に手を出したことはない。理由はない。機会もなければ、動機もなかったから。ただそれだけだ。
そして、思う。
「おもしろそうだなぁ」
「でしょ!ですよねー!!そうなんですよー!!」
なんだか簡単に乗せられたようで悔しいけれど、俺はその提案を、とても魅力的に感じた。
まだたった2回だけど、それだけ彼女との語らいが、俺にとって楽しく、有意義だったということだろうか。
「よろしくお願いしますね!先輩!」
「こちらこそ、な」
こうして俺たちの活動は始まった。