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考察7 「主人公」に関するあれこれ

 出雲との語らいは続く。


 決まったのは世界観とヒロインの属性。決めることはまだたくさんある。


 ヒロイン中心の作品作りというルールもあるが、そろそろ決めてもいいだろう。


 「そろそろ主人公についても決めないか?」

 「そうっすね!とはいえ、そうなると物語の終着点も、ざっくりとでも決めないとっすね」


 確かにな。物語の主題が魔王討伐なら勇者だし、成り上がりなら勇者である必要はない。


 「勇者と言っても色々っすけどね。王道、追放、成り上がり、あめ先輩は好きなやつありますか?」

 

 うーん。個人的に特別好きなジャンルってわけでもないから、特に好きな属性はないな。


 「ざまぁ系の作品にするつもりはないんだし、追放されたりする必要はないかな。いや、出雲はあれか、やっぱり曇らせたいのか?」

 「理解ってますね、先輩。主人公は不憫であればあるほど、色々と捗るってもんですよ!」


 そうだった。出雲は曇らせ大好き、つまり追放とか成り上がりが好きってことか。


 「ざまぁは別になくてもいいですけど、主人公とかヒロインが、苦悩に満ちた表情を見せるシチュは必須ですよ!」


 ここは譲れないとばかりに強調する出雲。


 「へいへい。となると、やっぱり()()か」

 「そうっすね、()()っすね」


 キリッ、とキメ顔で出雲に言ったら乗ってきてくれた。こいつほんと面白いな。てか、言っといてあれだけど、言ってることは合致してるのだろうか?


 「主人公君には、呪いでも背負ってもらいますか」

 「主人公君には、生まれつき呪われてもらいましょう」


 驚き。合致していた。まぁ、そうなるよなぁ。


 「故郷を追われて、その力を隠して生きているのは当然として、バレるのを恐れて人とも関わらず、底辺冒険者としてこっそり生きてる感じでいきますか」

 「いきなり具体的だなおい」


 「ま、細かい性格は作品が進むに連れて固まると思います!今はあくまで、属性ってことで!」


 一発で主人公像ができてしまった。とはいえ、特に反論する点もないので、とりあえずはこれでいくとしよう。細部はシチュエーション依存だし、作っていくうちに固まっていくだろう。


 「ところで先輩は、どんな主人公が好きですか?」

 

 改まって、そんなことを聞いてくる出雲。雰囲気からして、ここからは普通のオタトークということか。


 「そうだなぁ。俺はやっぱり、王道に成長していく主人公が好きかなぁ」


 成長にも色々あるけど、最初から最強というよりは、徐々に力をつけたり覚醒したり、やっぱりその過程を楽しみたいというか。


 「今は最初から、何の苦労もしない主人公が多いですからね。その分追放されたりしてるかもしれないですけど、あくまで努力によって、その地位に上り詰めるのがいいんですよね」

 「そうそう。やっぱ過程がしっかりしていると、実力に裏付けがあるし、こっちも感動できるというか」


 いわゆる俺TUEEEを否定するわけじゃないが、与えられた力のみを誇示されても、面白みはあっても感動はしないんだよな。


 「わかりますわかります。主人公が苦しんで苦しんで、その果てに手に入れる力がいいんですよね!」

 「別に必要以上に苦しむ必要はないかもしれないけどね?」


 とはいえ、概ね言っていることは間違ってない。俺も大概、曇らせが好きなのかもしれない。


 「私は最初からめちゃくちゃ強くてもいいですけどね。ただその力を主人公自身はすごく嫌ってるんですよ。実は呪い由来とか、誰かを傷つけた過去があるとかで」

 「ほうほう」


 「だけど過去の活躍を知っている周りからは、その力を使わないことを怠慢だと責められるわけです。やれ落ちこぼれやら、やれ怠け者やら。その力が、一体どういうものかも知らないと言うのに……!」

 「具体的だなぁ」


 なんかもう、頭の中に該当する作品があるんだろうなぁ。俺もなんか読んだことある気がするし。彼、すごい陰陽師だったりしない?


 「その中にヒロインもいるわけですね。だけどある日、その力を使って助けられるわけです。蔑んでいたその力で。そしてその反動で、まぁ反動は身体的でも精神的でもどちらでもいいですけど。ともかく主人公が苦しんでるわけですね」

 「曇らせヒロインの完成だな」


 「最高ですね。しかもこれまでヒロインには、主人公を責める正当な理由があったらさらに良きです」

 「なるほどな。そうすることでヒロインには、ただ罪悪感だけが残り、読者目線ではヒロインが嫌われない理由もできると」


 うーむ。曇らせ、やっぱり俺も好きかもしれん。


 「ま、主人公なんて星の数だけいるからな。性格もそうだけど、ヒロインとの相性、世界観との噛み合わせ、色々な要素があるし、一概にこの性格が好きって言うのはないかもな」

 「それはそうっすね!私が言ったのも、あくまでヒロインの曇りありきですし、主人公単体で魅力なんて測れないかもですね」


 その通りだな。その世界観でしか、輝かない性格もあるだろうしな。


 「やっぱヒロイン依存であるところは否めないな。あくまで恋愛要素がある作品だけど」

 「その点ミステリーとか、恋愛要素のない作品はすごいですよね。単体として魅力があるというか、他人に左右されないかっこよさがあるというか」


 確かにそうだな。でもあれだな、かっこいいとか、それだけで魅力が決まるわけじゃないしな。


 「ギャグモノは例外かな。あれはかっこいいとかカワイイとか必要なわけじゃないし」

 「人気の秘訣ではありそうですけどね。確かに面白さだけで勝負してる感はありますね」


 でもそう考えると、そもそも恋愛要素のない作品ってあるか?


 「確かに、パッと出てこないっすね。そりゃあるにはあるんでしょうが、作品に恋愛要素は必要不可欠と言うことでしょうか?」

 「実際全然思いつかないよな。なんならミステリーとかバトル系恋愛系以外の作品にも、恋愛要素はたくさんあるよな」


 どのジャンルでも、主人公に連れ添うようなヒロインが存在している作品が多い。


 「主人公はやっぱ、ヒロインとセットで見られることが多いんだよな。逆の場合はそれ限りじゃないけど」

 「確かにそうですね。ヒロイン単体で愛されることはありますけど、主人公はあくまでヒロインとの掛け合いが期待されてるというか……もちろん全部が全部そうじゃないかもですけど……」


 うーん。難しい。主人公を作るのはやっぱ一筋縄ではいかなさそうだ。没個性だって、没個性という個性だ。ただの舞台装置として成り立つ簡単な役ではないということか。


 「女の子しか出てこないアニメもあるし、恋愛が必須というわけではないと思うけど」

 「でもあれは、私たちがその子たちに恋してるので、恋愛要素がないとも言えませんよ?」

 

 言いたいことはわからなくもないけど、ねぇ?そんな当たり前のように言われてもなぁ。いくらなんでも強引では?


 「ともかくですよ。大事なのは単体の魅力じゃなくて、お互いの相性だと思うんですよ!主人公もヒロインも、魅力が最大限に引き出されるのは、お互いに一緒にいる時ですから!」

 「ま、それには異論ないけどな」


 いいところに落ち着いたのか?まぁ、お互いにまだどちらも暴走してないから、ちょうどいいところかもな。



 「女主人公モノはあんまり好みじゃないけどな〜」



 なんて、軽々しく口にしなければ、と後悔した時にはもう遅い。



 「……はい?」


 

 出雲の目はすでに、虚の何かを見つめていたのだった。


 「今、女主人公の物語は面白くないって言いました!?」

 「言ってないから!毎度のことだけど、そこまで言ってないから」


 毎度誇張する出雲が悪いのか、学習せず地雷を踏み抜く俺が悪いのか分からないが、机が壊れる前になんとか出雲を落ち着かせる。


 「これは、わからせないといけないですね!」

 「は、はい!お手柔らかにお願いします!」


 圧に負けて敬礼。いや、別に怒られる訳じゃないけど。


 「一応言うけど、俺があんまり好みじゃないって言うのは、女の子しか出てこない作品とかは別だからな?それと世界観として、女主人公に対してちゃんとヒロイン枠?としての男たちが存在する作品だからな?女主人公が特に恋愛はしないパターンは例外だからな?」


 あくまで私たちは現在、女主人公の恋愛ものについて議論しています。


 「ええ!説明口調でどうも!わかってますとも!その上で私は拳を握ってるんです!」


 パーで頼むよせめて。とはいえ、とはいえだ!!


 「そりゃ、しょうがなくないか?だってあれ女性向け作品って括りにならないか?どうしたって女性目線で描かれてるんだから」


 感覚としては少女漫画を読む男性が少ない感じだ。別にそんなにおかしいことではないのでは?事実として女性向けと言うタグだって見たことある。


 「せんぱいは!何もわかってないです!逆に聞きますけど、男主人公のものが、男性向けって括られてるものってあんまりなくないですか!?」

 「そ、それはそうかも?」


 いやでも青年向けとか言うし、あれはどうなるんだろうか?


 「ということは、本来どちらも楽しめるはずなんですよ!女性が楽しめてるんですから!男性だって逆もいけます!」


 ぐ、ぐぬぬ。それはそうかもしれないが。で、でもだ!


 「しょうがないだろ!だって女主人公もの、ザマァ作品がほとんどなんだから!!!」

 「う、うぐっ!?そ、それは……!?」


 「そりゃあ俺だって?魔道具師があれこれする話とか?好きだよ!好きだけどさぁ!ほとんどの話がざまぁじゃん!ぶっちゃけ、ほとんど同じパターンじゃね?って言うイメージがあるんだよ!」

 「や、やりますね先輩。私とのレスバについてくるなんて……」


 割と最初から勝負にはなっていた気がするけど、言いたいだけだろうから言わせておく。突っ込んだら負けだ。


 「面白い話があるのは認める。認めるというか事実だよな。そうなんだけど、それ、主人公男でも同じじゃないですか?って思っちゃうんだよな」

 「そ、それは……」

 

 「主人公の性別が変わっても面白いなら、ヒロインとなる枠は女の子の方がいいに決まってるだろ!理由?そういうもんだろ!ヒロインの可愛い姿にときめきたいだろ!」

 「べ、別にににに、だったら男ヒロインに可愛い姿を見せる女主人公でもいいじゃないですか!」


 いや、違うんだよ。言語化は難しいけどな。明確に違うんだよ。


 「男主人公から見たヒロインは、男主人公と結ばれてもいいんだけどさ、女主人公が男ヒロインと結ばれるの、男側になんかムカつくんだよね」

 「とんでもないこと言ってませんか?」


 いや、ほんと、これわからないか?俺だけなのか?


 「やっぱり俺が男だからかもしれないけどさ、男ヒロインのことを勝手にメタ的な視点で品定めしちゃうんだよな。逆はほとんどないんだけど、女主人公の時だけ。ほんとになんだろうなこれ」

 「え、嫉妬ですかもしかして」

 

 「いや、それとは違うんだよな」


 世界中に俺だけかもしないけど、そう思ってしまうのだから仕方ないだろう。


 「まぁ、それ自体は好みの範疇ってことで見逃してあげます」

 

 あ、存外劣勢になって誤魔化そうとしてる。追撃はしないでやるか。


 実際好みの問題なのは間違いないだろうし。


 「ま、どうであれ主人公は男で呪われてて不憫で不遇で、だけど物語的にはざまぁ系にはならない形にしますか」

 「そうだな。疎まれているとはいえ、疎まれている理由は割と正当なものがいい」


 少しづつ進む創造。今はまだ妄想の域を出ていないけれど、出雲との合作がどうなっていくのか、俺は早くも楽しみになってきていたのだった。

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