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考察6「世界観」に関するあれこれ 

 「あめ先輩、大問題が発覚しました」

 

 一日の授業も終わり、部室に着くや否や。出雲は深刻そうな顔(明らかに雰囲気だけではあるが)をしてそう言ってきた。


 「と、言いますと?」


 なんだかおなじみになってきたフレーズで聞き返す。


 「先輩、私たちそもそもジャンルを決めてないっていう」

 「え?……うわ本当じゃん」


 嬉々としてヒロインの性格を決めたまではいいけれど、まさかのジャンルが未決定。全然気づかなかったわ。


 「というわけで、今回は世界観決めていきましょう!!」

 「おう、そうしようそうしよう」


 世界観。つまりはどんな世界での物語になるかだな。


 わかりやすく言えば、剣と魔法の「ファンタジー」のある世界なのか、はたまた銃と科学が支配する「近未来」的な世界なのか。もっと大きく括るのであれば、異世界なのかそうでないのか。


 「先輩の好みってありますか?」

 「俺か?うーん。正直に言うと好みって言われるとないな。正直、そこは何でもいいかな」


 俺はどのジャンルも等しく好きというか、内容が面白ければ異世界でも現代世界でもいいというか。


 「じゃあ、異世界ものでもいいですか?」

 「おう、いいぞ。出雲は今までの話的にも、やっぱり異世界推しなのか?」


 「異世界推し、というよりもファンタジーが好きなんですよね。あ、でもどちらかといえば現地人ものが好きですね」

 

 現地人もの、つまりは異世界転移でも転生でもなく、その世界のみで話が進むタイプだな。


 「いいじゃないか。じゃあ、主人公は現地人。ざっくりとした背景は「ファンタジー世界」ってことで」

 「おお、私が言うのもなんですけど、なんか創作って感じがしてきましたね」


 確かに、こうして一から設定を練っていくのは創作って感じだ。楽しい。


 「ところで先輩、これは私が絶対こだわりたい部分なんですけど」

 「おお、なんだ?」


 「私個人的に、ステータスって概念が好きじゃないんですよね」

 「と、言いますと?」


 ステータスと言われて思い浮かぶのは、スキルレベルとかそういう話だろうか。


 「例えばですよ?仮にもファンタジーを謳ってる作品の中で、ゲームとかでよくある「ウィンドウ」を出されちゃうと、一気に冷めちゃうと言いますか」

 「なるほど、要するに俺たちしか知らないようなメタい視点を、作中で出されるのが嫌ってことか」


 「そういうことです!!」


 なるほど、これは確かにわかる。


 「地球人がそういう概念を知っていて、そのうえでステータスっていう概念を認識するのはいいんですけど、明らかに地球産の概念をファンタジー世界の住人が使ってると、なんだかなぁっていう」

 「いや、わかるぞ。要はステータスの数値化だって、スキルレベルだって、あくまで地球の創作の中での設定だもんな」


 そうなのだ。あくまでそういうのは、ゲームだったり創作の中での呼称だ。うーん、でもなぁ。


 「でもさ、現実世界でだってそう言った数値化はあるんじゃないか?例えばスポーツ選手だって、走力・体力・筋力だったりを数値化して、ランク付けしたりするだろ?」

 「それは別のお話なんですよ」


 ほう、別のお話というと?


 「例えばサッカー選手がいて、筋力がAだったとしますよ。ではその選手が、ウエイトリフティングの世界に飛び込んだとしますよ。すると筋力ランクはいくつになるでしょうか?変な屁理屈はなしで、素直に答えてくださいね」

 「そりゃあ筋力の本業の中じゃ、良くてB、普通に考えればCとかが妥当なんじゃないか?」


 当たり前の話だ。使う筋肉だって違うだろうし、そもそもの基準が違うのだからそりゃ評価だって変わるだろ……って、ああ!


 「そういうことか!!」

 「そういうことです。普通は基準があって、それに準じて数値は出されるべきなんですよ」


 「異世界にはそれがないはずなのに、なぜ数値化できているのかってことか」


 確かにその通りだ。


 仮にステータスという概念があって、その基準はいったい誰が定めているんだ?


 いや、世界規模でそれができる存在がいるのか?


 「多くの作品で、すべてのキャラクターが共通の基準で数値を測ってますよね。その基準って、いったい何なのだろうって思うんですよ。いったい誰が定めて、どうやって作品内の登場人物はそれを数値化してるんだろうって」

 

 確かに。


 「特に世界で基準が統一されているパターンが嫌いですね。レベルの概念があって、ステータスが上がっていって、それが可視化されているのが。一気に異世界感が無くなってしまうというか」


 「基準があるなら、まぁ納得はできるんですけどね。それが地球人に分りやすいUIで表れされたりしない限りは」

 「それはわかる。出来る事なら、魔法的な表現で表されてほしい」


 それに俺にも似たような嫌な表現はある。


 「超能力的なことを、一般人面してやるの嫌いなんだよね。だから実をいうと、喧嘩ものってあんまり見ないんだよな。ヤンキーものとか」

 「うわ!!めっちゃわかります!!!いや、ねーよ!!ってなっちゃうんですよね!」


  そうなのだ。「人間はそんな動きを普通はしない」を普通にしてしまうのを見ると、いやいや、そんなのあるかぁ!と突っ込みを入れてしまうのだ。2メートルぐらい普通に垂直飛びしたり、空中でくるくる回ってみたり。


 「でも先輩は、「これは超能力です」って言われれば、何でもありって感じですよね」

 「そうだな。だって「超能力」なんだから。「非現実的な非現実」はよくても、「非現実的な現実」は嫌いなんだよな」


 なんか、すごい脱線しちゃったな。 


 「ま、ともかくだ。剣と魔法のファンタジー、現地人、設定は異世界産って感じだな」

 「そうっすね!こんな感じでやっていきましょう!!楽しくなってきましたね!」


 彼女の言う通りだ。これからどんな作品になっていくのか、とても楽しみだ。

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