第5話「これでやっと戦える。」
結局パートナーは見つからなかったわね。
魔王が宣戦布告してきて、みんなパートナーと一緒に戦っているというのに。
いっそ1人で戦いに出てしまおうかしら。
いや、まだよ。まだ可能性はあるわ。あの結婚相談所のオカマの男と契約できれば。
いい動きをしていたし、ドラゴンのパートナーはいなさそう。
でもどうしてサービス業なんて経営しているのかしら?
戦いそのものが嫌いだったら無理そう。
でも名のある騎士はみんなドラゴンとともに戦っているし、
今さら無名の騎士のなかに強い人がいるとも思えないし。他に選択肢はないわね。
確かこの辺りにお店が、あったわ。
閑散としているわね。無理もないけど。
オカマはまだ残ってくれているかしら?
「いらっしゃいませ。お支払いについてかしら?あら?」
「こんにちは。」
「あぁドラゴンさん。どうかしましたか?」
「お願いがあってきたの。」
「お支払いについては心配いりませんよ。
こんな事態なんで、皆さんの支払いは延期しています。」
「そうじゃないの。」
「違うんですか?」
「私と一緒に魔王と戦ってほしいの。」
「・・・え?わたしと?」
「そうよ。」
「どうしたの?
あなたほどのドラゴンさんなら優秀な騎士とパートナーになれるでしょうに。
もしかして、亡くなられたの?」
「何を言っているの?
私にパートナーはいないわよ。
だからあなたに紹介してもらっていたんじゃない。」
「え?」
え?って何?そういうサービスじゃないの?
「あの、ドラゴンさん?
結婚というのは、男女の契りのことで、戦いの契りではないのよ?」
「・・・。」
何それ?お見合いの時や交際の時にちゃんと戦っていたじゃないの。
でもそれはたまたま紹介されたのが、それなりに戦える勇者だったかららしい。
つまり、ただの徒労だったってことね。
「まぁいいわ。それじゃぁ責任を取って私と一緒に戦ってちょうだい。」
「ちょっとちょっと〜。それはどういう意味?一体なんの責任よ~。」
あら?ずいぶん口調が変わってきたわね。これが素なのかしら?
「紛らわしいパンフレットを作った責任よ。」
「いや、そんなこといわれてもね~。」
「お願いよ。みんなもう戦いに出ているし、あなた以外に思い当たらないのよ。」
「・・・。」
やっぱりダメだったかしら?
強引にでも戦って欲しかったんだけれど。
仕方ないわ。やっぱり1人で戦いに行くしかないのね。
「ドラゴンさん。
あのね。そんな言い方しなくったって、最初から素直に言ってくれれば良かったのよ。」
「・・・それじゃぁ。」
「そんな悩みを持っていたなんてねぇ。
でも、これまでのことに合点がいったわ。でも本当にわたしでいいの?」
「えぇ。よろしく。」
やっと。これでやっと、みんなと肩を並べて戦える。
契約自体はすぐに終わるから問題ないし、確認すると準備に時間はかからなさそうだったから、
早速戦いの場に赴けそうね。
思った以上にいい感じだわ。
準備を整えながら、魔王領に降り立つ。
契約も終わって、オカマもドラゴンの装備を身にまとったし、本当にいい感じだわ。
魔王のやつ、椅子にふんぞり返っているわ。
いいご身分ね。勇者を再起不能にしたから、敵なしと思っているというところかしら。
それじゃ、そろそろドラゴン態でいこうかしら。
「ん?お前は?」
「また会ったわね。」
「ずいぶん遅かったな。ランクSSS。お見合いは上手くいったのか?」
「おかげさまでね。」
あら?まだ話が終わっていないのにオカマが飛び降りて攻撃をしかけちゃった。
そんなことするのね。ちょっと意外。
いや、普通の人間にとって、魔王は恐怖の象徴だし、
怖がって攻撃したくなるのも無理ないのかしら。
「フハハ。流石はランクSSSのパートナー騎士だな。面白い。」
「・・・。」
あらら。オカマさん、無言で殴り続けているわね。
いいんじゃない?スイッチが入っている感じで。
それにしても激しいわね。どう介入しようかしら。
「埒があかんな。これは耐えられるかな?騎士よ。」
あれはまずいわね。ずいぶんエネルギーを貯めているわ。
ブレスで対抗しないと。魔王の放ったエネルギーをブレスで相殺。
まっ余裕で間に合うから、問題ないんだけどね。
「ほう。余裕で防ぐかランクSSS。」
「当然よ。」
防ぎ終えるとオカマがまた攻撃を仕掛けちゃった。
でも頭は冷えたみたいね。
私も攻撃しやすいように誘導してくれているみたい。
魔王を突き飛ばしたので、踏みつけて追撃する。
魔王が小さなエネルギーを放ってきたので、鱗で防ぐ。
翼で風を起こして、オカマがその風に乗って魔王に攻撃を繰り出す。
オカマの攻撃で魔王の体勢が崩れたので、腕を思いっきり嚙みちぎる。
「フハハ。ここまでやるとはな。予想外だ。」
おかしいわね。あの腕はなんだか変だわ。
噛みちぎったのに、血の一滴も出ていないし。
それに、あの余裕はどこからくるのかしら?
「ではな。また会おう。」
あぁ、そういうことね。本物じゃなくて、ただの土人形だったのね。
「ドラゴンさん?逃げられたってことなの?」
「いいえ。最初から偽物だったというところね。」
「そう。失敗しちゃったのね。悔し~。」
「いいじゃない。
むしろあのまま戦っていたら、どうなっていたかわからないし。
もっと戦いなれてから再戦しましょ。」
「それもそうね。さ〜て。帰って汗を流しましょっ。」
オカマさんには悪いけれど、私の目的は達成されちゃっているのよねぇ。
戦いのパートナーとは契約できたし。
むしろいきなり魔王を倒しちゃって、戦う相手がいなくなっちゃう方が寂しいの。
でも、そんなこと口が裂けても言えないわ。
ウフフ。
あ~。これからがとても楽しみね。
fin
予定通り本作品はここで完結とさせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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